保護猫施設には様々な背景の猫が保護されており、その中には飼い主に捨てられた猫もいます。では、なぜ飼い主は猫を捨てるのでしょうか?海外では飼い主が飼えなくなった猫などをシェルターに預けるというのは日本より浸透しており、シェルターに預けに来た人たちにインタビューを行うことができるため、その理由について知ることができます。
この記事では猫の飼い主がシェルターに猫を預ける理由について紹介していきます。ただし、あくまでも海外の状況であるため、日本の状況を表しているわけではないことには注意が必要です。
飼い主の事情
飼い猫がシェルターに預けられる理由として最も多いのは、飼い主の事情によるものです1),2)。その事情の多くは次のようなものです。
アレルギー
猫においては犬よりもアレルギーという理由でシェルターに預けられることが多く、シェルターに飼い猫を預けに来る飼い主のうち約半数は猫を飼い始めてから1年以内であるということが分かっています1)。中には猫を飼ってから5年以上の飼い主でも、家族のアレルギーが原因で猫を預けるということがあります。
猫が不可の物件
2016年にオーストラリアで行われた研究では、猫が飼養できない物件に引っ越すためという理由が最も多くなっています2)。オーストラリアでは地方から都市への移住が進んでいるものの、都市部におけるマンションの多くが猫が飼養できないという条件になっているためだと考えられています。
猫が多すぎる
飼い猫が子猫を産んでしまい、その猫たちを育てるスペースや金銭的な余裕がないという理由でシェルターに預ける飼い主たちもいます2)。無論、そういった飼い主たちは飼い猫に避妊・去勢手術を行っていません。
新しい命
飼い主に子供ができたという理由で、飼い猫をシェルターに預ける飼い主も少なからずいます。この理由で預けるのは犬よりも猫の飼い主で多いようです1)。その具体的な原因については明らかではありませんが、猫に対するアレルギー、猫の攻撃性などを危惧してのことなのかもしれません。
時間がない
猫にかまう時間がないという理由で猫が預けられることがあります1)。この理由で猫を預ける飼い主のうち約58%は猫を飼養してから1年以内であることがわかっています。さらに、約24%の飼い主には他の猫がまだ家にいるということも示されています。このことは、一部の飼い主は多頭飼いをしてしまうことで、猫にかかる時間が多くなり、シェルターに一部の飼い猫を預けてしまうということを示唆しているのかもしれません。
その他
その他の飼い主に関わる事情としては次のようなものがありますが、少数意見です。
- 世話をしていた人が他界した
- プレゼントとしてもらったがいらない
- 飼い主の妊娠
- 子供と動物の仲が悪い
- 譲渡先を見つけることができなかった
- 衝動的に購入してしまった
- 猫が大きすぎる
- 離婚
問題行動
問題行動が原因で飼い猫をシェルターに預ける飼い主も多くいますが、その割合に関しては研究により異なります。例えば、アメリカで行われた研究では、問題行動が原因で預けられた猫は33%であったという報告1)もあれば、28%や14%という報告もあります3), 4)。そして、愛猫に一つでも問題行動が見られると、保護猫施設に預けてしまうという飼い主が18%もいるということも示されています3)。
では、どのような問題行動により、シェルターに預けられるのかについて見ていきます。
不適切な排泄
問題行動の中で、最も多い理由が不適切な排泄であり、どの研究においても共通しています。これは、猫がトイレ以外のところで排泄をしてしまうという問題行動であり、多くの飼い主が頭を抱える問題行動になります。
攻撃性
猫が人間に対して高い攻撃性を示す場合にはシェルターに預けられることが多くなります。他の猫やペットに対して攻撃性を示す場合や、その他のペットと関係性がうまくいかない場合にも預けられてしまいます。さらに、人間や他のペットに友好的でない猫も預けられることが多くなります。
破壊行動
猫が家を傷つけるという理由でシェルターに預ける飼い主も多くいます。これは猫が爪とぎなどを家具や壁などに行うことで、家が傷つくためです。
その他
シェルターに預ける理由となり得るその他の問題行動には次のようなものがあります。
- 獲物を捕まえてくる
- 多動すぎる
- 家から脱走する癖がある
- 不安傾向が高い
- 従順でない
まとめ
過去の研究より飼い猫を保護猫施設に預ける理由をみてきましたが、多くの理由は日本でも共通していることが考えられます。そして、おそらく飼い猫を捨てる理由と似ている部分があると思われます。
猫が保護猫施設に預けられる理由を把握することは、猫を飼養する前にどのようなことに注意をしなければならないのかを知る上で重要です。特に飼い主の事情による理由については、あらかじめ対策をとれる部分が多いため、猫を飼う前には必ず知ってもらいたい部分です。
問題行動については、猫にとって適切な環境を整え、適切な管理を行えば防ぐことができます。問題行動は起こってから対処するよりも、予防する方がよっぽど楽というのは猫行動専門家たちの中では常識となっているため、猫にとって快適な環境づくりや適切な接し方を心がけるようにしましょう。
参考文献
1) Scarlett JM, Salman MD, New JG Jr, Kass PH. Reasons for relinquishment of companion animals in U.S. animal shelters: selected health and personal issues. J Appl Anim Welf Sci. 1999;2(1):41-57. DOI: 10.1207/s15327604jaws0201_4
2) Zito S, Morton J, Vankan D, Paterson M, Bennett PC, Rand J, Phillips CJ. Reasons People Surrender Unowned and Owned Cats to Australian Animal Shelters and Barriers to Assuming Ownership of Unowned Cats. J Appl Anim Welf Sci(2016). 19(3):303-19. doi: 10.1080/10888705.2016.1141682.
3) Salman MD, Hutchison J, Ruch-Gallie R, Kogan L, New JC, Kass PH, Scarlett JM. Behavioral Reasons for Relinquishment of Dogs and Cats to 12 Shelters. J Appl Anim Welf Sci(2000), 3(2), 93-106. DOI: 10.1207/S15327604JAWS0302_2
4) Miller DD, Staats SR, Partlo C, Rada K. Factors associated with the decision to surrender a pet to an animal shelter. J Am Vet Med Assoc (1996), 15;209(4):738-42.
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