オーストラリアの4つのシェルターに猫を預けに来た人と預けられた猫の関係性について調べた研究が発表されました。この研究では特に飼い猫やノネコ(stray)でもない、半飼い猫についてスポットを当てており、半飼い猫の世話をしている人が猫とどのような関係性を築いているのかについて多くのことを明らかにしています。
多くの飼い主が預けた猫の世話を行う責任があると認識している
研究のデータ解析に含まれたのはシェルターに猫を預けに来た96名の飼い主であり、電話とインターネットで質問に回答してもらいました。96名のうち40名は預けに来た猫のことを飼っていると認識しており、残りの56名は預けた猫を飼っていないと認識しています。
預けた猫を飼っていないと認識している56名全員が意図的にその猫と交流を持つことになったわけではないと回答しています。しかしながら、それらの飼い主のうち70%は、その猫の世話を行う責任があると認識しており、世話の仕方として最も多かったのが、餌やりであることがわかりました(57%の人が行っている)。その一方で、避妊去勢手術に関しては6%の人しか行っていないということがわかりました。
どのような人が飼い主だと認識しているのか?
意図的にその猫と交流を持った訳ではないと回答した71名(うち15名は飼い主であると認識している)を対象に、統計学的な解析を行い、どのような人が猫を飼っていると認識しているのかについて調べていきました。
その結果、その猫の世話を行う責任があると認識している、猫と親密な関係性があると認識している、猫に餌やりをしている、その他の世話(夜に猫を屋内に入れる、猫におもちゃを買う、ワクチン接種を行う、マイクロチップの登録を行う)を1つ以上していると回答した人において、飼い主であると認識する確率が高くなることがわかりました。
どのような人が餌やりを行うのか?
さらに、シェルターに預けた猫を飼っていないと認識していながらも、餌やりを行う人を対象に、統計学的な解析を行っていきました。その結果、その猫の世話を行う責任があると認識している人や、猫との交流(猫を室内に入れる、猫をベッドで寝かせる、猫を撫でたり抱いたりする、猫と遊ぶ)を3つ以上行っている人では猫に餌やりをする確率が高くなることがわかりました。さらに、女性の方が男性よりも餌やりをしやすいということもわかりました。
まとめ
今回の研究は、どのような人が猫を飼っていると認識し、どのような人が半飼い猫に対して餌やりをするのかについて明らかにしています。最も問題だと感じたのは、餌やりをしているにもかかわらず、避妊・去勢手術を全く持って行っていないというところです。ノネコに対して風当たりが強いオーストラリアにおいて、このような行為はかえって、望まれない猫を増やし、殺処分数を増加させるだけだと思います。餌やりをするのであれば、適切なTNRの知識を持ち、コロニーの管理をする方法を学ぶ必要があるのではないでしょうか…
今回紹介した研究論文はオープンアクセスであり、誰でも閲覧することができます。
原著論文:Zito S, Paterson M, Morton J, Vanken D, Bennett P, Rand J, Phillips CJC. Surrenderers’ Relationships with Cats Admitted to four Australian Animal Shelters. Animals (Basel). 2018. 8(2). pii: E23.
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