α-リポ酸は一般のサプリメントとしても市販されている身近な抗酸化作用を持つ化学物質になります。しかし、もし猫がα-リポ酸を摂取した際には高い確率で中毒が引き起こされます。
α-リポ酸
α-リポ酸はチオクト酸とも呼ばれ、インスリンとの相乗効果により、血糖値を下げ、肝臓でのグリコーゲンの産生を促進する機能を有しています1)。そのため、当初は2型糖尿病の治療として人間に使用されていました。そして、獣医療でも糖尿病神経障害や白内障、緑内障、虚血再灌流傷害などの治療に使用されることもあります1)。
しかし、2004年に行われた研究により、猫はその他の人間や犬、ラットなどと比較して、約10倍もα-リポ酸の毒性に侵されやすいことがわかりました2)。現在では猫用の認知障害に対するサプリメントなどには犬用のものとは異なり、α-リポ酸が抜かれていることもあります3)。
少なくとも体重1kgあたり、13mgのα-リポ酸を摂取することで中毒が起こります2)。そのため、やむなく治療などで使用する際にはそれ以下の1~5mg/kgで使用されます1)。
症状
猫がα-リポ酸を必要以上に食べた場合には次のような症状が起こりえます1), 2)。なお、以下の症状は摂取後30分〜数時間で出現し、猫が摂取した量に依存します。
- 神経系症状
- 軽度な肝細胞傷害
- 嘔吐
- 運動失調
- 肝臓における酵素の値の上昇
- 低血糖
- 発作
- 急性腎不全
対処と治療
もし愛猫がα-リポ酸を食べた際には、すぐさま動物病院に連れて行き、α-リポ酸を摂取したことを伝えましょう。獣医師は摂取した時間や猫の症状などから適切な治療を行ってくれるはずです。例えば、摂取して間もない場合には嘔吐を誘発したり、活性炭(薬用)などでα-リポ酸が吸収されにくい状態にしていきます1)。また、猫の様子をモニターしながら、症状に合わせた対症療法を行ってくれます1)。
まとめ
人間用のα-リポ酸サプリメントには、猫にとってはかなり多くのα-リポ酸が含まれており、猫が1粒飲み込んだだけでも中毒が起こりえます。そのため、サプリメントは猫の手が届かないところに保管しておくことが大切です。もし、愛猫がα-リポ酸を摂取した場合にはすぐに動物病院に連れて行き、摂取してからの時間等を伝えるようにしましょう。
参考文献
1) Little SE. August’s Consultation in Feline Internal Medicine, Volume7. Saunders, Missouri ; 1ed, 794-795. 2015.
2) Hill AS, Werner JA, Rogers QR, O’Neill SL, Christopher MM. Lipoic acid is 10 times more toxic in cats than reported in humans, dogs or rats. J Anim Physiol Anim Nutr (Berl)(2004). 88(3-4):150-6.
3) Little SE. The Cat:Clinical Medicine and Management. Saunders, Missouri, 1172-1173. 2012.
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