前回の記事では猫のしつけの大前提である条件づけについて解説しました。その中で猫にある行動を学習させるにはオペラント条件づけのうち、2つの原則が重要であると良いました。今回はそのオペラント条件づけをしっかりと行うための具体的な方法について紹介していきます。
逐次接近法 Successive Approximation
猫に行動を学習させるためには一度に目的の行動全てを教えるのではなく、逐次接近法(successive approximation)を利用します。逐次接近法とは学習させたい最終的な行動に近い行動を徐々にハードルを上げつつ学習させていく方法です。
例えば名前を呼ぶと飼い主の元に帰ってくる、「呼び戻し」を学習させようとした時に、いきなり猫の名前を呼んでも反応はしません。どのようにするかというと、最初の段階として、まず猫の近くで猫の名前を呼び、猫が少しでも飼い主の声に反応するようにします。これが出来たら、次の段階に進み、名前を呼んだ後に飼い主の元に寄ってくることを学習させます。これも学習が出来たら、徐々に飼い主と猫の距離を広げていきます。
このように徐々に段階を踏んで学習させていくことを逐次接近法といいます。そして、この逐次接近法を行っていく過程で、目標となる行動の「シェイピング」を行う事により、正確に行動が行えるようになります。

シェイピング Shaping
心理学の世界で、ある行動を訓練するときに、その行動を正確に行うようにすることをシェイピングといいます。例えば、先ほどの「呼び戻し」を例にあげると、呼び戻しを学習する各段階をすぐに完璧に行うことはできません。できたり、できなかったりすると思います。しかし、飼い主が正確に学習させると、一つ一つの段階を完璧に行えるようになります。最終的には、徐々に段階を踏んでいくことで「呼び戻し」を完璧に習得することができるようになります。
このように猫に各段階を完璧にこなせるようにしていき、最終的に目標となる行動を完璧にこなせるようにさせることをシェイピングといいます。では、どのようにシェイピングを行っていけば良いのでしょうか?

シェイピングの原則
報酬はすぐに与えること
猫はそれほど優れた記憶力を持っているわけではありません。そのため、猫が好ましい行動をした瞬間に、すぐに報酬をあげる必要があります。この瞬間とはミリセカンド単位の話です。猫はある行動をした1秒後には違うことに注意がいってしまい、それまでしていた行動を忘れてしまうため、ある行動が良いことにつながるという関連性を失わないためにもすぐに報酬を与えることが重要です。
段階を飛ばさず、1つずつ段階を完遂すること
目標とする行動を最初から完璧に行わせようとせず、いくつもの段階に分割し、徐々にその段階の難易度を上げていくことが重要です。一般的に次の段階に進む目安としてはその段階の行動が5回〜10回連続で成功した時であると言われています。また、めちゃくちゃ頑張っても、ある段階の行動の成功率が極めて悪い時にはひとつ前の段階に戻るか、もうひとつ軽い段階を入れてあげた方が良いでしょう。
同じ段階を繰り返し続けないこと
同じ段階を繰り返し続けるとその行動が定着してしまい、次の段階に入った時に猫が困惑して学習が妨げられます。言い換えると、それはもはやシェイピングではなく、その行動が最終目標の行動になってしまっているわけです。粘り強くやればいいというわけでもないんです。そのため、あまり長い期間同じ行動を学習させることは避けて、5回〜10回連続で行動ができるようになったら、すぐさま次の段階に進む方が良いです。
まとめ
逐次接近法とシェイピングの概念は少し似ていますが、逐次接近法を達成するうえでシェイピングが存在するというように認識してもらえると良いと思います。このシェイピングの原則は大変重要ですので、猫をしつける前に徹底的に頭に入れておきましょう。
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