2017年1月30日付でアメリカのZomedica Pharmacetuicals社(以下Zomedica社)が2種類の新薬の開発を進めていること自社のHPで発表しました。
この記事でわかること
- Zomedica社が2種類の新薬の開発を発表し、両方とも猫の耳に塗るタイプである
- ZM-011はフルオキセチンと呼ばれる有効成分を含み、猫の不安を軽減する作用がある
- ZM-006は甲状腺ホルモンの生成を阻害することで、甲状腺機能亢進症を治療する
目次
2種類の新薬の開発
Zomedica社は2種類の新薬についてアメリカ食品医薬品局(以下FDA)にInvestigational New Animal Drug;INADの申請をおこないました。
このINADとは動物むけの新薬をFDAから正式に承認を受ける際に必要な前段階の審査のことで、新薬の効果や安全性、製造の安定性などを現在までのデータをもとに審査するような段階になります。
今回申請が行われたのが「ZM-011」と「ZM-006」と呼ばれる猫向けの薬品になります。
ZM-011;Transdermal Fluoxetine
ZM-011はフルオキセチンと呼ばれる有効成分を含んだ薬品で、人間の薬「Prozac® プロザック®」としても有名な薬品です。今のところ、この薬品の猫への使用はFDAでは認められていません。しかし、実は多くの動物病院で人間用の薬品が使用されているのも事実です。余談ですが日本において人間用の「プロザック®」は承認されておらず、代わりに異なる有効成分(フルボキサミン)を含んだ薬品が処方されることが多いようです。
今回Zomedica社ではこのZM-011を経皮吸収型ジェルの薬品の申請しています。つまり耳に薬品のジェル塗ることでその効果を得ることができます。猫に優しい使用になります。Zomedica社によると年内にもパイロットスタディ(試験的で小規模の研究)を行っていくそうです。
ZM-011の効果
ZM-011のフルオキセチンと呼ばれる有効成分は選択的セロトニン再取り込み阻害薬にあたり、不安の減少などの効果があります。そのため、不安傾向が高いためにスプレー行動などをしている猫にZM-011を使用するとスプレー行動などが抑制されることが予想されます。
気をつけたいのは、この薬品を使用したからといって猫のスプレー行動が完全になくなるわけではないことです。また、薬品の使用が終わるとともに、もと通りになることが多いため、「行動」に対するアプローチも同時に行うことが重要です。
ZM-006;Transdermal Methimazole
ZM-006はチアマゾール(別名メチマゾール)と呼ばれる有効成分を含んでいます。このチアマゾールは甲状腺機能亢進症の治療に使用されています。
現在、チアマゾールは猫への使用が行われていますが、口から投与するようになっています。ちなみに、アメリカでは猫用のチアマゾールの使用が承認されていますが(Felimazole® フェリマゾール)、日本では承認されておらず人間の薬品(メルカゾール®)が使用されています。
今回Zomedica社ではこのZM-006(チアマゾール)を上記のZM-011と同じように経皮吸収型に改良して申請しています。この薬品も耳に塗るだけでよいような仕組みになるということです。Zomedica社によると2017年上半期に最終的な薬品成分を固め、2018年上半期からピボタル試験(薬品の効果を確かめるような重要な臨床試験)を開始するとしています。
ZM-006の効果
体内には甲状腺と呼ばれる器官が喉のあたりに存在しており、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンを分泌しています。この甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると甲状腺機能亢進症という病気になってしまいます。
ZM-006はその甲状腺において甲状腺ホルモンを作る過程を邪魔することで、作られるホルモンの量を減らします。結果として、甲状腺ホルモンの分泌量が減少し、甲状腺機能亢進症の治療につながるということです。
まとめ
Zomedica社より2種の新しい薬品をFDAへと申請するという発表がありました。両方とも耳に塗るタイプの薬品であるため、飼い主にとっても猫にとってもストレスが少ない仕様になっています。製造され、飼い主の手元に届くまではまだまだ時間がかかりますが、期待をして待っておきましょう。
また、あくまでもアメリカの話であるため、残念ですが日本で手に入れることはできないでしょう。どうしても手に入れたい時は個人輸入という形になってしまいます。それでも選択肢が広がるだけで嬉しいことですよね。
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