ニューヨーカーの Shakeema Hutchersonさんは、彼女が死んだら”家族”と一緒に埋葬して欲しいと考えています。「それって普通のことじゃない?」と思うかもしれませんが、彼女の言う”家族”には可愛いヨークシャテリアとチワワのミックス犬のTinkaと猫のSweetieも含まれています。
目次
ペットの埋葬
日本では、宗教観や衛生観念上、人間と動物を一緒に埋葬するには、墓地の管理者である寺院や自治体の承諾が必要であり、一般的には許可されていません。しかし、最近ではペット一緒に入れるお墓などを売り文句にしている霊園も出てきていますが、北海道、東京、大阪など10都道府県あまりです。
一方、アメリカは条件が厳しく、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、人の墓地にペットも埋葬するという行為を正式に許可した州はほとんどないそうです。
ペットとの共同埋葬が実現
しかし、ニューヨーク州ではHutcherson氏にその時が来たら、犬のTinkaと猫のSweetieと一緒に眠ることができるようになるのです。というのも、 Andrew M. Cuomo 州知事が、人のための霊園で、ペットとの共同埋葬を許可する条例を採択することを決めたからです(2016年)。Hutchersonさんは次のように述べています。
ペットは私にとって子供のようなものなの。だから、子供を私の傍に埋葬することは、何ら不思議なことではないでしょう??
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埋葬の条件
ただし、条例には次のようにいくつかの条件があります。
- ペットは必ず火葬すること(アメリカでは土葬が一般的)
- 野生動物はダメで、犬や猫などの愛玩動物に限ること
- ペットも人も自然死であること
宗教色の強い墓地などは例外であり、墓地側は動物の埋葬を拒否することもできます。今までは、ペットと人が一緒に、人のための霊園で埋葬されること自体が違法で、禁止されていたわけですが、霊園側の承諾さえ得られれば、違法となることはなくなったというわけです。
ニーズの反映
「犬や猫は多くのニューヨーカーにとって、家族同然になっています。死後も彼らと一緒にいたいという気持ちがあるのであれば、それを尊重するべきではないでしょうか?」と民主党議員も述べています。
また、「この法律による変化は、ペットと一緒に眠りたいと願う多くの人々にとって朗報でしょう。」とニューヨーク州埋葬協会の政府関係課長であるDavid Fleming氏も述べています。彼はこの新しい条例を5年ほど前から推し進めてきました。「時代は変わってきました。人々はペットを含めた”家族”の概念について、多様な見方をするべきでしょう。」
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よりペットに配慮した制度を
ニューヨーク州での最近の埋葬に関する法律の改革のおかげで、ペットに対しての配慮がより充実してきたと言えます。余談にはなりますが、その他にもつい昨年、犬がレストランの外テーブルに飼い主と一緒に入ることがるという条例が承認されました。
盲導犬などの犬ではなく、ごく普通のに飼われている犬です。ここ最近で採択された法令では、ペットを盗んだり、虐待したりといったことに対する罰則が重くなり、ペットを扱う業者に対する監視も強化されました。
Hartsdaleペット霊園
この条例が承認されるまでは、合法的にペットの傍に埋葬してもらうには、飼い主の方がペット霊園に埋葬されるしかありませんでした。ニューヨークのウエストチェスター郡にある19世紀頃から続くアメリカで最も古い Hartsdaleペット霊園では、霊園の責任者である Edward C. Martin Jr.によると毎年およそ5〜7人の飼い主がペットと一緒に埋葬されているそうです。
Hartsdaleの5エーカーにも渡るのどかな霊園は、飼い主たちから愛されたペットのお墓で埋め尽くされています。 Martin 氏は、新しい条例のおかげで、ペットと共同埋葬を願う人たちの思いに応えることができることを嬉しく思っていると言います。
年々ペットとの共同埋葬を希望する人は増えており、競争率も高くなっているのだそうです。 彼の両親も、家族の一員であった愛犬と一緒にこの霊園に埋葬されています。この霊園には犬や猫だけでなく、カメやフェレット、モルモットなども埋葬されているそうです。
肯定的な霊園も
クイーンズ群にあるAll Faiths霊園は、ペット霊園ではなく”人”が対象の霊園ですが、州の条例が承認されたことからペットとの共同埋葬を許可することにしています。
ペットの埋葬にかかる費用は$450程度だそうです。霊園の管理者は「自分たちの愛する犬や猫、もしかしたらインコやハムスターかもしれませんが、彼らと一緒に埋葬してほしいという希望があれば、喜んで一緒に眠ってもらいたいと思います。素晴らしいことだと思いませんか?」と述べています。
実は以前から・・・
Metropolitan Funeral Directors Associationメトロポリタン葬儀取締役協会の常務取締役のRobert Ruggieroはこのようなことを述べています。
実際に、新しい条例は長きにわたってこっそりと行われてきたこと(例えばペットの位牌を棺の中にこっそり入れるなど)を合法化してくれました。
以前までは、亡くなったペットの位牌を家族が持っておき、例えば母親が死んだ時にその位牌をそっと、母親の棺に入れて埋葬するといったことがよく行われていましたが、公にできることではありませんでした。新しい埋葬に関する条例は、その思いを合法化してくれただけでなく、さらに次の段階まで進めてくれました。新しい条例では飼い主が先に死んで埋葬された後でも、その傍にペットを埋葬することをも許可しています
長生きするペット
この法律のおかげで、カメのような長生きをする動物を飼っている飼い主にも光が見えたようです。ニューヨークカメ協会 New York Turtle and Tortoise Societyの教育局長であるBarbara Daddario氏は次のように述べています。
ある種のペットは、何十年も生きることができるので、飼い主よりも長生きする可能性は十分にあります。カメというと、なんだか意思疎通が取れないかのように思う人が多いかもしれませんが、私たちの協会の会員は、犬や猫を飼う人と同じように、カメと強い絆を結んでいる人が多いのです。実際にカメは幾つかの世代をまたいで飼われることも珍しくなく、カメの方が飼い主によりも後に死ぬことは多いとも言えるでしょう。愛したペットが、自分の生涯を終えた後に、一足先に旅立った自分のそばに寄り添って眠ってくれるなんて、なんて幸せなことでしょう。
今後、どのくらいの数のその他の州で、”人”の霊園でのペットとの共同埋葬が承認されるかは分かりませんが、多くの州では、これが承認されていないのが現状です。
ペットは飼っているけれど・・・
しかし、ペットを飼っている人全てが、この変化に魅力を感じているわけではないようです。ニューヨークに住む作家Angelo Nikolopoulosさんは、ポメラニアンのNikoを飼っています。Nikoの事をとても可愛がっている彼ですが、人間のための霊園にペットを埋葬することは行き過ぎだと考えているようです。 「Nikoはあくまでペットです。一緒に埋葬されるというのは、何か違う気がする」と話します。
まとめ
ペットに対する考え方は人それぞれで、家族のように思う人から、ペットは「ペット」という人まで様々です。それぞれが抱える想いは違うかもしれませんが、ペットとの共同埋葬という選択肢ができたことは大きいのではないかと思います。
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「家族の名前」を「飼い猫の名前」と間違えて呼ぶことはないことが判明
参考文献
New York Burial Plots Will Now Allow Four-Legged Companions
Operation of Pet Cemeteries and Pet Crematoriums
New York Turtle and Tortoise Society
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