フランスにて猫カリシウイルスのウイルス量と猫慢性歯肉口内炎の重症度/治療結果の関係性について調べられた最新研究が発表されました。
猫カリシウイルスと慢性歯肉口内炎
猫慢性歯肉口内炎では、歯肉、歯槽、口腔粘膜部分に両側性の炎症が起こり、舌や口蓋部分に潰瘍が形成されることもあります。この猫慢性歯肉口内炎の原因には様々なものがあると考えられており、ウイルス性の感染もその一つになります。ウイルスの中でも特に猫カリシウイルスが慢性的な口内炎や口腔粘膜の潰瘍などと関連している可能性が先行研究で示唆されています。しかし、猫カリシウイルスの量と猫慢性歯肉口内炎の重症度や治療予後との関係性については明らかになっていません。そのため、猫カリシウイルスの量が多い猫ほど、猫慢性歯肉口内炎が重度であり、治療の予後もあまり良くないという仮説に基づいて最新研究が行われました。
猫カリシウイルス量と猫慢性歯肉構内炎の重症度の関係性
猫カリシウイルス量と慢性歯肉口内炎の重症度の関係性については過去の診療記録に基づき、104匹の猫において調べられました。猫カリシウイルス量についてはReal-time PCRにて評価されています。また、吻側部の口内炎の重症度については”global caudal stomatitis intensity score(GCSIS)”、歯槽における口内炎の重症度については”alveolar stomatitis intensity score(ASIS)”により評価されました。さらに、臨床症状についての評価なども同時に行われていきました。
その結果、猫カリシウイルス量とGCSISとASISのスコアにおいて相関関係はないことがわかりました。このことは、猫カリシウイルス量と歯肉口内炎の重症度には関係性がない可能性を示唆しています。一方、舌の潰瘍の有無については、猫カリシウイルス量に関係するということが示唆されました(ウイルス量が多いほど潰瘍にかかりやすい)。
猫カリシウイルス量と治療結果には関係性がない
次に治療を施した猫の予後と猫カリシウイルス量の関係性について、56匹の猫を対象に調べていきました。このうち、84%の猫には少なくとも前臼歯と臼歯を全て抜く処置が適用され、11%の猫には選択した歯のみを抜くという処置が適用され、5%の猫には全ての歯を抜くという処置が施されています。
結果として、それらの治療の結果と猫カリシウイルス量においては関係性がないということが示唆されました。また、GCSISと治療結果についても関係性がないということがわかりました。これらの結果は、猫カリシウイルス量が少ない、もしくは吻側部の口内炎の重症度が低いからといって、治療結果が良くなるというわけではないということを示唆しています(その反対もしかりです)。
一方で、ASISの値が低い猫においては、その値が高い猫よりも急速に回復するということが分かりました。このことは、歯槽や頬の部分における炎症が軽度の猫ほど治療効果が期待できるということを示唆しています。
まとめ
今回の研究により、猫カリシウイルス量と慢性歯肉口内炎の重症度、治療結果の間には特に関係性がないということが示唆されました。一方、歯槽や頬の部分における口内炎の程度が軽度な猫ほど、治療後の回復が早いということが分かりました。
今回紹介した研究はオープンアクセスであり、誰でも閲覧することができます。
原著論文:Druet I and Hennet P. Relationship between Feline calicivirus Load, Oral Lesions, and Outcome in Feline Chronic Gingivostomatitis (Caudal Stomatitis): Retrospective Study in 104 Cats. Front. Vet. Sci(2017). 4:209. doi: 10.3389/fvets.2017.00209.
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