愛猫に新しいキャットフードを与える際には、愛猫が気に入っているのかどうか気になることがあると思います。ペットフードを開発する時などには当然ながら、ペットフードの食べやすさや好みを見極めるテストを行います。もし、そのテストが自宅でも行えるのであれば、愛猫の好き嫌いを見極めることができるようになるかもしれません。
テスト方法に関しては様々なものが開発されていますが、今回の記事では、従来より用いられている「2つのお皿を猫に提示する方法」を解説していきたいと思います。
目次
2つのお皿を提示する方法
2つのお皿を用いる方法では、比較したいキャットフードがそれぞれ入っているお皿を2つ用意し、同時に猫に提示します。この方法はTwo-Bowl Test、Versus Test、Paired Stimulus Test, Two-Pan Testなど様々な名前で呼ばれています。
手順
それでは早速、手順について説明していきます。
- 同じお皿を2つ用意します
- 猫に提示する2つのお皿の中には、猫が必要とするエネルギー分のキャットフードを入れ、計量します
- 猫に2つのお皿を同時に提示し、キャットフードを食べさせます
- 一定の時間*が経過するか、どちらか1つのお皿が空になると、2つのお皿を引っ込めます
- 残っているキャットフードの量を測り、猫が各キャットフードをどれぐらい食べたかを計量します
- お皿を置く位置を変えて、再度同じことを繰り返します
*制限時間:自由に決めることができます(例えば、10分など)が、常に一定の時間にするようにしてください。テストごとに時間が変動することは好ましくありません。
では上記のテストを行った際に着目すべき点について説明していきます。
猫が最初に選ぶのは?
まずは、猫がどちらのキャットフードを先に選ぶのかということです。猫が先に近づいた方のキャットフードは猫の嗅覚などに訴え、猫を惹きつける可能性があります。しかし、だからといって、猫がそのキャットフードのことを好きというわけではありません。
また、最初に口にしたキャットフードの回数を数えることも重要ですが、その場合には複数の猫で試す必要があり、一般家庭ではあまり意味がありません。例えば、20匹の猫にキャットフードAとBを提示して、そのうち15匹がキャットフードAを選んだ場合には、猫が最初にキャットフードAを選ぶ比率が0.75となり、猫を惹きつける要素が高いということがわかります。

猫が摂取したキャットフードの比率は? Consumption Ratio
猫がどちらのキャットフードを多く食べたのかを比率で評価していきます。英語ではConsumption Ratio:CRなどの名前で呼ばれます。
例えば、AとBのキャットフードを与えた時に、Aの方を20g、Bの方を10g食べた時には、20/10(=”2A”)となり、つまりAのキャットフードはBのキャットフードよりも2倍も摂取されたということを示しています。一方、Bのキャットフードの方を見ると、10/20(=”0.5B”)となり、Aのキャットフードよりも0.5倍摂取される量が少なかったということになります。
当然ですが、この数値が高い方が猫が好んで食べるキャットフードになります。上の例であれば、キャットフードAの方が猫が好んでいることになります。
全体のうち猫が摂取した量の比率は? Intake Ratio
あるキャットフードに対して猫がどの程度食べたのかを評価していきます。全体のキャットフードのうち、あるキャットフードがどの程度食べられたのかを比率で表していきます。英語ではIntake Ratio:IRなどの名前で呼ばれます。
例えば、Aのキャットフードを20g、Bのキャットフードを10g食べた場合に、Aのキャットフードをどの程度食べたかを見るには、20/(20+10) という計算を行います。この場合、キャットフードAが摂取された割合は全体の約0.67(約67%)であったということができます。一方、Bのキャットフードに関しては、約0.33(約33%)しか摂取されなかったことになります。
数値が高い方が猫が好んで食べるということを示しており、上の例ではキャットフードAが猫に好まれているということを示しています。
ちなみに、猫のキャットフードの好みや食べやすさを調べる時には、CRもしくはIRのどちらを用いても問題ありません。

気をつけたいこと
この2つのお皿を提示する方法では、いかに環境を設定するかということが重要になってきます。猫は季節やその日の天気、感情などの影響を受けるため、その時々によって摂取量が変化します。そのため、環境をコントロールし、同じことを複数回行い、その再現性を検証していくことも重要となります。
最低限、テストは必ず1匹だけの猫で行い、静かな場所や家族が誰もいない場所で行うようにしましょう。他の猫がいたり、外的な刺激が多い場合には、その時々に生じた感情が猫の摂取量に変化を及ぼしてしまいます。
また、テストは複数回、数日にわたって行い、その時の季節や天気や時間などはしっかりとメモっておきましょう。そして、それらのデータをもとにどちらのキャットフードが好みなのかを確かめましょう。
まとめ
2つのお皿に入ったキャットフードを提示することで、猫のキャットフードの好き嫌いを見極める方法について解説してきました。自宅においては、複数回行うことが難しいかもしれませんが、最低限2~3回は行うようにしましょう。また、このテストはキャットフードの食べやすさについて調べているため、猫の好みとは異なる要素も含まれているということを忘れないでおきましょう。正確に猫の好き嫌いを見分けるには猫の行動の観察も合わせて行うと良いと思います。
次回は、1つのお皿を提示する方法について解説してきます。
あわせて読みたい
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参考文献
Principles of Pet Food PalatabilityーAFB international
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Tobie C, Péron F, Larose C. Assessing Food Preferences in Dogs and Cats: A Review of the Current Methods. Animals (Basel).(2015). 5(1): 126–137. doi: 10.3390/ani5010126.
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