福岡県にある相島。日本人だけでなく海外の方にも有名であり、多くの観光客が訪れる猫島です。
2016年秋、YouTubeなどで人気を博しているKitten Lady キトン・レディことHannah Shaw(以下;ハンナ)さんがそんな相島に訪れ、猫の福祉の観点から相島を分析し、先日動画や記事を投稿されていました。ここでは欧米と日本の考え方の違いなどが示されており、面白いと思ったので少しその記事の内容を紹介し、議論をしていきたいと思います。
Kitten Lady とは
Kitten Ladyとはハンナにより立ち上げられた子猫を救うプロジェクトです。捨てられた子猫を救うために飼い主やシェルタースタッフに対する教育などを行っています。また、米国ワシントンD.C.にてシェルターも展開しており、数多くの子猫や成猫を救っています。YouTubeやFacebook、Twitter、Instagramなどを介して、毎日可愛い猫の写真や餌のやり方などの教育コースなどの配信もしています。
特にハンナのYouTbeには離乳していない子猫をどのように育てたらいいかについての動画が数多く存在し、すごく勉強になります。一方、Instagramでは可愛い子猫の画像に溢れています。
ちなみに、ハンナの彼氏も猫好きであり、ハンナのプロジェクトに参加しており、今回の相島の訪問と取材にも彼氏が同行しています。
相島とは
相島は福岡県糟屋郡新宮町にあり、その周囲は約8km、面積は約1.25km²という小さな島です。同じく福岡県北九州市にある猫の島「藍島」よりも小さな島ということになります。読み方が一緒などのでややこしいですよね。
その小さな島に猫は100匹ほどいると言われています。正確な数は把握されていないのが現状です。言えることはどこに行っても猫がいるということです。
世界的にも猫の島として有名であるため、観光客が多く訪れているようですが、実際は釣り人も多いようです。最近では相島に訪れる人の増加により、従来のボートより大きなフェリーが導入され、観光客向けの対応も進んでいるようです。
Kitten Lady の分析
ハンナの主要な分析は以下のとおりです。
- 多くの若い猫は上気道感染症にかかっているようであり、呼吸をするのが困難そうであった
- 目の辺りには目やになどが固まっているものが多かった
- 成猫のほとんどは健康的であったが、去勢・不妊手術に関しては未だにほとんどの猫が未手術であり、そこらじゅうで交尾が行われていた
- 遺伝子的には1/3程度の猫が尻尾の短いボブテイルであったことから、近親交配が進んでおり、遺伝的多様性が少ない
猫の福祉は?
ハンナはそのような分析から、相島には世界的に多くの関心が集まり、観光客向けの施設などを充実させようとしているものの、猫に対する福祉については後回しになっているのではないかということを心配されていました。今の状況では猫は幸せに暮らしているとは言えないというのがハンナの考えのようです。
そして、猫の福祉を考えたり、猫の数をコントロールするために、すべての猫に去勢・不妊手術と定期的ワクチン接種、健康診断などを行うべきだとハンナは主張しています。
島民の考え
ハンナの取材では、島民の考えについても少し記載されていました。島民としては猫も自然の一部であり、あまり自然には干渉しないでおきたいというものでした。そのため、特に猫に対して特別なケアを行う必要性がないというのが島民の意見だったそうです。これを聞いたハンナは少しフラストレーションが溜まったようです。
しかし、この意見が、島民の一部の人の意見なのか、それとも大多数の人の意見なのかはわかりませんので、あまり参考にはしないほうが良いかもしれません。実際、猫を捕獲し、去勢・避妊手術を施して、元の縄張りに戻す「TNR活動(Trap-Neuter-Return)」も一部の猫では行われているようなので、どこまでが真実なのかはわかりません。
欧米の考えとの違い
欧米の考え
そもそも、昔から穏やかな気候の場所で暮らしてきた欧米では、比較的容易に動物などをコントロールできることから、動物(自然など)を人間の支配下に置こうとする風潮があります。そのため、動物の福祉についても重点が置かれ、人間の手で猫をどうにかしようとする発想が生まれてきます。
日本の考え
しかし、日本などの季節風がある環境では自然が豊かであるものの、その反面、台風や洪水などの自然災害も多くなってきます。また、特に日本は地震というものも加わり、自然の恐ろしさを身にしみて体感しています。そのため、このような地域に住む人々はありのままの自然を受け入れようとします。それは動物に対しても一緒です。
ハンナのフラストレーションが溜まった理由
つまり、ハンナは欧米的な観点から「すべての猫が素晴らしい人生を全うできるように、人間が干渉してでもどうにかしたい。」と考えているようです。しかし、昔ながらの日本人は、「猫も自然の一部であるため、病気や餓死、自然災害などで死ぬのは避けられないことであり、こちらから干渉する必要性はない。」と考えるでしょう。
この考え方をハンナがどこまで理解しているのかわかりませんが、このような根本的な考え方の違いから、ハンナは少しイライラしたのではないかと思います。
動物相への配慮は?
一部のメディアやブログなどでも、相島やその他の猫の島における猫の福祉について記載されています。しかし、どの記事も主人公は「猫」です。ここでは猫以外の動物を主人公にして猫の島について考えてみて下さい。
猫は満腹でも狩りをする
相島には猫以外の動物も当然住んでいます。そして、もちろん猫はその動物を捕食します。多くの人が猫に十分な餌を与えると猫は狩りをしなくなると思っているかもしれませんが、そうではありません。
猫は獲物を捕食する機会があれば、迷わずその獲物を狩ります。言い換えると、空腹であろうがなかろうが、動いている獲物がいればそれを捕食します。そのため、猫の数が増えると同時にその島に暮らす動物に与える影響もかなり大きくなります。特に「島」という閉鎖された特殊な環境下ではその影響が甚大になります。それはスチーフンイワサザイが絶滅した例を見てもわかると思います。

他の動物への影響
相島における動物相(そこに存在する動物種とその数)を把握している人はほとんどいないと思います。ただ、相島に猫が持ち込まれてからそれらの動物相には多大な影響が出たことは間違いありません。もしくは、これから猫の数が増えるに従って、影響が出るのは間違いありません。
相島に猫を持ち込んだ時点で人間の自然への干渉が始まっていると考えるのであれば、動物保護の観点から、島民が責任を持って猫の数を制御するというのはとても重要なことだと筆者は思います。そのため、少なくともTNR活動を活発に行っていくことは最低限必要ではないかと個人的には思います。
まとめ
Kitty LadyことHannah Shawが相島に訪れ、ほんのすこし「猫の福祉」という観点から相島を分析すると、まだまだ猫の福祉が考えられていないという結果でした。しかし、相島では自然と共存するという日本的な考えが少なくとも存在しており、そこで摩擦が生じているような気がしました。
ただ、個人的には相島が世界的に有名になってしまった以上は、日本的な考えを尊重するよりも、世界的な風潮にあった対応を取るべきだとは思います。また、猫だけでなく他の動物にも配慮した対応も必要になってくると感じました。
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参考文献
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