猫がツツジ科の植物を食べた際には中毒が起きます。そのためツツジ科の植物を猫の手に届く範囲に置くことは避ける方が賢明です。今回はツツジ科の植物の危険性とその症状について紹介していきます。
ツツジ科の植物の毒性
ツツジ科の植物(以下:ツツジとします)は品種改良などにより様々な種類のものがあり、室内で育てることも可能です。しかし、ツツジにはグラヤノトキシンGrayanotoxinと呼ばれる有毒成分が含まれています1), 2)。この有毒成分はツツジのどの部分にも存在しており、花びらや葉っぱ、蜜などにも含まれています3)。
グラヤノトキシンは細胞膜に作用することで、細胞の興奮を持続的なものにしてしまい、神経系や腸管系、循環器系の障害を引き起こします。少し専門的になりますが、グラヤノトキシンは細胞にあるNaイオンチャネルに結合し、チャネルの開口状態を維持するように機能します1), 2)。そのため、細胞の中にNaイオンの流入が絶えず流入するため、細胞は脱分極状態を維持することになり、興奮しやすくなります。
中毒症状
猫が体重の0.2%程度のツツジを食すことで、十分に中毒が引き起こされるとされており4)、ツツジ科の植物を猫が食べると次のような症状が観察されます3), 4)。そして、最悪の場合は死に至ります。
- 下痢や嘔吐
- 流涎(よだれを流す)
- 食欲不振
- 腹痛
- 脱力
- 抑うつ
- 不整脈
- 低血圧
- ショック
- 心肺停止
- 肺水腫(肺胞内に血液の液体成分が滲みだした状態)
- 発作

対処方法と治療
愛猫がツツジを食べた疑いがあり、上述した症状が観察された場合には猫をすぐさま動物病院に連れて行き、適切な処置をしてもらいましょう。残念ながら、現在のところ解毒薬は存在しておらず、治療としては、有毒成分の除去と循環器系に対する対応が行なわれます。なお、獣医師や猫の症状、食べてからの時間などにより治療の方法は異なります。ここでは獣医学書に記載されている一般的な内容を紹介していきます3)。
有毒成分の除去には様々な薬物が使用されます。中でも活性炭(薬用)は有名であり、活性炭は有毒成分に弱く結合し、有毒成分の体内への吸収を阻害するように働きます。
また、心電図などにより猫の心機能を常にモニターしていきます。場合によっては、輸液療法やNaチャネル阻害薬の投与を行うこともあります。
まとめ
猫がツツジ科の植物を食べると、グラヤノトキシンにより中毒症状が誘発されます。そのため、猫がいる家庭ではツツジを育てるのを断念するか、猫が絶対にアクセスできない場所で、育てる必要があります。そして、もし愛猫がツツジを食べた疑いがあり、中毒症状が観察される場合にはすぐに動物病院に連れて行き、適切な処置をしてもらいましょう。
私が小さい頃はよくツツジの蜜を吸っていましたが、その中にもグラヤノトキシンが含まれており、人間にも有毒です。少量であったために問題ありませんでしたが、気をつけなければなりませんね。
ツツジの他にユリも猫にとっては危険です。詳しくは「ユリ(百合)は猫にとって危険!」の記事を参照ください。
参考文献
1) Rahnama-Moghadam S, Hillis LD, Lange RA. Heart and Toxins; Environmental Toxins and the Heart. Academic Press. pp75-132, 2015.
2) Suppiramaniam V, Abdel-Rahman EA, Buabeid MA, Parameshwaran K. Comprehensive Toxicology; Ion Channels, 2nd Ed. Elsevier. pp129-171, 2010.
3) Little SE. The Cat:Clinical Medicine and Management. Saunders, Missouri, 922-923. 2012.
4) PetPoisonHELPLINE® 2017/10/18 accessed.
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