最新研究において、クイーンズ大学ベルファストの研究者らは猫の普段の行動において利き手が観察されるのかについて探索を行っています。
猫の利き手は普段の行動でも観察されるの?
メス猫は右利きが多いということは有名ですが、それはあくまでも実験上の条件の話であり、研究者らが人工的に設定した状況下で観察される利き手になります。しかし、普段の猫の行動においても利き手が観察されるのかについては不明です。そのため、最新研究は普段の行動における利き手について探索するとともに、実験状況下における利き手との関連性について探索しています。
研究では44匹の不妊手術が施されたペットの猫が行う3つの行動について3ヶ月の間飼い主に記録・観察してもらいました。具体的には猫が階段を降りる時にどちらの前足を最初に踏み出すか、障害物(トイレの壁)をまたぐ時にどちらの前足を最初に踏み出すか、横になって休む際にどちらの体を地面につけるかについて観察してきます。また、従来の餌を取り出す実験も行い、猫がどちらのを前足を使用するのかについても調べました。
利き手は普段の行動にも反映されている
その結果、階段と障害物をまたぐ行動、餌を取り出す行動に関しては利き手がある猫が多いということがわかりました。しかし、全体としてどちらの前足をよく利用するかについては一定の傾向はありませんでした。一方、休む行動に関しては利き側がある猫は少なく、両利きの猫が多いということがわかりました。
また、餌を取り出すという行動の利き手とその他の行動の関係性について見ていくと、階段を降りる行動と障害物をまたぐという行動において関係性が深いということがわかりました(正の相関)。例えば、餌を取り出す行動において、右前足をよく使用する猫では、階段を降りる際、障害物をまたぐ際に最初に右前足を踏み出すことが多いということです。これは当たり前のことのように思うかもしれませんが、今までの研究では示されたことのない新しい発見になります。
また、餌を取り出す行動や階段と障害物に関する行動において、メス猫では右前足を使用する(右利きである)ことが多く、オス猫では左前足を使用する(左利きである)ことが多いということもわかりました。
まとめ
最新研究により、猫が普段行う行動の一部にも利き手が存在するということがわかりました。また、その利き手が実験の状況下で得られた結果、つまり餌を前足で取るという実験で得られた結果と一致するということもわかりました。唯一、休む行動に関しては利き側が存在していないことがわかりましたが、前足が積極的に関与する行動ではないため、ある意味納得できるかもしれません。利き手の性差については、不妊手術を行った後でも観察される点は面白いのでしょうか(不妊手術の時期にもよるかもしれません)。
今回の研究は解析の部分が少し複雑ですが、たいへん面白い研究であり、この記事で述べていないことも明らかになっています。期間限定で無料で閲覧することができるため、研究の内容をより詳しく知りたい人は原著論文を参照するようにしてください。
原著論文:McDowell LJ, Wells DL, Hepper PG. Lateralization of spontaneous behaviours in the domestic cat, Felis silvestris. Animal Behaviour(2018). 135,37e43. https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2017.11.002
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