イギリスのメディアが「オープンプランの家が猫にとっては優しくない」という記事を掲載し話題になっています(DailyMail, The Times)。この記事のソースは、先日イギリス・ロンドンで開催されたThe Animal Welfare FoundationによるDiscussion Forum 2017において、International Cat Careの行動部門に属するSarah Ellis博士が行ったプレゼンの内容に基づいています。
オープンプランとは?
オープンプランとは間仕切りを設けずに、ひとつの空間として設計することを言います(Millcreek)。オープンプランはオフィスなどでよく採用されますが、最近では一般宅のリビングなどでよく認めらます。つまり、リビング、キッチン、ダイニングなどの人が集まる空間をひとつの空間として設計するということです。
簡単にいうと、最近流行りのかなり広めのリビングということになります。イメージがわかない人は以下の画像を参考にしてみてください。
なぜオープンプランの家は猫に優しくないのか
多くのメディアの記事の内容をまとめると、オープンプランの家では猫が隠れる場所が少なくなり、その家に他のペットの動物や別の猫がいる場合には、絶えずストレスを感じることになるため、猫には優しくないということが書かれています。
確かに、多頭飼いの環境や犬などの他のペットがいる場合には、猫にストレスがたまるため、それらの動物を回避することのできるような間仕切りの部屋は必要です。このことは、猫を1匹だけ飼っている環境でも同じようなことが言えると思います。なぜなら、見知らぬ人が家に訪問してきたときでさえ、猫は隠れようとすることが多いからです。
本当にオープンプランの家は猫に優しくないの?
しかし、メディアの記事には少し間違いがあります。それは、猫の社会化を全くもって考慮していないということです。Sarah Ellis博士はプレゼンの中で猫がペットの猫として飼育されるための、社会化の重要性についても説明していたのですが、メディアはそのことについては触れていません。
つまり、子猫の時(生後約2-7週)の感受期 Sensetive Period において適切な社会化を行っている子猫であれば、他の猫や犬ひも比較的ストレスを感じにくくなるため、オープンプランの家においても比較的問題なく過ごすことが可能になります。さらに、オープンプランの家においても、猫が隠れる場所とその他のリソースを十分に用意できれば、猫のストレスを少しは軽減することも可能です。
したがって、メディアが伝えるべきことは「猫のための環境を整えていないオープンプランの家は、適切な社会化をされていない猫には優しくない」ということでしょう。
まとめ
オープンプランの家で猫を飼う際には、適切な社会化を行われている猫を選択し、環境を整えてあげる必要があります。実はこの2つのことについてはオープンプランの家だけでなく、一般的な家でも同じことが言えます。感受期において適切な社会化や馴化が行えていない猫にとっては、家での生活がかなりストレスになると考えておく方が良いでしょう。事実、International Cat Careなどの猫の福祉団体では、社会化や馴化が行えていない猫の里親譲渡は猫の福祉の低下につながるとし、TNVR(Trap-Neuter-Vaccinate-Return)などを行い、地域で管理していくことを推奨しています(Sparks et al., 2013.)。
感受期における子猫の適切な社会化や馴化は、ブリーダーや保護猫施設の方針などにかかってきます。猫がペットの猫として生活する際には、猫のストレスのことを考えると適切な社会化を経る必要があります。そのため、猫を家族に迎え入れる際には、その猫の社会化や馴化の情報についてできる限り収集するようにしましょう。そうすることで、ストレスに起因する猫の病気や問題行動の予防が行え、猫が終生飼養される確率も高くなると思います。
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参照サイト
Open-plan homes incompatible with cats, say experts
参考文献
Andrew H Sparkes, Claire Bessant, Kevin Cope, Sarah L H Ellis, Lauren Finka, Vicky Halls, Karen Hiestand, Kim Horsford, Christopher Laurence, Ian MacFarlaine, Peter F Neville, Jenny Stavisky, James Yeates. .ISFM Guidelines on Population Management and Welfare of Unowned Domestic Cats (Felis catus) .Journal of Feline Medicine and Surgery(2013).15(9), pp. 811 – 817. 10.1177/1098612X13500431.
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