飼い猫にどのような餌を与えていますか? 私はウェットとドライ、2種類のキャットフードを与えています。
猫の飼い主の中にはローフード(生のお肉など)を与えている人もいれば、手作りしたキャットフードを与えている人もいると思います。個人的に興味はありますが、時間的にも知識的にも中々ハードルが高いため与えようと思いません。
ここで、ひとつ気になるのは加工キャットフードではなく、ロー・フードやホームメイド・キャットフードを与えている飼い主がなぜそのようなキャットフードを与えるようになったのかというところです。先日、アメリカにてローフードに関する調査結果が報告され、ローフードを与えている猫の飼い主の実態が少し明らかになりました。
なおこの調査報告は論文としてまとめられており、誰でも無料で読めるため、詳細を知りたい方は原著論文を読むことをお勧めします。
ロー・フード
ロー・フードとは火を通したり、調理されたりしていない動物の組織の一部(筋、腎臓や肝臓、肺、脾臓、骨)が入っている食事になります。
ちなみに、全米動物病院協会(AAHA)や全米獣医師協会(AVMA)、アメリカ食品医薬品局(FDA)などはロー・フードをペットに与えるべきではないと提言しています。しかし、これはあくまでもロー・フードの中にサルモネラ菌や大腸菌などが繁殖することにより、感染症が猫や人間に起こるという衛生上の問題からです。
従って、ロー・フードを与えること自体を否定しているわけではありませんが、現在ロー・フードを与えるメリットについては肯定も否定もできません。従って、ロー・フードにはメリットがあるとも言い切れないということを忘れないでください。
ロー・フードを与える理由
今回アメリカで行われた調査では猫の飼い主1,283名にアンケート調査を行っています。その中のうち約38%の飼い主が実際にロー・フードを与えていました。
それらの飼い主がロー・フードを飼い猫に与える理由として多かったベスト4は次のとおりです。
- 獣医師が監修しているネット記事や書籍などによる助言を受けて
- 「加工されたキャットフードを飼い猫に与えたくない」という考え
- 免疫機能を向上させるため
- かかりつけの獣医師に相談して
少し心配なのは、最も飼い猫のことを理解している専門家である、かかりつけの獣医師からの助言よりもネット記事や書籍、飼い主の思想などの理由によりロー・フードが与えられているというところでしょうか。
かかりつけの獣医師への信頼性
この調査において、ロー・フードを与える飼い主(猫と犬を含む)の多くが、獣医師のことをあまり信頼していないということもわかりました。これはあくまでも「栄養」という側面に限ったものです。つまり、ロー・フードを与える飼い主は「栄養」のことに関してはかかりつけ獣医師の知識を疑っているということです。
動物病院を訪れる頻度
ここまで結果を見ると、ロー・フードを与えている飼い主は動物病院にあまり行かないのでは?と思いますよね。でも、実はそうではないみたいなのです。
ロー・フードを与えている飼い主はそうでない飼い主に比べると、頻繁に動物病院に行くということがこの調査で明らかになったのです。さらに、面白いことに、ロー・フードを与えている飼い主の方が動物病院に行くたびに「栄養」の相談をしているということも明らかになりました。
なかなか複雑ですよね。もしかすると、ロー・フードを与えている飼い主は猫の健康を考え動物病院に頻繁に行き、栄養について議論するものの、さほど獣医師の意見を参考にしていないのかもしれません。
まとめ
ロー・フードを与えている飼い主の実態が少し明らかになりました。ロー・フードを与えるに至った理由はどうであれ、ロー・フードを与えている飼い主の多くは猫の健康のことを考えているということは明らかだと思います。しかし、残念ながら多くの飼い主がかかりつけの獣医師の「栄養」の知識を信頼していないということも明らかになりました。
個人的には獣医師から猫の飼い主に対して栄養についての質問を行い、議論を行うことで、獣医師が「栄養」のことにも精通しているということをアピールすることが重要だと思います。そうすることによって、獣医師への信頼が高まり、飼い主が自身の信条や思想、思い込みではなく、もう少し正当な理由でロー・フードを飼い猫に与えることができるようになるのではないかと思います。
飼い主側もロー・フードを与える時には一度かかりつけの獣医師に相談してみましょう。最も飼い猫の体の状態を知っている身近な専門家なのですから。
原著論文
Morgan et al. (2017), Survey of owner motivations and veterinary input of owners feeding diets containing raw animal products. PeerJ 5:e3031; DOI 10.7717/peerj.3031
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