今回紹介するのは、生物分類で最も一般的に使われている分類体系です。意外とさらっと流していることが多いこの生物分類ですが、内容を知っておくと、今まで違った観点から動物を捉えることができ非常に面白いと思いますので、簡単に説明したいと思います。
生物分類
みなさん色んな動物を調べた時に、例えば「〇〇目△△科XX属」などの表記を見たことがあるのではないでしょうか?これは地球上に存在する生物を分類する体系フレームの1つです。生物の勉強をされた方ならご存知かと思いますが、この他にもアリストテレスの分類やリンネの分類などがあります。
生物は大きく次のように分けられます。
ドメイン(domain)
界(kingdom)
門 (phylum/division)
綱 (class)
目 (order)
科 (family)
属 (genus)
種 (species)
「ドメイン」が一番上位の分類で、真核生物*と原核生物*(真正細菌、古細菌)に分けられます。
*真核生物:細胞の中に核を有する生物(動物・植物など), 原核生物:明確な核を持たない生物(細菌など)
「ドメイン」で分類された後、さらに動物界や植物界、菌界、原生生物界などに分けられます。「界」で分類された後、さらに動物界では胚の特徴、細菌ドメインでは細胞膜や細胞分裂の特徴などにより細かな「門」わけられていきます。
以下同様に特徴ごとにさらに細かく分類していき、最も下位の分類が「種」になります。生物は長い年月をかけて進化してきたと考えられていますから、より上位の分類から違うグループに属している生物同士は、進化の過程の早い段階から分かれていたと考えられるわけです。つまり、より下位の分類で同じグループに属しているほど生物学的に近い種であると言えるのです。したがって同じ「科」に分類されるよりは、同じ「種」に分類されている方が近い生物と言えるわけです。
猫とライオン、犬とオオカミ
それでは、よく近い仲間との認識のある猫とライオン、犬とオオカミですが、どちらの組み合わせの方が生物学的に近い関係にあるのでしょうか?
それではまず猫とライオンの生物分類を見てみましょう。
ヒト | 猫(イエネコ) | ライオン | |
ドメイン |
真核生物 |
真核生物 | 真核生物 |
界 |
動物界 |
動物界 | 動物界 |
門 |
脊索動物門 |
脊索動物門 | 脊索動物門 |
綱 |
補乳綱 |
補乳綱 | 補乳綱 |
目 |
霊長目 |
食肉目 (ネコ型亜目) |
食肉目 (ネコ型亜目) |
科 |
ヒト科 |
ネコ科 | ネコ科 |
属 |
ヒト属 |
ネコ属 | ヒョウ属 |
種 |
ヒト H. sapiens |
ヨーロッパヤマネコ F. silvestris 亜種:イエネコF. s. catus |
ライオンP. leo |
参考までにヒトの生物分類も載せています。ヒトと猫とライオンいずれも「綱」までは同じグループ(補乳綱)にいます。ヒトはそこから「霊長目」に分類されますが、猫とライオンは「食肉目」に分類されます。
そして、猫とライオンは「科」までは同じグループ(ネコ科)に分類されますが、それ以降の下位分類ではグループが異なります。
続いて犬とオオカミの生物分類を見てみましょう。
ヒト | 犬(イエイヌ) | オオカミ | |
ドメイン |
真核生物 | 真核生物 | 真核生物 |
界 |
動物界 | 動物界 | 動物界 |
門 |
脊索動物門 | 脊索動物門 | 脊索動物門 |
綱 |
補乳綱 | 補乳綱 | 補乳綱 |
目 |
霊長目 |
食肉目 (イヌ亜目) |
食肉目 (イヌ亜目) |
科 |
ヒト科 | イヌ科 | イヌ科 |
属 |
ヒト属 | イヌ属 | イヌ属 |
種 |
ヒトH. sapiens |
タイリクオオカミ C. lupus 亜種:イエイヌ C. l. familiaris |
タイリクオオカミ C. lupus |
犬とオオカミは「種」までグループが一緒で、サブグループのみ異なります。思っていたより、生物学的に近いと感じた方も多いのではないでしょうか?
したがって、「猫とライオン」、「犬とオオカミ」の組み合わせであれば生物学的に近縁であるのは「犬とオオカミ」の方と言えます。見た目からしてまぁそうだろうという感じでしょうか??笑
クマは猫より?犬より?
それではみなさん、「クマ」は生物学的には猫と犬のどちらに近いと思いますか?なんだか猫っぽいと言えばそんな感じもするし、犬の要素もあるような・・・?
それでは生物分類を見てみましょう。
猫(イエネコ) | クマ | 犬(イエイヌ) | |
ドメイン |
真核生物 | 真核生物 | 真核生物 |
界 |
動物界 | 動物界 | 動物界 |
門 |
脊索動物門 | 脊索動物門 | 脊索動物門 |
綱 |
補乳綱 | 補乳綱 | 補乳綱 |
目 |
食肉目 (ネコ型亜目) |
食肉目 (イヌ(型)亜目) |
食肉目 (イヌ亜目) |
科 |
ネコ科 |
クマ科 | イヌ科 |
属 |
ネコ属 | クマ属 | イヌ属 |
種 |
ヨーロッパヤマネコ F. silvestris 亜種:イエネコF. s. catus |
タイリクオオカミ C. lupus 亜種:イエイヌ C. l. familiaris |
クマも猫も犬も「科」から分類が異なってきます。しかし、「目」の階級のサブグループではクマは犬よりと言えます。したがって、クマは生物学的にはどちらかというと犬と近いと言えます。
近い種に属するものの顔認識
科学的な証明がなされている訳ではありませんが、近い種ほど顔認識ができると言われています。どういうことかと言いますと、一つ一つの個体の認識ができるということです。ですから、同じ種同士であればもちろん、自分以外の個体の認識が容易であるという訳です。
人間同士であれば、顔を見ればそれぞれの違いを苦もなく認識することができますが、例えばゾウやキリンの群をみてそれぞれの個体の違いを容易に識別することができるでしょうか?難しいですよね。近い種は一緒に生活することが多いため、個体認識に優れてくると言われています。あくまで仮説でありますが・・・。
少し本題とはずれますがが、人種でも同じようなことが言えます。私たちアジア系の人種からするとヨーロッパ系の人の顔認識は同じアジア圏の人の顔よりも認識しにくいと感じたことはありませんか?(一瞬みんな同じに見えるなど。)逆も然りでしょう。人も生物学的(遺伝子的)に近い方が顔認識は優れてくるようです。
余談ですが筆者は霊長類のフィールドワーク研究に強い大学に在学しておりました。在学中にボノボやチンパンジーのフィールドワークに出かけていた教授の講義を受けていたのですが、先生が「僕はチンパンジーやボノボの顔がすぐ分かるんだ。他の欧米の研究者にはさっぱりらしいんだが、僕にはすぐ分かる。本当に顔が違うから」と語っていました。そして、先生が冗談っぽく「僕はきっとチンパンジーにとっても近いんだと思う」と言っていたことを思い出しました。笑 これはあくまで冗談ですけどね。笑
まとめ
みなさんも気になった動物がいたら、生物分類をちょっとじっくり見てみてください!いつもとは違う発見ができるかもしれませんよ。
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