猫の肥満は環境的要因と遺伝的要因が複雑に絡み合うことで引き起こされます。環境的要因にはキャットフードの質や与え方などが含まれ、遺伝的要因は肥満になりやすい遺伝子を持っているということが含まれます。
最新の研究によると、遺伝的な肥満傾向とは関係なく、炭水化物が多いキャットフードを与えると、食後の血中インスリン濃度を高くなるということがわかりました。このことは、猫の体重を増加させないためには高炭水化物のキャットフードを与えることは避けたほうが良いということを示唆しています。
3種類のキャットフードによる代謝物質の変化
対象となったのは遺伝的に肥満傾向にある猫6匹とそうでない痩せ型の猫7匹です。遺伝的に肥満傾向にあるかどうかは、その猫の8ヶ月齢でのボディ・コンディショニング・スコアを見ることで判断し、肥満傾向にある猫はその後、理想の体型になるように減量プログラムを行っています。研究を行った時の年齢は4〜5歳であり、両群とも理想体型です。
高タンパク質のキャットフード、高脂質のキャットフード、高炭水化物のキャットフードを用意し、猫に8日間与え続け、最終日に採血を行い、血液中の代謝物質の濃度を測定していきます。1種類のキャットフードの計測が終わると、2週間の期間を空けて、異なるキャットフードを同じ期間与えていくという感じです。これを3種類のキャットフードで行います。いわゆるラテン方格法です。
痩せ型の猫ほどインスリン濃度が高くなる
まず、痩せ型の猫であるほど食後の血中インスリン濃度が高いということがわかりました。一方で、血中グルコース濃度やインスリン感受性(インスリンの効きやすさ)については特に変化が観察されませんでした。
インスリンは膵臓から分泌され、細胞内へのグルコース(糖)の吸収を促進するようなホルモンです。痩せ型の猫であるほど食後の血中インスリン濃度が高くなる理由は定かではありませんが、遺伝的に肥満傾向になりやすい猫では、食後に上昇した血糖値を下げるための膵臓から分泌されるインスリンの量が少なくなることが予測されます。しかし、血糖値や血中グルコース濃度は正常であり、特に問題があるわけではなさそうです。解釈が難しい部分ですよね。
もしかすると、遺伝的に肥満傾向になりやすい猫が受けた減量プログラムに何かしらの影響を与えているのかもしれません。
高炭水化物のキャットフードはインスリン濃度を高める
次に3種類のキャットフードによる違いを見ると、高炭水化物のキャットフードはその他のものと比較して、血中インスリン濃度を高くするということがわかりました。これは両群ともに観察されています。インスリンのターゲットは炭水化物を構成するグルコース(糖)ですから、当然の結果でしょう。
この結果から言えることは、インスリンに対する感受性が低下している肥満の猫や肥満傾向にある猫に高炭水化物のキャットフードを与えてしまうと、血中インスリン濃度が高くなってしまい、高インスリン血症のような状態に陥ってしまう可能性があるということです(血中のインスリン濃度が高くなっても問題になります)。
まとめ
結果の解釈が難しい研究でしたが、少なくとも肥満傾向にある猫や肥満の猫には炭水化物の多いキャットフードを与えるのは避けた方が良さそうです。
それにしても、遺伝的に肥満傾向のある猫に適用した減量プログラムがどのようなものであったのか気になります。その減量プログラムのおかげで、インスリン感受性が正常になっていたり、正常なインスリンの量で血糖値をコントロールできるようになった可能性がありますからね。あと、減量プログラムを抜きにした条件でも研究を行ってもらいたかったです。
今回紹介した論文では、血中インスリン濃度以外にも様々なパラメータを解析しているため、気になる方は原著論文を読むようにしてください(無料)。
原著論文
Claudia Keller, Annette Liesegang, Diana Frey and Brigitta Wichert. Metabolic response to three different diets in lean cats and cats predisposed to overweight. BMC Veterinary Research(2017). 13:184. DOI: 10.1186/s12917-017-1107-3
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