猫好きで、猫の行動に興味がある方であれば「Jackson Galaxy ジャクソン・ギャラクシー」という名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?
彼はAnimal Planet アニマル・プラネットで 「猫ヘルパー・猫のしつけ教えます(My Cat from Hell)」という番組の主人公であり、番組内で猫の飼い主が持つ様々な猫の悩みを解決しています。彼は特に猫行動専門家の資格を持っているというわけではなく、猫の行動に詳しいという方です。いわゆる猫版シーザー・ミランといったところでしょうか? あそこまでカリスマ性はないかもしれませんが…
Jackson Galaxy ジャクソン・ギャラクシーの得意分野は何といっても猫の環境に働きかけることです。猫は環境に依存する生物なので、効果があるのも納得できます。そんなジャクソン・ギャラクシーは猫の環境に関する指南書「Catification」と「Catify to Satisfy」の2冊を書いています。つい先日、その2冊の本のうち2014年に出版されている「Catification」の訳本「猫のための部屋づくり」が発売されました。
今回の記事では「猫のための部屋づくり」をレビューしていきたいと思います。
猫のための部屋づくり
「猫のための部屋づくり」は株式会社エクスナリッジより出版されており、価格は2376円(税込)です。エクスナリッジさんと言えば、「世界で一番美しい猫の図鑑」などで有名です。
表紙デザインのテイストは、少し前にエクスナリッジさんより出版された「猫あそび手芸 猫が夢中になる編みぐるみのおもちゃ25(サラ・エリザベス・ケルナー著)」とほとんど同じです。
本の中のデザインについは、原著とはかなり異なっており、日本人向けにデザインされているのだと思います。個人的には原著の方がすっきりとしており、読みやすかったので、訳本の方がどうしてもごちゃごちゃしているように思えました。原著を知らない方からすると何ら問題ないと思いますが…
内容については原著のように写真や図が多い構成になっているため、すらすらと読めます(全247ページ)。ひとつ残念なのは原著よりも写真が小さく、汚いです。これは本の紙質の影響を受けているのだと思いますが、せっかくの綺麗な写真が台無しのような気がします。
翻訳
訳本の良し悪しを左右するのが翻訳ですが、この本の翻訳は正直イマイチだと思います。日本語が下手くそな私が言うのもなんですが、直訳すぎます。口語にするのならしっかりとした口語にすれば良いと思いますし、全体的にGoogle翻訳などが翻訳したような感じです。ただし、サラーっと読んでいる分には特に気にはなりませんので問題ありません。
個人的に最も不満なのは「Catification キャッティフィケイション」という単語をキャットリフォームとして訳したことです。ここはオリジナルのキャッティフィケイションという言葉を新たに定義して使用した方が良いような気がします。
確かにキャットリフォームという言葉は日本人にとってはわかりやすいのですが、ジャクソン・ギャラクシーが提唱しているキャッティフィケイションとは「猫が本能的に好きな環境を作ること」というものであり、リフォームだけでなくベッドやトイレなどを少し変えるだけでもキャッティフィケイションに当たります。私個人がこんなことを言っても何の意味もありませんが、納得はいきません。もう少し慎重に訳語を選んでもよかったのかもしれません。
内容
猫の基本的な知識
まず、猫の感覚やボディランゲージに関する基本的な知識がサラーっと書かれています。また、ジャクソン・ギャラクシーが考える猫の性格分類なども記載されています。あくまでも、ジャクソン・ギャラクシー独自の視点であるため、専門的かつ科学的なものではありません。それでも、他の本とは異なった視点から猫を捉えることができるので参考になるかもしれません。
猫が必要とする環境の知識と原則
猫の基本的知識の後には、猫が必要とする環境についての知識や原則が記載されています。個人的にはこの原則の部分が最も重要だと思います。ここさえ押さえておけば、猫に最適な環境をいくらでも考えることができると思います。この部分はページ数にするとわずかですが、この本の価値はこの原則の部分に集約されているような気がします。
また、ところどころに出てくるコラムやCatification Essentialという項目の情報が意外と役に立ちます。
実例
この本の大半は実例で占められています。実例のほとんどはジャクソン・ギャラクシーの番組で出てきた猫の飼い主の家になります。実際にどのようなところが問題で、どのように改善したのかについて語られています。ほとんどの実例はプチリフォームなどをした例であり、キャットウォークやキャットタワー(キャットツリー)の話などです。
また、番組に出てこなかった、その他の飼い主が行ったリフォームについても、具体的な写真を提示して、どこが良くてどこが悪いのかについてもコメントなどをしています。
実例の部分ではジャクソン・ギャラクシーだけでなく、デザイナーのケイト・ベンジャミンもコメントをしています。ケイト・ベンジャミンも「猫ヘルパー・猫のしつけ教えます(My Cat from Hell)」の番組に携わっており、かなり有名な方です。
DIY
「猫のための部屋づくり」のスパイス的な役割をしているのが、DIYの部分です。この部分では具体的なDIYのやり方が記されており、例えばダンボールでハンモックを作る方法や麻の爪とぎを作る方法などが記載されています。この本を読んだ人は確実にグルーガンを買いに行くと思います…笑
このDIYの部分はキャットウォークなどの大きな改装を行わなくとも、ちょっとしたことでも猫にとって快適な環境を作れるということを教えてくれているような気がします。
総評
この「猫のための部屋づくり」には猫に最適な環境についての原則などが詳しく記載されています。その原則の部分はかなり短いですが、その部分さえ押さえれば誰でも猫に最適な環境を作ることができると思いますし、猫のための環境を作る前には必ずこの本を読んだ方が良いです。
実例を挙げて、どのようにすれば良いかなど指摘してくれているところも分かりやすく個人的には好きです。ただ、実例の部分をどんどん読み進めていくと、頭の中がごちゃごちゃになって「結局どうすればベストなのだろう?」と疑問が浮かぶこともありますが、その際には再度、原則の部分に戻り考えてみると良いと思います。
また、猫のベッドや爪とぎなどのDIYの仕方なども記載されているため、大きな改装などはしたくないけれども、猫のために少しだけ環境を変えたいと考えている方にとってもおすすめの本です。
まとめ
この本一冊で猫のための環境作りについての知識が全て網羅できるわけではありませんが、初心者には十分すぎる内容です。このような環境づくりに興味が出た方は続編の「Catify to Satisfy」についても読んでみてはいかがでしょうか?
続編の方では、1つ1つの事例をさらに掘り下げて詳しく解説してくというスタイルをとっており、勉強になります。ただし、続編を読む前に基本的な概念や原則などを「猫のための部屋づくり」で学んでおく必要があります。
最後に、英語力に自信がある方は原著の方を読むことをお勧めします。原著の方が著者らのニュアンスなどが適切に伝わってきますし、シンプルで読みやすく、写真も綺麗ですからね。
あわせて読みたい
コメントを残す