カナダ獣医師会: Canadian Veterinary Medical Association(CVMA)は、2017年3月29日猫の爪切除術に関する事項を改正し、猫に対する爪切除術に全面的に反対するという声明を公開しました。
これによると爪切除術が猫に与える長期的な行動や身体機能への副作用については不明なことが多く、予期できない症状や状態が生じる可能性があり、猫にとっては何のメリットもないとしています。
カナダでもやっと
カナダ獣医師会は今回の改正に伴い、カナダ全土の獣医師会員に ”非治療的な爪切除術について” と題したガイドラインを送付しました。すでに、イギリスをはじめとするヨーロッパ各国、オーストラリア、カルフォルニアやニュージャージーなどのアメリカの一部の州では、医療的に必要と判断される場合以外の爪切除が禁止されています。
爪切除禁止の気運が高まる期待
実のところ、カナダではこれらの手術を禁止するかどうかは、その州の獣医師取り締まり役の判断に委ねられています。
猫に対する爪切除術に対しては国で法律が定められているわけではないので、州ごとの判断が重要になってきます。したがって、今回のカナダ獣医師会の指針の改正は、各州の獣医取り締まり役の判断に影響を与えると思われ、各州で猫の爪切除術に対して厳しい規制がなされることが期待されます。
爪切除支持派の主張
日本ではあまり聞かないように思いますが、カナダでは飼い猫に対する爪切除術はそこまで珍しいことでもなく、現在でも施術を希望する飼い主やその手術を行う獣医師がいるのも事実です。
爪切除術を希望する飼い主のあげる理由は、大切な家具や子供、その他一緒に飼っているペットを引っ掻くことを防ぐためというものです。爪切除術に賛成する人たちは、適切な麻酔下で行わる手術であれば問題はないと主張しています。
想像を超える痛みを伴う手術
しかし、爪切除術はみなさんが思っているような気軽な手術ではありません。「ただ爪を取るだけ」と思ったら大間違いです。
猫の爪は骨に密接に隣接しているため、爪を取り除こうとすれば、骨ごと一緒に切除しなければなりません。人間で言えば、指の第一関節(DIP)から切断されるような感じです。どれほど痛い思いをするか想像ができますよね?
猫は痛くない?
獣医学部では、一般的に犬に関しては爪切除術は痛みが激しすぎると教わるそうです(筆者は獣医学部の出身ではないので実際のところはよくわりませんが)。今では虐待になるでしょうが、犬に対して爪切除術を試みた際に、犬は苦しそうに鳴いたり、叫ぶように泣いたり、唸ったりと、明らかに痛みで苦しんでいる反応を見せたそうです。通常の人間であれば、このような反応を見たら続けられないですよね。
しかし、猫に関しては犬のようには反応を見せないようです。もともと、猫は弱っているところを悟られないようにする習性があり、以前にも記事で「猫が痛み感じていることを理解するのは難しい」ということを述べました。反応が犬よりも薄いからといって、猫が痛みを感じていないというのは大きな間違いです。また、猫に対する爪切除術をは不妊手術などとは比にならないくらいに痛みを伴うものであるとも言われています。
問題行動が増加する?
また、先ほどのも述べましたが、猫に対して爪切除術を望む飼い主は、引っ掻くなどの猫の問題行動を防ぐということが主な目的です。しかしながら、爪切除術を施された猫の少なくとも3分の1程度は不適切な排泄(失敗)や攻撃性の増加、噛みつくなどの問題行動が見られるようになるというデータもあります。その結果、爪切除術を施された後に、捨てられるといったケースもあるそうです。
まとめ
爪を研いだりするのは猫の習性であり、きちんとしつければ、むやみやたらに人やその他の動物を引っ掻くといったことはまずないと言えるでしょう。このような問題行動に関しては、飼い主が工夫や努力をすればいくらでも改善の余地があるところだと思いますが、それを爪切除術に頼るのは人間の勝手としか言いようがないですよね。しかも、猫ちゃんにひどい苦痛を与えるわけですから、猫を愛する人たちにとっては心が痛い話だと思います。
今回の改正指針で、苦しい思いをする猫ちゃんが少しでも減ってくれることを願うばかりです。
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参照サイト
NEWS RELEASE: CANADIAN VETERINARY MEDICAL ASSOCIATION OPPOSES DECLAWING OF CATS
Canadian vet association now opposes the declawing of cats
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