小児喘息研究のトップを走るデンマークの研究チームは猫への曝露が、特定の遺伝子型をもつ子供の喘息発症リスクを減少するということを発表しました。
喘息と遺伝子型
平成26年度に厚生労働省が実施した患者調査によると、我が国には0~14歳までの喘息患者数は約43万人いるとされています。またその患者数は成人よりも小児で多いことがわかっています(ERCA)。
小児喘息の発症には遺伝的要因と環境的要因が相互作用することで起こると考えられています。遺伝子については、染色体17q21領域のrs7216389部分における一塩基多型が小児喘息と強く関連していることが知られています1)。特にこの一塩基多型がTT型の場合には小児喘息が発症する確率が約1.5倍に跳ね上がることが知られています2)。その他にもCC型やCT型が存在しており、CC型では喘息のリスクが約0.7倍に減少し、CT型は通常と同じ程度の喘息リスクになります。
猫とrs7216389
最新研究ではデンマーク在住の377人の子供の遺伝型を特定するとともに、12歳までの喘息発症の有無や彼らの家庭環境に関する調査を行いました。また、彼らが1歳になるまでの間に猫や犬を飼養していたか、どの程度アレルゲンに暴露されていたかを調べていき、犬・猫への暴露と遺伝型、喘息の発症リスクについて調べていきました。
その結果、小児喘息が発症しやすいTT型(rs7216389部分)の遺伝型をもつ小児においては、多くの猫アレルゲンに暴露された方が、喘息の発症リスクが低下することがわかりました。この効果は犬アレルゲンに暴露された小児やCT型やCC型などのその他の遺伝型をもつ小児には観察されませんでした。この結果は、1歳までの早い段階で猫アレルゲンに暴露されている子供は喘息にかかりにくくなることを示しています。
まとめ
猫を飼うことで、本来ならば小児喘息にかかりやすい子供の小児喘息のリスクが低減するということがわかりました。猫と一緒に過ごすことがどのようにして、遺伝子に影響を及ぼすのかについては不明ですが、環境要因が遺伝的要因と相互作用をしているという良い例なのかもしれません。それにしても、ある一定の遺伝子型をもつ子供にしか効果がないというところが面白いです。
原著論文:Stokholm J, Chawes BL, Vissing N, Bønnelykke K, Bisgaard H. Cat exposure in early life decreases asthma risk from the 17q21 high-risk variant. J Allergy Clin Immunol(2017). pii: S0091-6749(17)31439-2.
参考文献
1) Bisgaard H, Bønnelykke K, Sleiman PM, Brasholt M, Chawes B, Kreiner-Møller E, Stage M, Kim C, Tavendale R, Baty F, Pipper CB, Palmer CN, Hakonarsson H. Chromosome 17q21 gene variants are associated with asthma and exacerbations but not atopy in early childhood. Am J Respir Crit Care Med(2009). 179(3):179-85. doi: 10.1164/rccm.200809-1436OC.
2) SNPedia. 2017.11.10 accessed
コメントを残す