心エコー検査は、猫の心疾患の有無をスクリーニングするのに、費用対効果の高い方法であると言えます。そして、その心エコーを用いた猫の心疾患スクリーニングにおける判定基準の1つに心臓の大きさがあります。心臓の大きさは、心臓の状態を知る良い指標と言えますが、今回紹介する研究は、より手軽に測定することのできる体重と心臓の大きさの関連を探索しています。
なおこの記事はJournal of Veterinary Internal Medicineに2016年9月に掲載された論文を参照にしています。誰でも無料で読めますので興味のある方は原著論文を読むことをお勧めします。
この記事で分かること
- 体重から心臓の大きさを予測するには、アロメトリックスケーリングが有効である
- 心臓の構造は体重に比例して大きくなる傾向がある
- 特に体重との強い関連がみられるのは大動脈、左心室、左心房の大きさ、そして左心室自由壁(心室の中隔以外の壁)の厚さである
膨大なデータ数
この研究では、一般の家庭で飼育されている猫19,866匹を対象にしており、それらの猫の心拍数(HR)や、大動脈(Ao)、左心房(LA)および左心室(LV)の大きさと体重の関連性を調べています。
かなり多くの猫を対象とすることで、健常な成猫における95%予測区間(各項目の値に対して体重がどの範囲に来るかという予測)を計算することが可能となります。
データ解析方法
1999年から2014年の間に行われた心臓スクリーニング検査の臨床データが用いられました。そして BW、と心拍数(HR)、および心臓の大きさ等との間の関連性を、単変量線形モデルおよびアロメトリックスケーリング*を用いて評価しました。
なお、健常と判断された猫のデータのみが今回の研究には用いられました。そして、回帰曲線から得られた95%信頼区間を用いて予測区間を算出しました。
*アロメトリックスケール則:生物のサイズ(M)と基礎代謝量(B)の間には、アロメトリックスケール則(B=aMb; aは種などに固有の定数、bはベキ係数)が成立するという考え方。
体重と心臓の大きさの関連性
体重と心エコーによる心臓の大きさの関連は、アロメトリックスケーリングによって最も良く反映され、大動脈などを含めたすべての構造の大きさは、体重の増加に比例して大きくなるという結果になりました。
特に体重との強い関連がみられたのは大動脈(Ao)、左心室(LV)(特に拡張末期)、左心房(LA)の大きさ、そして左心室(LV)自由壁(心室の中隔以外の壁)の厚さでした。
体重と心拍数(HR)、左心房対大動脈の比(LA:Ao)についても弱いながらも関連がみられました。体重の増加に伴い、心拍数は減少する傾向が見られ、左心房対大動脈比(LA:Ao)は増加の傾向がみられました。
まとめ
体重は、心エコー検査から得られた心臓の大きさと臨床的に優位な関連性を示しました。したがって体重により算出できるアロメトリックスケーリングなどを用いた95%の予測区間は、猫の心疾患のスクリーニングに役立てることができると考えられます。
体重は日常的に計ることができますから、まず大雑把なスクリーニングで行うには良い手段になるかもしれませんね!
原著論文
Häggström J, Andersson ÅO, Falk T, Nilsfors L, OIsson U, Kresken JG, Höglund K, Rishniw M, Tidholm A, Ljungvall I. Effect of Body Weight on Echocardiographic Measurements in 19,866 Pure-Bred Cats with or without Heart Disease. J Vet Intern Med. 2016 Sep;30(5):1601-1611. doi: 10.1111/jvim.14569.
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