2016年12月ニューヨークにてシェルターに勤務している獣医師に鳥インフルエンザH7N2の感染が確認されました。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は今回の鳥インフルエンザH7N2を解析し、その詳細について発表しました。
H7N2のヒトへの感染
H7N2はA型インフルエンザウイルスであり、病原性は比較的低いとされています。アメリカでは2002年と2003年にもヒトへの鳥インフルエンザH7N2の感染が観察されています。2002年の感染はヴァージニア州で起こり、その際の感染源は家禽でした。一方、2003年にニューヨークで観察されたH7N2の感染は未だに感染源が不明であるものの、鳥が感染源である確率が高いと言われています。
そして、2016年12月にもニューヨークにおいてヒトへの感染が確認され、今回のCDCのレポートにまとめられています。今回の感染はシェルターに保護されている猫に感染が起こり、続いて、手当を行った獣医師に感染が起こりました。
猫が感染源
獣医師に感染したH7N2を分離し、遺伝学的解析を行ったところ、猫に感染したH7N2ウイルスと99.9%同じであるということがわかりました。これにより、シェルターに保護されている猫が感染源であることがほぼ確実になりました。さらに、系統学的解析を行った結果、このウイルスは2000年代前半にアメリカで観察されたH7N2ウイルスに近縁であることがわかりました。特に1996年〜2005年にアメリカ東部(ニューヨークやバージニア州を含む)で家禽より分離されたH7N2ウイルスに近縁である可能性が高いことがわかりました。
ウイルスの特徴
今回確認されたH7N2ウイルスは2002年のヴァージニア州や2003年にニューヨークで確認されたH7N2同様、ヘマグルチニン(H7)において一部のアミノ酸配列が欠失していることが分かりました。これによりウイルスは哺乳類の呼吸系に感染しやすい特性を持つようになり、哺乳類同士での接触による感染性が高まる可能性が示唆されました。
H7N2ウイルスが宿主細胞に感染する際には、宿主細胞側の受容体に結合することが不可欠です。今回感染が確認されたH7N2ウイルスはSia α2-3Gal(鳥型レセプター)、Sia α2-6Gal(ヒト型レセプター)、α2-3Gal/α2-6Galの3つの種類の受容体に結合することが分かりました。特にSia α2-6Galへの結合性獲得はヒトへの適応性獲得の最初のステップとして重要と考えられています(glycoforum)。
まとめ
2016年12月にニューヨークのシェルターにおいて、猫に鳥インフルエンザの感染が確認され、その後獣医師への感染も確認されました。CDCのレポートによると、今回のヒトへの感染源は猫である確率がかなり高く、そして過去にアメリカ東部で観察されたH7N2ウイルスと似ていることがわかりました。また、ウイルスが宿主細胞に感染する上で重要なヘマグルチニンや宿主細胞の受容体への反応性なども明らかになりました。2016年にニューヨークで起こった出来事については「猫に鳥インフルエンザが感染!」の記事にまとめています。興味のある方は一読ください。また、今回紹介したレポートは誰でも無料で読むことができます。
レポート:Marinova-Petkova A, Laplante J, Jang Y, Lynch B, Zanders N, Rodriguez M, et al. Avian Influenza A(H7N2) Virus in Human Exposed to Sick Cats, New York, USA, 2016. Emerg Infect Dis(2017), 23(12):2046-2049.
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