猫は肉食動物であり、昔の食料と言えばもちろん「生肉」です。
加熱することで、含まれているビタミンやミネラル、アミノ酸1などの大切な栄養素が失われてしまいます。一般に売られている加工キャットフードは高温で調理されているため、栄養素はかなり失われ、それを補うために人工的なビタミンなどを後から加えて、製品にしています。しかし、後から加える栄養素が適切なものである保証はないですし、代替ができない栄養素があることも事実です。
野生の猫は、獲物が小さければ、たいてい丸々全て食べてしまいます。この中にはもちろん骨も含まれており、生の骨は非常に消化しやすく、猫の主なカルシウム摂取源になります。骨は加熱すると、カルシウムなどの栄養素が減少してしまうだけでなく、骨がボロボロの状態になってしまうので、摂取する時に危険なこともあります²。
今回はこの他にも、猫に生肉を与えるメリットを紹介します。
消化が容易
猫は肉食動物であり、肉を食べる必要があります。猫の消化系は特に肉ベースの食事に適応していると言えます。猫の消化管は短くそして、人と比べてより酸性に傾いています。加えて、12時間ほどで摂取した生の食物を効率良く処理してしまいます。このことにより、バクテリアが繁殖するチャンスはほとんどないと言うことができ、従って猫は生得的に食中毒 に強いということになります³。
猫は炭水化物をほとんど必要とせず、従ってそれらを消化する能力もそれなりと言えます。猫にとっては、生肉が植物ベースの食事よりも、かなり消化しやすいのです⁴ 。猫は炭水化物を消化する酵素が少なく、炭水化物に対する消化酵素を複数持つ犬や人間とは大きく異なります⁵。
排泄物の臭い軽減と適切な排泄量の維持
適切な食事を与えれば、猫の体は摂取した食事のほとんどを使うことができます。従って、便は体に必要のない余分なものであるわけですから、純粋に排泄物の量が抑えられます。そうすれば、猫が排泄に使うエネルギーが減り、猫の体への負担も少なくなります。もちろん、飼い主のトイレの掃除もいくらか楽になるかもしれません。
生肉を食べている猫の便は大抵乾いてポロポロした状態で、ほとんど臭いも気になりません。 野生では、便からの臭いがすることが敵に見つかるきっかけになり得る為 、これは実は理にかなっているのです。自分の存在を不用意にアピールしてしまうと、争いになる可能性が高くなります。
逆に、炭水化物ベースの食事を食べていると消化できずに排泄する量が増えてしまいます。
健康な毛並み、抜け毛や毛玉の減少
何週間か生肉の食事にすると、猫の毛並みがより柔らかく、滑らかになっていることに気づくとおもいます。猫はオメガ6やオメガ3などの不飽和脂肪酸を必要とします。これらは植物由来の食物から生成することは難しく、動物性の食物からの摂取が必要です。
不飽和脂肪酸は健康な毛並みにしてくれるだけでなく、抜け毛を抑え、その結果毛玉の問題解消にも一役買ってくれます。こう言った意味でも、生肉はメリットが大きいといえるでしょう⁶。
エネルギーの増加
生肉の食事にすると、より効率良く消化吸収できる、すなわちエネルギーを効率良く摂取できるので、猫ちゃんは以前よりも活発に動くようになるでしょう。
犬や人はタンパク質を燃やしてエネルギーにしますが、その処理の量はその時にあるタンパク質の量に応じて調節します。 猫はこれができず、いつも高いレベルでタンパク質を利用します。したがって、高タンパクの食事を猫は必要としており、それにはタンパク質が破壊されていない生肉が売ってつけというわけです⁷。
肥満の改善
もしも飼っている猫が肥満傾向にあるのなら、生肉の食事は体重減少に一役買ってくれます。猫は不適切な食事を与えると、飼い主的には十分な量を与えていると思っていても、摂取した食事をうまく消化吸収できないため、すぐにお腹が空いてしまい、余計に食べてしまう現象が見られます。
高タンパクの食事にすれば、猫は満足し食べ過ぎることもなくなってきます。また、前述したようにエネルギーをたくさん作ることができるようになることで、蓄えている脂肪を燃焼しやすくもなります。無理せずに、痩せやすい体にできるというわけです。
歯の健康に良い
人間と同様に、歯の質は遺伝します。野生の猫は、通常歯周病やそれに起因する歯の喪失などを生じることはありません。なぜかというと、生の骨や肉、腱や皮、毛などを食べることが歯の清潔さを保つのを助けてくれていたからです。まさに、猫にとっては天然の「歯ブラシ」なわけです⁸ 。
特に炭水化物はデンプン質の膜を歯に形成することで、プラークを生じさせ歯周病リスクを上昇させます。また、歯石の主な原因にもなります。
口内が不衛生であると歯が悪くなるだけでなく、口内のバクテリアが全身に広がる可能性もあることから、口内環境を清潔に保つことは非常に重要です。
排尿機能の向上
生の食事はおよそ65-70%が水分です。メーカーが作る生のキャットフードもこれを参考に同じくらいの水分量になっています。炭水化物の食事、特にドライのものは、水分量が少なくアルカリ性の尿を引き起こし、慢性的な脱水状態を生じさせてしまいます。これによって尿管に炎症が起きやすくなります。
従って、水分が豊富に含まれている生の食事をオススメしているのです。その証拠に生肉を食べている野生の動物は、泌尿器系疾患が少ないと言われています⁹。
まとめ
生肉を与えることのデメリットもあることは事実ですが、やはり生肉の食事の良いところは、猫の本来の食事スタイルに合わせていることでしょう。また、いろいろと加工がなされたキャットフードと比べて、原材料が分かりやすく安心感があるという点も大きいでしょうね。
1. N. Gerber, M. R. L. Scheedera, and C. Wenk, “The Influence of Cooking and Fat Trimming on the Actual Nutrient Intake from Meat, ” Meat Science 81, January 2009, 148-154.
2. Dr. Bruce Syme, BVSc (Hons), “Feeding Raw Bones to Cats and Dogs.”
3. U.S. National Research Council Ad Hoc Committee on Dog and Cat Nutrition, Nutrient Requirements of Dogs and Cats, 2006, 7-10.
4. S. D. Crissey, J. A. Swanson, B. A. Lintzenich, B. A. Brewer, and K. A. Slifka, “Use of a Raw Meat-Based Diet or a Dry Kibble Diet for Sand Cats (Felis Margarita),” Journal of Animal Science 75, 1997, 2154-2160.
5. Claudia A. Kirk, Jacques Debraekeleer, and P. Jane Armstrong, “Normal Cats,” Small Animal Clinical Nutrition, 4th ed. Walsworth Publishing Company, 2000, 297-299.
6. John E. Bauer, DVM, PhD, DACVN, “Facilitative and Functional Fats in Diets of Cats and Dogs,” Journal of the American Veterinary Medical Association 229, no. 5, September 1, 2006.
7. Elizabeth M. Hodgkins, DVM, Esq., Your Cat: Simple Secrets to a Longer, Stronger Life, Thomas Dunne Books, 2007, 5-6.
8. David A. Fagan, DDS, Dental Consultant and Mark S. Edwards, PhD, Nutritionist, “Influence of Diet Consistency on Periodontal Disease in Captive Carnivores,” The Colyer Institute, 2009.
9. Elizabeth M. Hodgkins, DVM, Esq, Your Cat: Simple New Secrets to a Longer, Stronger Life, Thomas Dunne Books, 2007, 167-171.
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