毎年8月17日は黒猫を理解する日であり、譲渡がされにくい黒猫の正しい知識を理解する日になります。今年の黒猫を理解する日の記事では、誰しもが一度は聞いたことのある「黒猫が目の前を横切ると不吉」という迷信について考えていきます。
黒猫と魔女
「黒猫が横切ると不吉である」という迷信は中世のイングランドの民話が元になっていると言われています。中世といえば、猫にとっては受難の時代であり、魔女と関連付けられ多くの猫が命を落とした時代です。
魔女狩り裁判解禁令がヨハネ22世(ローマ教皇)により発布されたのが1318年のことであり1)、そして1484年にはインノケンティウス8世(ローマ教皇)が猫のことを「悪魔が好む動物であり、魔女の象徴である」とし、その後数百年の間、猫は迫害されることになりました(Medievalist)。そして、特に黒猫は魔女との関連性が強いとして強く迫害を受けました。
なぜ黒猫が横切ると不吉なの?
そんな時代背景がある中、1560年代の民話が「黒猫が目の前を横切ると不吉」という迷信の元になっているとされています(American Folklore, Today I Found Out)。その話はイングランドのリンカンシャーにおける父親とその子供に関するこんな民話です。
ある月のない晩に父親とその子供が夜道を歩いていると、ある一匹の黒猫が横切りました。それを見た子供は魔女の手先だとして黒猫に石を投げつけたところ、その石は黒猫に当たりました。驚いた黒猫は長い間魔女だと信じられている女が住む家に逃げ込みました。翌日、その父親と子供がその家の女に偶然遭遇したところ、その女はアザを作り、足を引きずっていました。
この民話により夜になると魔女は黒猫に化けて、街をうろつき、魔女(黒猫)の前を横切ったものにいたずらを行おうとしていると信じられるようになりました。そして、この考えが「黒猫が前を横切ると不吉」という迷信になったとされています(American Folklore)。
本当に黒猫は不吉?
前述したように、「黒猫が目の前を横切ると不吉」という迷信はイギリス・イングランド・リンカンシャーから発信され、その他の国に広がっていきました。しかし、当然ながら黒猫に関して異なる迷信を持つ国はたくさんあります(iCatCare, American Folklore, Today I Found Out)。
- イングランド・ミッドランドでは結婚祝いとして黒猫がプレゼントされると新婦に幸運が訪れると信じられている
- スコットランドでは黒猫が玄関に訪れるとその家が繁栄すると信じられている
- 南フランスでは黒猫のことを”matagots”もしくは”magician cats”と呼び、黒猫に餌を与え、大事に世話をするとその飼い主に幸運が訪れると信じられている
- ドイツでは黒猫が右から左に動くと悪いことが起こり、左から右に動くと良いことが起こると信じられている
- イタリアではもし黒猫がくしゃみをする音を聞くと幸運が訪れると信じられている
- 19世紀の海賊は黒猫が近づいてくると悪いことが起こるが、遠ざかると良いことが起こると信じていた
まとめ
「黒猫が目の前を横切ると不吉」という迷信はイングランドのリンカンシャーの民話が元になっているようです。しかし、同じイングランドでもミッドランドでは黒猫が幸運をもたらすと考えられており、ほんの少し地域が異なるだけで、迷信の質に違いが認められます。Wikipediaによると日本において黒猫は幸運をもたらすと考えられているようです。しかし、なぜ「黒猫が横切ると不吉」という考え方が日本でも有名なのかは不思議です。
その人が何を信じ、どのように考えるかによってものの見方は簡単に変わってしまいます。猫情報サイトMAL一同としては、根拠のない迷信や言い伝えにより黒猫のことをネガティブに感じる人が減り、その他の猫と同様に黒猫のことを思いやる方が増えることを願っています。まずは、黒猫に関する根拠のある秘密について知るようにしてください。
参考文献
1) 大石孝雄:ネコの動物学, 東京大学出版社(2013), p.102
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