よく猫の本やネットの記事を読んでいると、「霧吹きを利用してしつけができる」という文言をよく見かけます。
このような助言は猫のことをよく知っている獣医師でもおこなっているようです。このような現状を筆者はとても情けなく思います。
霧吹きの原理
猫が望ましくない行動をしている時に霧吹きで水をかけることで、猫を驚かせ、その行動を止めさせるというものです。例えば、猫がソファーで爪とぎをしており、その行動を止めさせようと猫に霧吹きで水を吹きかけ、驚かせてその行動をやめさせるのです。
水を嫌う猫では、それを「罰」ととらえて、ソファーでの爪とぎ=霧吹き(水)を関連づけて学習するため、それ以降はソファーでの爪とぎをあまりしなくなるという、「正の弱化」を利用したものです。
この原理を読むと、「ふむふむ、効果がありそうだな。」と思いますよね? でも実はそうではないんです。

猫が恐怖を覚えるのは飼い主
霧吹きをしている時に猫が飼い主の気配に気づいていたらどうでしょうか? そうなると、霧吹き(嫌なもの)=飼い主という関係性を学習してしまい、当然、猫と飼い主の関係性が崩れてしまします。
この考えを聞くと「猫に気づかれずに霧吹きをしたらよいのでは?」と考える人が多いのではないでしょうか。では、逆に聞きますが「どのようにして猫に気づかれずして霧吹きをかけるのですか?」。多くの場合は「カーテンに隠れて」という答えでしょうか。近くにカーテンがなかったらどうするのですか?
忘れてはならないのは猫は人間よりも聴覚と嗅覚が効くということです。人間には聞こえない音や匂いがわかるのですから、すぐに飼い主の気配を感じ取ってしまいます。飼い主がやっているとバレる確率の方が高いです。
飼い主が見ていない時に…
霧吹きのおかげで、ある行動が止まったとしても、それはあくまで”一時的”なものです。先ほどのソファーで爪とぎの例を元に解説すると、飼い主やその家族がいる時にはソファーで爪とぎをしなくなるかもしれませんが、いない時にはソファーで爪とぎをしています。猫は賢い生き物であるため、飼い主がいない時に爪とぎをしても何も起こらないということをすぐに学習するわけです。これは、猫にばれないように霧吹きしても同じことが起こります。
他の猫に八つ当たり
多頭飼いをしている家庭などでは、これがよく起こります。ようするに、霧吹きで水をかけられたストレスを、その他の猫を攻撃することで発散するというものです。この攻撃対象になるのは猫だけでなく飼い主や家族のメンバーになることだってあります。
ストレス
猫をしつけるにあたって、「正の弱化」を用いることは適切ではありません。これは「条件付け」の記事でも説明しました。
考えてみてください。ほとんどの猫の行動は習性に従ったものであり、猫は悪いことをしているなんて思っていません。それなのに怒られるというのは猫にとっては踏んだり蹴ったりではないでしょうか? そして、結果として猫にはストレスがたまるだけなんです。そうなると、当然違うところで問題行動が出始めるのです。一つの問題行動を解決したつもりが、新たな問題行動が増えるということになるのです。
猫をしつける時には「正の強化」を利用するのが大前提です。筆者個人の意見としては「正の弱化」を用いたしつけは「虐待」をしているようで凄く抵抗があります。
解決策
ではどのようにして、霧吹きを使用せずに、猫にして欲しくない行動を止めさせられるのでしょうか? 猫が問題行動をするのには必ず理由があります。そのため、その原因を見つけ取り除いてあげるのが最善になってきます。
ソファーに爪とぎの例で言えば、爪とぎをソファーでしてしまう原因がどこかにあるのです。具体的には爪とぎの形や素材、個数、設置場所などを検討していき、問題行動の根源となっている原因を取り除いていきます。
まとめ
霧吹きを使用しても、結果として猫がストレスをためるか、飼い主と猫の関係性が悪くなる確率の方が高いです。そのため、霧吹きを使わずに頭と忍耐力を使って問題行動の原因を突き止める方が飼い主にも猫にも優しいんです。これを理解できたら、もう霧吹きとはおさらばしてくださいね。
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