猫の性格(正確には気質)を知ることは、性格に合わせた対応を行えるという点で重要です。例えば、神経症傾向な性格な猫にはしっかりと隠れる場所や高い場所などを用意したり、低頻度で低強度の接触を行うように心がけることで、猫の福祉を向上することができるようになります。現在のところ、様々な研究で猫の性格についての解析が行われており、2017年に発表された研究では猫の性格は6つの因子に分けることができるとしています。しかし、それらの研究は研究に参加した飼い主や猫の数が少ないという欠点があります。
そんな中、オーストラリアとニュージーランドの共同研究チームは2,291人の猫の飼い主に飼い猫の性格に関するアンケートを取り、統計学的解析を行い、猫の性格を構成する5つの因子を見つけ出しました。この研究結果は2017年8月23日にPLoS ONEにて発表されています。
猫の性格に関する大規模な調査
研究に参加した飼い主は2,291人に猫の性別や年齢などの一般的な情報に加えて、猫の性格に関する質問にインターネット上で回答してもらいました。そして、合計2,802匹の猫に関するデータが取得できました(多頭飼いなどの環境もあるため)。
猫の性格に関する質問の例をあげておきます。
- Suspicious(疑い深さ):信頼しておらず、容易に家に来た訪問者(動物を含む)に近づこうとしない
- Individualistic(個性):他の猫とは異なる行動をとる
- Curious(好奇心の度合い):新規の状況を探索する
- Affectionate(愛情深さ):他の猫やペット、人間との結びつきがある。例えば、他の猫やペット、人間の側で横になったり、触れあったり、グルーミングを行う
- Insecure(不安さ):容易に怯え、不安になったり、恐怖を感じる
- Bullying(いじめの度合い):高圧的であり、他の猫を怯えさせる
上記のような質問を52個行い、各質問に対して「全く当てはまらない」〜「とても当てはまる」を7段階で評価してもらいます。そして、統計学的な解析により、関連性のある性格をまとめてグループ分けをしたところ、5つに分類することができました。
猫の性格5因子
それでは、最新の研究で特定された猫の性格5因子をみていきます。
Neuroticism 神経症傾向
不安傾向が高く、人間などに恐怖を感じる。また疑い深く、恥ずかしがり屋である。
Extraversion 外向性
活発であり、好奇心が強い。賢く、器用である。
Dominance 支配性
他の猫をいじめたり、攻撃し、支配的である。
Impulsiveness 衝動性
衝動的な行動、不規則な行動を、無謀な行動を行う。
Agreeableness 協調性
人間などに対して友好的で愛情深い。また、温厚である。
まとめ
最新の研究により、猫の性格を構成する5つの因子が示唆されました。この5つの因子は人間の性格5因子である「Big Five ビッグ・ファイブ」にちなんで「Feline Five フィーライン・ファイブ」という名前が付けられています。ちなみに、今回明らかになったネコ科の5因子のうち、神経症と外向性、協調性に関しては人間の5因子の中にも存在しています。猫の性格にも人間に近い要素があるということは面白いとは思いますが、人間が評価を行っているので当たり前のことなのかもしれません。
また、あくまでも5因子のうちどれか1つの因子のみに性格が当てはまるというものではなく、5つの因子により1つの性格が出来ているということを忘れないでおきましょう。もちろん、どれか1つの因子の傾向が高いということはあり得るので、その傾向にあわせた対応をしていくことが重要です。例えば、外向性のスコアが高い猫には、たくさんの環境エンリッチメントなどを行うことで、常に刺激を与え、退屈を避けるなどを行っていくことが重要となってきます。
なお、今回紹介した研究はオープンアクセスであり、誰でも無料で閲覧することができます(クリエイティブ・コモンズライセンス)。詳細が気になる方はぜひ原著論文を参照してください。
原著論文
Litchfield CA, Quinton G, Tindle H, Chiera B, Kikillus KH, Roetman P. The ‘Feline Five’: An exploration of personality in pet cats (Felis catus). PLoS ONE(2017). 12(8): e0183455. https://doi. org/10.1371/journal.pone.0183455.
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