スウェーデン農業科学大学の研究チームはスウェーデンにおける猫の肥満率と肥満に関連する要因の探索を行いました。なお、ここでいう肥満とはOverweight(太り過ぎ)とObesity(肥満)の両方を含んでいます。
スウェーデンの猫の肥満事情
世界中の猫が肥満に悩まされており、その罹患率や原因については地域によって異なることが知られています。しかし、スウェーデンにおいては、あまり調べられていないのが現状です。そのため、最新の研究はスウェーデンの猫における肥満率とその要因について探索しています。
研究はスェーデン農業科学大学の動物病院の患者情報と、インターネットなどを利用して収集した飼い主からの情報を利用しています。データ解析の対象となったのは1072匹分のカルテ情報と、1665匹分の飼い主から集めた情報になります。当然ですが、両群のデータは独立しており、全くもって別物です。動物病院からのデータは、9段階のボディコンディショニングスコア(BCS)が用いられており、6-9以上の猫は肥満とみなされます(獣医療のプロが判定)。一方で、飼い主からのデータは、5段階のBCSが用いられており、4-5の猫は肥満とみなされます(飼い主が判定)。
肥満率
解析を行った結果、スウェーデンにおける肥満率は、動物病院のデータを基にした場合と飼い主のデータを基にした場合で異なることがわかりました。
- 動物病院に基づく場合:45%
- 飼い主に基づく場合:22%
動物病院のデータに基づくと、半数近くの猫が肥満であることがわかりました。飼い主のデータに基づくと、その肥満率は半減してしまいます。この違いは、BCSの判定者がプロと飼い主であることに関連している可能性があります。つまり、飼い主の方がBCSを過小評価しているということです。このことについては意外と多くの先行研究が指摘しています。
肥満に関連する要因
猫種
バーマンやペルシャといった猫種は、混血猫よりも肥満のリスクが低くなるということがわかりました。また、飼い主のデータに基づいた時には、ノルウェージャン・フォレスト・キャットにおいてもリスクが低くなるということがわかりました。
性別
オス猫の方がメス猫よりも肥満のリスクが高まるということがわかりました(1.4~1.6倍)。
年齢
15歳以上の高齢の猫は7-10歳の猫と比較して、肥満になる確率が0.3~0.6倍も低くなることがわかりました。
避妊・去勢手術の有無
不妊手術を行っている猫の方が、肥満と診断される確率が高くなることがわかりました(動物病院のデータのみ:1.4倍)。
疾病
動物病院のデータを解析すると、下部尿路疾患の猫では3.4倍、糖尿病の猫では2.7倍、呼吸器系疾患の猫では2.6倍、皮膚に関する疾患の猫では2.4倍、運動器系の疾患の猫では1.9倍、外傷関連の疾患を持つ猫では1.6倍も肥満になる確率が高くなるということがわかりました。
食事
飼い主からのデータを解析すると、ドライ・キャットフードを与えられている猫では、ウェットフードを与えられている猫よりも2.4倍も肥満になる確率が高いということがわかりました。また、餌をすぐに食べてしまうような猫では、少量ずつ食べる猫と比較して2.0倍も肥満になる確率が高いということがわかりました。
活動量
飼い主からのデータを解析すると、活動的でない猫は、普通の活動量を有する猫と比較して、2.0倍も肥満になる確率が高くなるということがわかりました。
まとめ
最新研究により、スウェーデンの猫の肥満事情が明らかになりました。端的にまとめると、オス猫や不妊手術済みの猫、ドライキャットフードを与えられている猫、活動量が低い猫、特定の疾患を持っている猫では肥満に注意する必要があるのかもしれません。一方で、バーマンやペルシャといった猫種や高齢の猫ではあまり肥満になりにくいのかもしれません。ドライ・キャットフードと肥満の関連性については、いろいろな論争を巻き起こしそうな気がします。この点についてはまだまだ研究が必要だと思います。
今回紹介した研究はオープンアクセスであり誰でも閲覧することができます。
原著論文:Öhlund M , Palmgren M, Holst BS. Overweight in adult cats: a cross-sectional study. Acta Vet Scand (2018) 60:5
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