畜産動物福祉に関する投資家宣言にイギリスのAviva Asset ManagementやフランスのBNP Paribas Investment Partnersを始めとする総額196兆円以上を運用する18機関の投資家が署名しました。
この宣言は、畜産動物福祉が食品業界の長期的維持に関して重要であるという観点から発表されました。宣言では、食品会社への投資判断の際に動物福祉への取り組みを考慮するとともに企業に対して畜産動物の取り扱いに高レベルの基準を課すよう働きかけていきます。
猫の福祉と関係ないので、このサイトで取り扱う必要のないことかもしれません。しかし、猫以外の動物に優しくない企業は当然ながら猫にも優しくないはずです。猫しか好きでないという方もその他の動物の福祉についてしっかりと考えてみて下さい。
この記事で分かること
- Business Benchmark on Farm Animal Welfare(BBFAW)とは何か
- マクドナルドやユニリーバは比較的動物に優しい
- ドミノピザとケンタッキーフライドチキン、バーガーキング、スターバックスは動物の福祉を考えていない
- Business Benchmark on Farm Animal Welfare(BBFAW)に基づいて、消費者や投資家に求められる選択
目次
「畜産動物福祉に関する企業のベンチマーク:Business Benchmark on Farm Animal Welfare(BBFAW)」
取り組み推進にあたって使用が推奨されているのがイギリスの動物愛護関連NGO3団体(Compassion in World FarmingとWorld Animal Protection、Coller Capital)によって運営されている「畜産動物福祉に関する企業のベンチマーク:Business Benchmark on Farm Animal Welfare(BBFAW)」です。
BBFAWは、世界の主要な食品関連企業の畜産動物の愛護への取組状況に関する評価を毎年8〜9月にかけて行い、翌年1月にその結果を発表しています。
評価の着目点
ベンチマークでの評価点は次の4項目です。
- 運営・管理上のコミットメントと方針(34%):畜産動物が閉鎖された飼育環境にあるかや長距離輸送をしているか等の全体的な飼育環境の評価
- ガバナンスとマネジメント(41%):関連部門やサプライチェーンの管理監督や目標提示など実践に関する取り組みの評価
- リーダーシップとイノベーション(15%):畜産動物に関する改革や顧客の信頼度(満足度)の推移を評価
- 業績の報告(10%):サプライチェーンにおける畜産動物の拘束や屠殺の状況、輸送等に関する業績が適切に報告されているかの評価
結果は上位から「リーダーシップ(先導的):評価得点が80%以上の企業」、「事業戦略での重要な部分を占めている:評価得点62~79%」、「取り組みが定着しているが不十分:44~61%」などと6段階にランク分けされます。
気になる2016年度のランキングは?
最高ランクの評価を受けたのはイギリスのマークス&スペンサー、ノーブルフーズ、ウエイトローズ、クランズウィック、スイスのコープ・グループとミグロ(Migro)の6社です。ちなみにマークス&スペンサーは、筆者もお世話になっていましたが、ちょっとお高めなスーパーで高品質のラインナップだった記憶があります。日本でいう成城石井といった感じでしょうか?
2番目のランクにはグレッグス、テスコ、BRFがランクを上げ、「マクドナルド」と「ユニリーバ」とともにランクインしました。
一方、誰もが知っているであろう巨大ファーストフードチェーンの「ドミノピザ」や「スターバックス」、「バーガーキング」、「ケンタッキーフライドチキン」などは低いランクに留まっています。
およそ26の企業が昨年の2015年度と比べてそのランキングを「1以上」あげており、食品産業に関わる企業が畜産動物の福祉を重要な問題として扱うようになり始めていることが伺えます。
改善の余地
このように良い傾向が見られる一方で、下位にランク付けされた企業にはまだまだ努力が必要です。
今回評価の対象となった99社のうち、バーガーキングやドミノピザ、スターバックスを含む42社は最下位の2ランク(ランク5または6)と評価されています。
「ドミノピザ」、クラフト・ハインツ、JDウェザースプーンは最下位ランク(ランク6)で、動物福祉に対する取り組みが見られず、目標すら掲げられていないと言う評価です。
「スターバックス」、 Restaurant Brands International(カナダのファーストフードチェーン)、 「ケンタッキーフライドチキン」は下から2番目のランク5で、動物福祉に対する目標は掲げられているものの、何か実際に取り組んだ形跡がないとの評価を受けています。
調査を開始した5年前からの良い変化
畜産動物福祉に関するポリシーの掲載を行っていた企業が2012年では46%であったのに対して、今回調査の対象となった企業では、73%の企業で掲載がありました。そして65%はそれらのポリシーに対して、具体的な目標を定めていました(2012年時点ではたった26%でした)。
BBFAWの役割
2016年のBBFAWでは、やはり下位にランク付けされた企業に多くに問題があります。畜産動物の福祉がないがしろにされていると言わざるを得ないでしょう。しかしながら、記述したように下位にランク付けされた企業は、みなさんご存知の有名企業が多いと思いませんか?
このように、動物の福祉を考えずに利益をあげているというのは何とも残念なことです。ここで、真価を発揮するのがBBFAWです。恥ずかしながら、筆者も今まで企業の動物福祉に対する取り組みなどはあまり注目して考えたことがありませんでした。
しかし、このようにBBFAWが畜産動物に手厚い福祉を施している企業を公表してくれたのなら、是非その企業を応援したいと思いませんか?逆に、畜産動物の福祉を考えていない企業には、ちょっと距離を置こうと思うかもしれません。このようにして、消費者や投資家の選択を良い企業へと向けることで、結果的に動物福祉が劣っている企業は顧客を失うことになるのです。こうした影響が出ることで、企業が少しでも動物福祉を尊重する企業を増やすことが、BBFAWの目的なのです。
まとめ
BBFAWの評価が契機となって、畜産動物の福祉に手厚い企業が増えるといいですね。来年の評価の結果が楽しみです。
この機会に、猫を含めて我々の生活を支えている動物の福祉を考えてみて下さい。
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参考文献
The Business Benchmark on Farm Animal Welfare 2016 Report
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