人の名前を呼ぶときに、間違えて他の人の名前を呼ぶときってありますよね? では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
そんな疑問に答えるべく、アメリカのフロリダにあるローリンス・カレッジの認知科学者Samantha Deffler博士が研究を行い、2016年10月のMemory & Cognition誌に研究結果を発表しました。
実はこの研究では「家族の名前」を呼ぶときに、間違えて「飼い猫の名前」で呼んでしまうこともあるのかどうかについても調べています。ではどのような結果になったのでしょうか?
名前の間違い
友人や家族の名前を呼ぶときに、間違えて異なる友人や異なる家族の名前を呼んでしまうことはよくあることです。最悪な場合は、間違いなく彼女や彼氏の名前を前の彼女や彼氏の名前で呼んでしまった時でしょう。最近のご時世的に最も修羅場なのは、妻や夫の名前を不倫相手の名前で呼んでしまった時かもしれません。笑
今回のアメリカで行われた研究では年齢や性別の異なる1,700人を対象に「人から違った名前で呼ばれたことがあるか?」、「人の名前を間違えて呼んだことがあるか?」などの質問を行い、その時の相手の関係性などを詳しく聞いていきました。その結果、かなり多くの方が人の名前を間違えて呼んでしまうことがあることが判明しました。
名前を間違えてしまう人の関係性
次に、名前を間違えて呼んでしまう人の関係性を見てみると、同じカテゴリーという間柄が多いということがわかりました。
例えば、父親の名前を間違えて呼ぶ時には、他人の名前ではなく、家族の誰かの名前で呼んでしまうということです。他には、友人の名前を間違えてしまう時には、家族の名前ではなく、他の友人の名前で呼んでしまうということが多いということがわかりました。
名前はフォルダ分けされている?
このような結果から、Deffler博士は人間の脳では人の名前をフォルダ分けして、記憶しているのではないかと考察しています。つまり、父親や兄弟の名前なら「家族」という記憶のフォルダ内に収納し、友人の名前であれば「友人」という記憶のフォルダ内に、恋人であれば「恋人」という記憶のフォルダ内に名前を収納しているということです。
そのために、人の名前を間違って呼んでしまうのです。つまり、記憶から「名前」を取り出す時に、その名前が収納されているフォルダ内にある別の「名前」を取り出してしまっているということです。なるほど!と思いますよね。
では、ここからが本題です。では、家族の名前を飼っている猫の名前で呼ぶということはあるのでしょうか?
猫の名前
今回の実験では、犬と猫を飼っている対象者が多かったそうです。そのうち、家族を呼ぶときに間違えて名前を呼んでしまうのは圧倒的に犬の方が多かったという結果になりました。一方で、家族を呼ぶときに猫の名前で呼ぶことは少なかったそうです。
ということは、犬は家族というフォルダに入っているものの、猫は家族というフォルダに入っていないということになります。
な、なんて悲しいことなのでしょうか。筆者はショックです。猫を家族としてみなしてあげてほしいです。とは言うもののここには少しカラクリがあります。「まとめ」のところで後述します。
まとめ
家族の名前を間違えて呼ぶときには、飼い猫よりも飼い犬の名前で呼ぶことの方が多いようです。これは「家族」というフォルダに猫の名前が入っていないからだと考えられています。しかし、ここには少しカラクリがあります。アメリカなどでは犬の方が「人間の名前に近い名前」をつけることが多いく、一方で猫の方は「人間の名前とはかけ離れた名前」をつけることが多いのです。
そのため、もし猫が「家族」というフォルダに入っていたとしても混同することがないということも考えられます。そのため、猫が「家族」として認められていないと単純に考えるのは危険かもしれません。
余談ですが、筆者はスイーツの名前をつけた犬、つまり人間の名前とはかけ離れた名前の犬を飼っているのですが、筆者の母親はよく筆者をこのスイーツの名前で呼んできます…。「プリン」って…
ちなみに、原著論文は無料で読めるので、読んでみてください。
あわせて読みたい
原著論文
Deffler, S.A., Fox, C., Ogle, C.M. et al. All my children: The roles of semantic category and phonetic similarity in the misnaming of familiar individuals. Mem Cogn (2016) 44: 989. doi:10.3758/s13421-016-0613-z
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