人間には利き手と非利き手があります。人間の場合、ほとんどの人の利き手は右手と言われますが、利き手によって性格が異なるということを示した研究報告はありません。
では、猫ではどうでしょうか? 猫の利き手と性格の関係性について調べた研究が2016年11月にJournal of Comparative Psychology誌に掲載されました。
これまでの研究とともに少し、猫の利き手について考えてみましょう。
猫の利き手
1990年に行われた研究では、メス猫の大半は右利きであり、オス猫は右利き、左利きがそれぞれ半数ほどという結果が報告されています(Tan U et al., 1990)。ちなみに、両利きの猫は性別に関係なく少ないようです(若干オス猫よりもメス猫で多いようですが、数パーセントの差です)。
猫の利き手の判断
そもそも猫の利き手をどうやって判断するのでしょうか?
これはよく動物実験では用いられる手法である、リーチングテストを行うことで分かります。このテストでは、猫の前に餌を置き、その餌を手を使って取らせることを学習させます。その際にどちらの手を頻繁に使用するのかを評価することで利き手が分かります。餌を取るのに右手ばかりを使用するようなら、その猫は右利きということになるわけです。
利き手の強弱
動物の場合は利き手に強弱があります。どういうことかと言いますと、右手で餌をとることが多いけれども、時折左手を使用する猫もいます。その場合、右利きは右利きでもその強さが弱いと判断されます。利き手にも強弱があることになります。
これらの利き手の判断方法などは猫だけでなくラットやマウスなどのげっ歯類でも適応できます。
利き手と性格(気質)の関連
右利きの猫と左利きの猫、両利きの猫をそれぞれ30匹、計90匹の猫を対象にした最新の研究が、猫の利き手と性格(気質)の関連性について調べています。関連性を調べるために、それぞれの利き手の猫の性格(気質)を飼い主からの聴取や行動観察により評価していきました。
その結果、左利きの猫と比較して、両利きの猫では愛情深さや、従順度、友好度が低く、より攻撃的であることが分かりました。また、利き手の傾向が強い猫(どちらかの手を使用するのに固執する度合いが強い猫)では弱い猫よりも、愛情深く、自信家であり、活発であり、友好度が高いということが分かりました(McDowell L, et al., 2016)。この結果を簡潔にまとめると、両利きの傾向がある個体ほど攻撃性が高いということではないでしょうか。
まとめ
- メス猫は右利きが多い
- オス猫は右利きと左利きそれぞれ半々
- 両利きの猫は左利きの猫よりも攻撃的
- 利き手の傾向が強い(片方の手に固執する)猫ほど愛情深い、自信家、活発、友好的
以上のようにまとめましたが、McDowellらが行った利き手と性格の関連性の研究からでは右利きの猫や左利きの猫、両利きの猫の性格は「こうである。」と断定することはできません。あくまでも、利き手の違いによって性格(気質)が異なるという可能性を示唆しているに過ぎません。ただ、利き手の強弱による性格(気質)の違いについては当てにしても良いかもしれません。
みなさんの飼い猫の利き手はどちらでしょうか?
水を手ですくっている時や猫パンチをしている時、お手をしている時に猫が使用している手が左右どちらかを観察してみてはいかがでしょうか?
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参考文献
Tan U, Yaprak M, Kutlu N. Paw preference in cats: distribution and sex differences. 1990, Int J Neurosci, 50(3-4): 195-208.
McDowell, Louise J.; Wells, Deborah L.; Hepper, Peter G.; Dempster, Martin. Lateral bias and temperament in the domestic cat (Felis silvestris). Journal of Comparative Psychology, Vol 130(4), 2016, 313-320.
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