猫にハーネスやリードをつけて散歩をさせることに関して議論が起こっています。最近ではSNSなどで猫にハーネスやリードを装着し、郊外などを散歩させている様子がおさめられた写真などが多く認められるようになっており、ちょっとしたトレンドにもなっています。しかし、イギリスのRSPCAやCat Protectionと呼ばれる有名な団体はそれらのトレンドに警鐘を鳴らしています。
ハーネスやリードを装着しての散歩は猫にとってストレス?
RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)やCat Protectionといった団体によると、猫にとって重要な感覚である『コントロール感 Sense of Control』が失われることがハーネスやリードを装着して散歩することの問題点だと指摘しています(IBTimes)。このコントロール感とは猫が環境をコントロールしているという感覚のことで、猫にとっては最も重要と言っても良い感覚になります。例えば、嫌な刺激などがある場合に、その刺激から逃げることができる場合には猫が環境をコントロールしているという感覚を得ることができます。
また、飼い主から餌をもらいたいときに、飼い主に対して『にゃー』と鳴いたり、『スリスリ』したりする行動をとり、餌を獲得した時などにも環境をコントロールしているという感覚を得ることができます。猫にとっては飼い主も環境の一部であり、どのような行動をとれば飼い主をコントロールできるかを十分に心得ているということになります。
もし、ハーネスやリードを装着して散歩をしている時に、何かしらの刺激が加わったとします。この時に猫が真っ先にとろうとする行動は刺激から逃げるか、隠れるかです。しかし、ハーネスやリードを装着している際にはそのような行動が制限されてしまい、コントロール感が失われてしまします。また、散歩を行う土地などが猫の馴染みのない土地の場合などには、縄張りという安全地帯がないことより、さらに不安が高まり、これもコントロール感の喪失につながります。そのため、RSPCAやCat Protectionといった団体は積極的にハーネスやリードを装着しての散歩を行わない方が良いとしています。
猫を散歩させる利点
しかし、一部の猫行動専門家や「Adventure Cat」で有名なLaura Moss氏らは、散歩させることは猫のQOL(生活の質)を高める上で重要である反論しています(IBTimes)。彼らの主張としては、猫は探索することが大好きであり、散歩することにより身体的かつ精神的に良い効果をもたらすというものです。例えば、完全室内飼いの環境では刺激が少ないために、退屈などが原因で肥満や問題行動などを取ることがあるとしています。
猫行動専門家であるAnita Kelsey氏もハーネスやリードを適切に紹介し、散歩をさせた場合には猫が破壊行動をしなくなる事例があったとしており、その効果についは肯定的です(The Gurdian)。しかし、彼女は各猫の個性に合わせて散歩をさせるかは選択するべきであり、飼い主の意思で強制的にハーネスやリードを装着して散歩をさせるべきではないとも述べています。
まとめ
確かに、猫に刺激を与えるためにハーネスやリードを装着しての散歩などを行うことは一部の猫にとっては良いことなのかもしれません。しかし、散歩という選択をする前に、室内の飼養環境を整え、環境エンリッチメントを行い、猫を刺激することが重要だと思います。そして、最終的な手段として散歩を行わせる場合には、その猫の気質や普段の行動、散歩を行わせた時の反応などを考慮するべきです。
当然ながら、その際には猫にストレスが加わらないように適切な方法でハーネスやリードの紹介を行わなければなりません。一部の猫はリードやハーネスなどを装着させた時に学習性無力感Learned Helplessnessを呈し、何もせずに飼い主に引きずられた状態になってしまうことがあります。やみくもに装着を行うことは避けましょう。
おそらく、今回のような議論が起こった背景には、イギリスでは半室内飼いの猫が多いために、わざわざハーネスやリードをつけて散歩させるというトレンドに疑問を感じてのことだと思います。どちらが良いとはなかなか言えませんが、もし科学的に散歩を行うことの有効性が示されれば、もう少し有意義な議論が行えるようになるのかもしれません。私は完全室内飼いの猫をわざわざ散歩させる必要はないと思いますが、室外で暮らしていた経験のある猫の中には散歩をすることを好む猫もいるため、その猫に合わせた対応をすれば良いと考えています。しかし、間違っても飼い主の視点から猫に強制させるのは良くありません。散歩とは関係ありませんが、自然災害の多い日本ではハーネスやリードを装着する訓練は行なっておいた方が良いような気もします。皆さんは今回の議論についてどう思いますか?
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