前回は2つのお皿を用いて猫のキャットフードに対する好き嫌いを調べる方法について紹介しましたが、一般の家庭では環境をコントロールしにくいため、なかなかうまくいかないことがあります。そんな時に試して欲しいのが、1つのお皿を提示する方法です。
今回の記事ではお皿1つで愛猫のキャットフードの好き嫌いを判定する方法について紹介していきます。
1つのお皿を提示する方法
猫にお皿を1つだけを提示し、キャットフードの好き嫌いを確かめる方法は、One-Bowl Test、One-Pan Test、Single Stimulus Test、Monadic Testなどの名前で呼ばれています。この方法は2つのお皿を提示する方法よりも、好き嫌いや食べやすさを判別する精度に関しては少し低くなるものの、自宅で行うにはもってこいの方法になります。
手順
具体的な方法については次のとおりです。
- あらかじめ時間制限を決めておく
- お皿に十分な量のキャットフードを入れ、計量する
- 猫にキャットフードが入ったお皿を提示する
- 猫がキャットフードを食べ終わるか、時間制限に達すると終了する
- 再度、お皿を計量し、どれだけの量が食べられたのかを評価する
- 異なるキャットフードでも同じことを行う(同じ形状のお皿で行うこと)
- 時間を空け、キャットフードを与える順番を変えて同じことを行う
- キャットフード同士でデータを比較する
正確なキャットフードの好き嫌いを確かめるためには、上記の手順を日にちを変えて行い、それぞれのキャットフードにおいて複数回のデータを集めることが大切です。
では、上記のテストで着目すべき点について解説していきます。
どれぐらいの量食べた?
猫がどれぐらいの量のキャットフードを食べたのかについて評価していきます。例えば、Aのキャットフードを10g用意して猫に提示した時に、猫が7g食べた場合には、猫はAのキャットフードを7/10(=”0.7″)摂取したことになります。つまり、70%摂取したことになります。そして、同じテストをBのキャットフードにおいても行い、その摂取率についても求め、2つのキャットフードを比較します。
もちろん、猫が好きな方のキャットフードの摂取率が高くなります。例えば、キャットフードAの摂取率が70%に対して、キャットフードBの摂取率が50%だった時には、キャットフードAの方が好みであるということができます。

完食率は?
猫が制限時間内に度々キャットフード完食する場合には完食回数を数えるのもありです。ただし、その場合には数日にわたって複数のデータを集める必要があります。ちなみに、ここでいう完食とはほとんどすべてのキャットフードを食べたということです。残りのキャットフードの量が1g以下であれば、完食とみなすこともあるようです1)。
例えば、数日にわたってキャットフードAを10回提示し、そのうち完食した回数が5回であれば完食率は5/10(=”0.5″)、つまり50%になります。同じことを、キャットフードBにも行い完食率を求めます。もしキャットフードBの完食率が30%だった場合には、キャットフードAの方が好きな可能性があります。
完食率とは反対に、拒否率を求めることもできます。これは猫が全くもってキャットフードに手をつけなかった回数を数えることで求めます。もちろん、拒否率が高いほどそのキャットフードは好まれないということになります。
なお、これらの完食率や拒否率については、キャットフードを開発する際に現場で使用されるものとは少し異なります。

食べる早さは?
食べる早さについて、猫が1分間に食べた量の餌を評価することもできます。食べるのが早い方がそのキャットフードの好きである可能性があります。
気をつけたいこと
前回の記事でも述べたように、その日の気温や湿度、空腹度、猫の精神的な状態などがキャットフードの摂取量に影響を与えます。また、季節や外的な刺激に対しても影響を受けてしまいます。そのため、愛猫の好き嫌いを厳密に確かめるためには、できるだけ環境をコントロールしつつ、複数のデータを集める必要があります。
新たなキャットフードの好き嫌いを確かめる際に、テストの制限時間を長くしてしまうと、必要以上に新しいキャットフードを摂取してしまい、猫の胃腸にストレスが加わり、軟便になることがあります。そのため、初めてのキャットフードを提示する際には制限時間を短く調節した方が良いと思います。また、1日に何度もテストを行うことはお勧めできません。数日にわたって地道にテストを行っていきましょう。
まとめ
猫に1つのお皿を提示することで、キャットフードの好き嫌いを確かめる方法について解説してきました。この方法の欠点は、猫の好き嫌いを反映しているものなのか、それともそのキャットフードの食べやすさを反映しているものなのかが分からないところにあると思います。例えば、ドライキャットフードとウェットキャットフードでの違いを比較した場合に出てくる、摂取量の違いや食べる早さの違いは食べやすさに反映されていることが多いと思います。ドライキャットフードとウェットキャットフードでは大きさや食感などが違いすぎますからね。
その欠点を補足するために、猫が食べている時の行動について観察することも重要だと私は思います。この点についてはこの記事を参照してください。
あわせて読みたい
自宅で試せる猫の好き嫌いを見分ける方法(1)〜2つのお皿を提示する方法〜
参考文献
1) Becques, A, Roguès, J, Nicéron, C. The liking test, bringing new dimensions to dog and food palatability measurment. 2014.
2) Smith, JC, Rashotte ME, Austin T, GriffinRW. Fine-grained measures of dogs’ eating behavior in single-pan and two-pan tests. Neurosci. Biobehavioral. Rev(1984), 8, 243–251.
3) Serisier S, Feugier A, Delmotte S, Biourge V, German AJ. Seasonal Variation in the Voluntary Food Intake of Domesticated Cats (Felis Catus). PLOS ONE(2014). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0096071.
4) Tobie C, Péron F, Larose C. Assessing Food Preferences in Dogs and Cats: A Review of the Current Methods. Animals (Basel).(2015). 5(1): 126–137. doi: 10.3390/ani5010126.
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