前回の記事では多頭飼育崩壊予備軍について扱いましたが、今回は多頭飼育崩壊者の分類についてまとめてみました。
この記事でわかること
- 世話をできないほど無数のペットを飼養することをアニマル・ホーディングという
- アニマル・ホーダーには主に3つのタイプがある
- Overwhelmed Caregiverタイプは猫団体や行政の介入がしやすい
- Rescuer Hoarderタイプは行政の介入がしにくい
- Exploiter Hoarderタイプは最も厄介なタイプであり、猫団体や行政ん介入がしにくい
アニマル・ホーディング
前回も説明しましたが、多頭飼育崩壊は世話をできないほどの数の猫を飼養する行為であり、アニマル・ホーディング(Animal Hoarding)と言い、そういった行為を行っている人のことをアニマル・ホーダー Animal Hoarderといいます。これも前回の復習みたいなものですが、アニマル・ホーダーの方は次のような特徴があります。
- 猫を無数に飼う
- 最低限の栄養管理や衛生管理、医療管理を行わない
- 猫や飼い主、その他の住民に対して悪影響はないと認識している
- 猫を集めることや飼いならす(現実は飼いならせていない)ことに固執している
ただし、実際にはこの4つの定義のうちいくつかが当てはまらないアニマル・ホーダーの方がいるようです。そのことについては以下に説明するようなアニマル・ホーダー(多頭飼育崩壊者)分類をみていけば理解できると思います。
アニマル・ホーダーの分類
Overwhelmed Caregiver
Overwhelmed Caregiver (以下:OC)タイプのアニマル・ホーダーの方は問題を少しは認識しており、他者による介入も受け入れてくれます。適切な日本語訳がわからないのですが、「困惑した飼い主」といったところでしょうか。
このタイプのアニマル・ホーダーは猫を飼い始めた当初は適切なケアを猫に施していますが、経済的、環境的、身体的など様々な理由がきっかけで猫の面倒を十分に見られなくなってしまった人です。例えば、脳卒中などにより身体が麻痺したり、猫の面倒を見ていた妻が死んだりなどの変化がきっかけで猫の面倒が十分に見れなくなってしまうということです。
このOCタイプの方々は猫の面倒があまり十分に見れていないということを、本人も少なからず認識しています。そのため、猫をそれ以上増やすことは考えておらず、積極的に新たな猫を拾ってくるといったことは行いません。誰かに猫の面倒を見て欲しいと頼まれたりしない限りは新たに猫を飼うことはありません。
ただ、現在飼っている猫のことについては家族のように考えており、かなり結びつきが強くなっているため、猫をどこかに譲渡に出したりすることは積極的には行いません。
OCの方々は経済的、環境的、身体的などに問題があるという背景があるために、社会的に孤立していることが多く、なかなかヘルプを出すこともできません。しかし、幸い猫のケアが十分に行き届いていないということを少しは認識しているために、猫団体や地方自治体などの介入には応じてくれます。そのため、対応は比較的行いやすいとも言われています。
こうしてOCタイプのアニマル・ホーダーの方は見てみると「猫や飼い主、その他の住民に対して悪影響はないと認識している」「猫を集めることや飼いならす(現実は飼いならせていない)ことに固執している」といった定義に、部分的ではあるものの沿わないことが分かります。
Rescuer Hoarder
続いてはRescuer Hoarder(以下:RH)タイプのアニマル・ホーダーです。こちらも適切な日本語訳がわからないのですが、「保護猫活動ホーダー」といったところでしょうか。
RHの方々は猫を救いたいという強い気持ちを持っていることが多く、多くの場合は強迫観念のような感じになっています。猫の死(殺処分)などに過剰な反応を示し、それらから猫を救うという気持ちが強すぎるようです。
OCタイプと同じく、保護活動を始めた当初は、きちんと猫の面倒を見ることができています。しかし、先ほどのOCタイプとは異なり、積極的に猫を救おうとするために、次第にきちんとした面倒を見ることができなくなってしまいます。
さらに問題なのは、保護した猫たちを救えるのは自分だけだと認識しているというところです。そのために、行政などの関わりのない方々からの介入を強く拒んでしまいます。ただし、RHタイプの方々が社会的に孤立しているということではありません。RHタイプの方々は同じような活動をしているような人たちとは繋がりを持っているという特徴があります。
このタイプのアニマル・ホーダーはほとんど基準に当てはまってきます。猫や飼い主、その他の住民に対して悪影響はないと思っているかどうかが少しグレーな部分です。
Exploiter Hoarder
アニマル・ホーダーのタイプの中で最も厄介なのがこのExploiter Hoarder(以下: EH)になります。日本語訳では「猫を利用するホーダー」ですかね? このEHタイプの方々は猫を自身の欲求のために積極的に猫を集めます。反社会的パーソナリティを持っていたり、他者への共感ができないような方がEHになることが多いため、場合によっては猫たちを傷つけることもあります。
EHの方々は多頭飼育崩壊という現状に対して何も問題を感じておらず、また、他の誰よりも猫に対する知識を持っていると自負する傾向があります。それゆえに行政や猫の団体などの他者からの介入に全く応じようとしません。
また、ずる賢く良心を欠いているために、法的処置などからも逃れようとします。例えば、飼っている猫たちを一時的に友人やその他のアニマル・ホーダーの場所に一時的に避難させるなどの対応などを取ります。
EHタイプはまさしく、アニマル・ホーダーの定義に当てはまります。このタイプの対応が最も難しいと言われるのがわかる気がします。
まとめ
上記の3つのタイプ以外にも、Incipient Hoarder(初期のホーダー)や Breeder Hoarder(ブリーダー・ホーダー)などのタイプもあります。
多頭飼育崩壊をする方々はどれかのタイプに属する、もしくは複数のタイプに属する可能性があります。また、その程度も様々だと思いますので、一概にこの人はこのタイプとハッキリと分類することはできないように思います。それでも、こういったアニマル・ホーダーの分類が役に立つことは間違いないと思います。
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参照サイト
The Hoarding of Animals: An Update
Hoarding – the overwhelmed care giver
About Hoarding of Animals Research Consortium
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