Journal of Heredityに掲載された最近の研究が、これまで単一の種類だと思われていたユキヒョウが、3種類のサプタイプに分けられることを明らかにしました。
ユキヒョウ
Wikipediaによると、Snow Leopard(学名 :Panthera uncia)ユキヒョウは捕獲しにくいことで有名な大型のネコ科の動物で、アジア12カ国(アフガニスタン東部、インド北部、ウズベキスタン東部、カザフスタン東部、キルギス、タジキスタン、中国西部、ネパール、パキスタン北部、ブータン、モンゴル、ロシア南部など)にまたがり約160万㎢にわたって生息しています。
また、標高600 – 6,000メートルで生活しており、獲物の量や季節にあわせて生活圏を標高の高い場所や低い場所へと移動します。
3つの壁とサブタイプの謎
ユキヒョウは包括的なサブタイプの評価の必要な大型ネコ科動物の1つでした。これまでに、ユキヒョウの研究が進まなかったのは、大きく分けて3つの理由がありました。
1つ目は、ユキヒョウの住む場所が人里離れた遠隔地であり、しかもその場所はしばしば政治的に不安定な国の領地であり、探索に行くことが難しかったことです。
2つ目は、ユキヒョウを見つけることが非常に難しいことです。せっかく、生息していると予測される場所に行けたとしても、ユキヒョウはそう簡単に姿を見せてくれませんし、罠にも引っかかりません。したがって、GPSによる行動の追跡などはほとんど行えなかったと言っても良いでしょう。
3つ目は、せっかく捕獲できたとしても、それがどのエリアから来たユキヒョウなのかなどのバックグラウンドが分からないことです。
糞の回収と遺伝子解析
上記のような理由から、今回の研究をおこなった研究者らは生体を捕まえたり、GPSをつけて追跡したりするのではなく、ユキヒョウの残した糞を回収して解析することが、最も効率の良い方法であると考えました。そして、実際に糞を回収し、遺伝子解析をおこなった結果、遺伝子型が地域によって大きく3種類に分けられるということが分かりました。
3種のサブタイプ
1. 北部地域グループ(Northern group)
アルタイ山脈地域(中国の新疆(しんきよう)ウイグル自治区シベリアモンゴルにまたがる山脈)に生息するユキヒョウで、研究者たちはPanthera uncia irbisと呼んでいます。
2. 中央グルーブ( Central group)
ヒマラヤ山脈やチベット高原に生息しているユキヒョウで、研究者たちはPanthera uncia uncioidesと呼んでいます。
3. 西部地域グルーブ( Western group)
天山山脈やパミール高原、カイラス山などに生息しているユキヒョウで、研究者たちはPanthera uncia unciaと呼んでいます。
今回の研究により、以上の3地域で、ユキヒョウの遺伝子型が少しずつ異なるということが初めて明らかになりました。
遺伝子の多様性?
これらの研究結果から、どのようにユキヒョウの集団が構成され、つながっているのかが少しだけですがわかって来ました。研究者によれば、他の集団との関わりがある方が、生物的には安定しており、生存できる可能性が高くなると言います。
同じような遺伝子型同士で長い間交配が行われると、遺伝子の欠陥が生じることが多くなるのですが、おそらくこの点を指摘しているのだと思います。
保護
実はユキヒョウ、絶滅が心配される動物の1つでもあります。したがって、ユキヒョウの詳しい生態やサプタイプがわかることで、より特化した保護対策が行えると言えます。これからの研究の進展に期待大です。
あわせて読みたい
参照サイト
Data from: Range-wide snow leopard phylogeography supports three
Three new sub-species of snow leopard discovered – Phys.org
Three new sub-species of snow leopard discovered — ScienceDaily
参照論文
Range-Wide Snow Leopard Phylogeography Supports Three Subspecies, Journal Of Heredity (2017). academic.oup.com/jhered/article-lookup/doi/10.1093/jhered/esx044
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