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猫のトキソプラズマ症 〜原因と感染経路、症状〜

2017年8月15日

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トキソプラズマ症は人獣共通感染症(ズーノーシス)の代表格であり、特に猫と妊婦さんという関係においてとても有名な感染症になります。また、一昔前まではこのトキソプラズマ症と人間の自殺や統合失調症と関連していることが信じられていたために、トキソプラズマ症に関する猫のイメージは負のイメージが強くなっています。現在のところ、トキソプラズマ症と精神疾患などとの関係性については明確に証明されているわけではなく、ましてや猫を飼養することと統合失調症などの精神疾患の関連性は最新の研究により否定されています1)。

 

この記事では、猫のトキソプラズマ症の原因となる原虫とその症状について紹介していきます。

 

 

目次

  • 1 トキソプラズマ
  • 2 トキソプラズマの感染段階
  • 3 トキソプラズマの感染経路
  • 4 猫の糞便とトキソプラズマ
  • 5 猫におけるトキソプラズマの感染率
  • 6 猫にトキソプラズマに感染した時の症状
  • 7 まとめ

トキソプラズマ

トキソプラズマ症はトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)と呼ばれる単細胞の寄生性原生生物(原虫)により引き起こされます。このトキソプラズマはアピコンプレクサに属しており、アピコプラスト(光合成機能を持たない色素体であり、この種の原虫の生命を維持する上で必須となる細胞小器官)と頂端複合構造(宿主細胞に感染する上で重要な器官)を持つという特徴があります2)。

 

トキソプラズマは哺乳類や鳥類に属するほとんどの動物種に感染するとされています3)。しかし、ネコ科動物以外の動物種においてはトキソプラズマは無性生殖しかできないため、自分と同じDNAを持つトキソプラズマ(娘虫体:メロゾイト)しか複製することができません。つまり、ネコ科動物以外は中間宿主の役割を果たすことになります。

 

一方、ネコ科動物においては、腸管においてトキソプラズマが子孫を残すための有性生殖を行えるため、そこでオーシスト(原虫の配偶子を含むもの)が生まれ、子孫を残すことが可能となります4)。そのため、ネコ科動物はトキソプラズマにとっては終宿主にあたり、種の保存において重要な宿主になります。

 

猫のトキソプラズマ症 〜原因と感染経路、症状〜
イエネコ以外のネコ科動物にもトキソプラズマは感染する。写真はボブキャット。

 

トキソプラズマの感染段階

トキソプラズマは終宿主から中間宿主(ネコ科動物からその他の動物種)に感染することもあれば、中間宿主から終宿主への感染、もしくは中間宿主同士(ネコ科動物以外の動物種同士)の感染が起こることもあります。

 

トキソプラズマには次のような3つの感染段階が存在しています2), 5)。

 

タキゾイト

もし、動物がオーシスト(スポロゾイトを含む)や組織シスト(ブラディゾイトを含む)を食べた場合には、タキゾイトのステージが起こります。タキゾイトのステージでは、トキソプラズマが急速に無性生殖を行い、増加していきます。もし、感染した動物や人間が妊娠している場合には増加したトキソプラズマが胎盤を通過し、胎児に感染し多大な影響を与えることになります。

 

ブラディゾイト

一度タキゾイトの状態が宿主の免疫応答により抑制され始めると、トキソプラズマはブラディゾイトと言われる状態になります。このブラディゾイトの段階ではトキソプラズマは組織シストというものを形成し、免疫系の作用を緩和し、その組織シストの中で緩やかに数を増加させていきます。このブラディゾイトを含む組織シスト(生肉など)を食べることでトキソプラズマが感染します。

 

スポロゾイト

トキソプラズマが猫など終宿主に感染し、腸管において有性生殖を行うと、オーシストが生まれ、糞便中に排出されるようになります。排出された直後のオーシストは未熟ですが、このオーシストが成熟していくとその中にスポロゾイト(種虫)ができ、このスポロゾイトを口から摂取することでも感染が起こります。スポロゾイトを含むオーシストは土壌や汚染された水、猫の糞便中に含まれています。

 

猫のトキソプラズマ症 〜原因と感染経路、症状〜

 

 

トキソプラズマの感染経路

トキソプラズマからの感染の多くは経口感染と考えられており、空気感染や経皮感染などは起こらないとされています4)。トキソプラズマが動物や人間に対して感染する際には、その動物や人間が上記の3つの状態にあるトキソプラズマを口から取り込む必要があります。考えられる主な感染経路は、次の通りです2), 4), 5)。

 

  • オーシスト(スポロゾイトを含む)に汚染された猫の糞便や土壌、水に触れ、その手を口に入れる
  • オーシストに汚染された水を飲む
  • 組織シスト(ブラディゾイトを含む)がある肉を食べる
  • 母猫が妊娠中に感染し、増殖したトキソプラズマが胎盤を通過する

 

上記のうち猫と関連して特に恐れられているのが、猫の糞便中に含まれるオーシストによる感染になります。そのため、少し猫の糞便とトキソプラズマについて紹介していきます。

 

猫のトキソプラズマ症 〜原因と感染経路、症状〜
トキソプラズマに感染したネズミの体内には組織シストがあるため、そのネズミを猫が食べることでも感染が起こる。また、家畜の肉の中にも組織シストが含まれていることがあり、感染源となりうる。

 

猫の糞便とトキソプラズマ

 

初回感染時のオーシストの糞便中への排出

もし、猫がブラティゾイトを含む組織シストやスポロゾイトを含むオーシストを口から摂取すると感染が起こります。猫がトキソプラズマに初めて感染した場合には、オーシストが糞便中より排出されるようになります。オーシストの排出は感染後数日(3日〜10日という文献もあり6))より始まり2), 4)、1~2週間程度(1o日という文献もあり7))は続くとされています2)。

 

初感染以降は特に糞便中にオーシストが排出されることはないとされています2)。しかし、1995年に行われた研究によると、異なる遺伝子型のトキソプラズマに感染した際に再び糞便中にオーシストが観察されたことも報告されており、かなり稀ではあるものの再度オーシストが排出されることもあるようです8)。

 

どれぐらいの猫の糞便中にオーシストが含まれているかを調べた研究によると、地域による差異はあるものの、ほとんどの地域において1%未満であることがわかっています9)。これはトキソプラズマのオーシストが猫の一生のうち、わずか1~2週間ほどしか排出されないということを反映していると考えられています。

 

オーシストの成熟とブラティゾイトの感染

前述したように、糞便中に排出されたオーシストは最初は未熟であり、その中には配偶子であるスポロゾイトを含んでいません。しかし、1〜5日経過するとオーシストは成熟し、スポロゾイトを含むようになります2)。何日で成熟するかは湿度や通気性などの影響を受けます10)。さらに、このスポロゾイトを含むオーシストは環境が整えば、12〜18ヶ月は生存することができるとされており10)、土壌や水などを介して、様々な動物に感染することになります。

 

猫のトキソプラズマ症 〜原因と感染経路、症状〜
環境が整えばオーシストは1年以上も土壌や水の中で生存し続ける。

 

 

糞便中にオーシストが排出されるとともに、一部のトキソプラズマは猫の腸管のさらに奥その組織に侵入し、増殖していきます(タキゾイトの状態)11)。また、血液に乗って、全身を巡り、様々な組織に行き着きます。そして、その組織においてトキソプラズマは組織シストを形成し、緩やかに増加し、その組織に居座り続けます(ブラディゾイトの状態)11)。

 

猫におけるオーシストの排出は、猫がブラティゾイトを含む組織シストを摂取した際に特に強く観察されることも報告されています12)。例えば、猫がオーシストからトキソプラズマに感染するのには約1,000個のオーシストが必要となるものの、ブラディゾイトの場合にはたった1個で感染が起こるとされています12)。

 

猫におけるトキソプラズマの感染率

トキソプラズマに感染したことあり、血液中(血清中)に抗体を持つ猫は全世界に30~40%といるとされています13)。しかし、その陽性率は地域によって異なります。日本において行われた研究によると、1993年〜2004年までに動物病院から検査機関に送られてきた猫の血清サンプルのうち、約4.4%に抗体が確認されています14)。さらに、東京の保護施設において行われた研究によると、2009年〜2011年の間に感染が認められた個体は全体の5.7%だったことが示されています15)。

 

猫におけるトキソプラズマの感染は都会よりも郊外や田舎に住む猫の方によく観察されることが知られており15)、これは田舎の猫の方が、トキソプラズマに汚染された肉や水、土壌などと接する機会が高いことを示唆しています。

 

猫のトキソプラズマ症 〜原因と感染経路、症状〜
都会よりも田舎に暮らす猫の方がトキソプラズマ感染率が高い。

 

 

猫にトキソプラズマに感染した時の症状

トキソプラズマが猫に感染した際には下痢などが10日ほど続くことがありますが、特に症状が観察されないことが多いようです2)。猫において特に症状が観察されるようになるのは、組織シスト内のトキソプラズマを免疫系で抑制できなくなった時や初回感染時にトキソプラズマが胎盤を通過し胎児に影響を与えた場合になります2)。

 

子猫に観察される症状

残念ながら、トキソプラズマに感染した子猫の多くは死産や離乳前に亡くなってしまいますが、次のような症状が観察されるとされています2)。

 

  • 無気力・脱力
  • 抑うつ傾向
  • 低体温
  • 腹部の膨張(肝臓が大きくなったり、腹水により起こる)

 

成猫に観察される症状

免疫が抑制される感染症(FIVやFeLVなど)に感染したり、免疫系を抑制する薬物の投与などが行われた場合には、組織シスト内に存在するトキソプラズマを抑え込むことができず、様々な症状が観察されるようになります。観察される症状はトキソプラズマがどの組織にいるかに依存しますが、共通して観察されるのは次のような症状とされています2), 11)。

 

  • 食欲低下
  • 呼吸困難
  • 無気力・脱力
  • 発熱

 

トキソプラズマは高い確率で肺や中枢神経系、肝臓、膵臓、眼などの組織に居座り続けることが知られています2),11)。特に肺に関しては97.7%ものトキソプラズマに感染した猫において観察されており16)、トキソプラズマが再活性した時には肺炎などを引き起こす危険性があります。では、以下に肝臓、膵臓、眼、中枢神経系においてトキソプラズマが再活性した時に観察される症状について紹介していきます2)。

 

肝臓や膵臓の症状

  • 黄疸
  • 腹部の痛み・不快感

 

眼の症状

  • ぶどう膜炎
  • 虹彩炎
  • 虹彩毛様体炎
  • 網脈絡膜炎

 

中枢神経系の症状

  • 失明
  • 低体温
  • 昏睡
  • 立てない
  • 四肢が硬くなる
  • 四肢の協調性の低下
  • 排尿困難
  • 耳がピクピクする
  • 円を描くように回転する
  • 友好的な行動(頭や頬をスリスリしたりするなど)の増加

 

まとめ

猫のトキソプラズマ症の原因やその感染経路、症状などについて紹介してきました。猫のトキソプラズマ症の治療方法については薬物療法が主となりますが、未だに効果的な治療薬が見つかっているわけではありません。そのため、猫がトキソプラズマ症に感染しないように予防することが最も重要になります。猫のトキソプラズマ症の治療や予防方法についてはまた今度別の記事でまとめてみたいと思います。

 

どうしても猫を飼っている妊婦さんなどはトキソプラズマ症について心配されると思いますが、猫と飼い主さんの双方がしっかりと予防を行うことで十分に感染を防ぐことができます。日本において妊娠中にトキソプラズマ症に感染した妊婦さんは0.25%だったということも報告されており17)、かなり感染率が低いということがわかります(0%ではないので気をつけるには越したことはありません)。闇雲に猫のトキソプラズマ症を恐れるのではなく、適切な知識をもとに正しく猫と接することが大切です。

 

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参考文献

1) Solmi F, Hayes JF, Lewis G, Kirkbride JB. Curiosity killed the cat: no evidence of an association between cat ownership and psychotic symptoms at ages 13 and 18 years in a UK general population cohort. Psycological Medicine(2017). 47(9), 1659-1667. DOI: https://doi.org/10.1017/S0033291717000125

2)  Susan Little. August’s Consultation in Feline Internal Medicine, Volume7 (2015). Saunders ; 1ed, 73-81.

3) Elmore SA, Jones JL, Conrad PA, Patton S, Lindsay DS, Dubey JP. Toxoplasma gondii: epidemiology, feline clinical aspects, and prevention. Trends Parasitol(2010), 26(4):190-6. doi: 10.1016/j.pt.2010.01.009.

4) トキソプラズマ症ー国立感染症研究所 2017.08.08 accessed.

5) Toxoplasma gondii ー wikipedia 2017.08.08 accessed.

6) Dubey JP, Beattie CP. Toxoplasmosis of animals and man, Boca Raton(1988), Florida, 220.

7) Greene GE. Infectious Diseases of the Dog and Cat, 3e(2006). Elsevier, pp754-775. 

8) Dubey JP. Duration of immunity to shedding of Toxoplasma gondii oocysts by cats. J Parasitol(1995), 81(3):410-5.

9) Dubey, J.P. and Jones, J.L. (2008) Toxoplasma gondii infection in humans and animals in the United States. Int. J. Parasitol. 38, 1257–1278.

10) Tenter AM, Heckeroth AR, Weiss LM. Toxoplasma gondii: from animals to humans. Int J Parasitol(2000), 30: 1217-1258.

11) Toxoplasmosis in CatsーCornell University. 2017.08.08.accessed.

12) Dubey JP. History of the discovery of the life cycle of Toxoplasma gondii. Int. J. Parasitol(2009). 39, 877–882.

13) Dubey JP, Beattie CP. Toxoplasmosis of animals and man, CRC Press(1988).

14) Soma T, Saito N. Prevalence of anti-Toxoplasma gondii antibodies in domestic cats of Japan between 1993 and 2004. J Environ Dis(2005), 14: 5–9.

15) Oi M, Yoshikawa S, Maruyama S, Nogami S. Comparison of Toxoplasma gondii Seroprevalence in Shelter Cats and Dogs during 1999–2001 and 2009–2011 in Tokyo, Japan. PLoS ONE(2015), 10(8): e0135956. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0135956.

16) Dubey JP, Carpenter JL. Histologically confirmed clinical toxoplasmosis in cats: 100 cases (1952-1990). J Am Vet Med Assoc(1993), 203(11):1556-66.

17) Sakikawa M, Noda S, Hanaoka M, Nakayama H, Hojo S, Kakinoki S, Nakata M, Yasuda T, Ikenoue T, Kojima T. Anti-Toxoplasma antibody prevalence, primary infection rate, and risk factors in a study of toxoplasmosis in 4,466 pregnant women in Japan. Clin Vaccine Immunol(2012), 19: 365–367. paid:22205659. 

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