猫は、その美しい容姿と「世話をあまりしなくていい」という誤認より、衝動的に飼われることが多いペットです。また、飼い主が「猫が自分たちを選んだ」と認識していることも多いようです。このことより、どんな猫をどこで入手するかを積極的に考えない人が多いことがわかります。
猫は、服のように流行や季節と関係ありません。もちろん、返品することもできません。途中で飼育放棄しないためにも、やはり入手先を慎重に考える必要があります。では、猫はどこで入手でき、メリットとデメリットについて、じっくりと考えていきましょう。
猫のブリーダー
ブリーダーとは?
猫のブリーダーは、純血種の猫を交配して、繁殖させています。ブリーダーの中には、ある猫種の血統をガチで保存・維持するために遺伝的選択をおこなっているプロのブリーダーと、趣味でおこなっているアマチュアのブリーダー、お金になる猫種を繁殖させる悪徳ブリーダー(繁殖屋)などが存在しています。
ブリーダーの重要性
猫のブリーダーは、猫の社会性などが形成される時期(生後2~7週)に仔猫と接するため、かなり重要な役割を担っています。もし、ブリーダーの知識が浅く、適切な飼養がなされなかった場合には、問題行動などが多い猫になってしまう可能性があります。そのため、ブリーダーから仔猫を引き取る時は、ブリーダーを見極める必要があります。ブリーダーの選択の仕方については、以下の記事を参考にしてください。
メリット
- 直接、ブリーダーと会話できるため、将来の猫生活がイメージしやすくなる。
- 取引後も、分からないことがあれば親身に相談にのってくれることが多い。
- ペットショップよりも安価であることがある。
デメリット
- 適切なブリーダーを選択するのに苦労する。
- 取引後に、定期的に仔猫の近況報告などをしなければならない場合がある。
- チャンピオン猫など仔猫は高価になってしまう。
- 知識の浅いブリーダーや悪徳なブリーダーと取引してしまうことがある。
ペットショップでの猫の購入
日本ではペットショップの普及率が高く、一般の方の多くが、純血種の仔猫を入手する際に、最初に訪れるところです。日本の多くの猫のブリーダーは、直接もしくは間接的(オークションなどを介して)に仔猫をペットショップに卸しています。
問題行動と関連しているペットショップ
ペットショップでは、猫のブリーダーの詳細について説明しているところは少なく、仔猫の家系や飼養環境を正確に把握することができません。そして、早い時期から母親と兄弟から離れることもあるため、将来問題行動が出る確率が高くなることが研究で明らかになっています1)。
そういった研究が2009年にされて以来、ペットショップ先進国の獣医師らはペットショップで仔猫を入手することを勧めていません。
メリット
- ブリーダーとの直接的な取引に比べて、面倒なことが少ない(取引後の仔猫の近況報告、ブリーダー探し・選択)。
- 珍しい猫種に会える確率が高い。
- 取引することで、猫用品の価格が割り引かれることがある。
デメリット
- ブリーダーと比較して、高価であることが多い。
- 猫の健康面が不透明(仔猫の家系が分からない)。
- 猫の社会性が不透明(飼養環境が分からない)。
- 将来、問題行動が出る確率が高い
シェルターでの猫の引き取り
最近、注目されているのが、シェルターなどから仔猫や成猫を迎える方法です。殺処分数を少しでも減少させるために、多くの方が猫を引き取っています。
シェルターにいる理由を知る
シェルターで猫を引き取る場合、なぜシェルターで引き取られているかを聞くことが重要になってきます。そらに、その猫の性格や社会性、病気の既往歴、問題行動の有無などを聞き、またシェルターに戻ってこないように、対策を練る必要があります。ただ、それらの情報は少ないことが多く、さらには、前の飼主が真実を隠して話すことが多いのが現状です。
シェルターでの保護期間
シェルターに保護されている期間も重要になってきます。なぜなら、シェルターにいる時間が長ければ長いほど、運動量、食欲、社会性などが低下するという研究報告があるからです2)。
メリット
- 無料で引きとれるところが多い。
- 飼養方法やアドバイスをもらえることが多い。
- 適切な飼養をしているシェルターの場合には、問題行動が全くない。
- 殺処分となる仔猫や成猫を減らすことができる。
デメリット
- 問題行動が出る確率がかなり高い。
猫の保護
近所にいる野良猫を、何らかの理由により保護する方も増えています。その多くは、育児放棄された仔猫や重症を負った成猫、栄養状態の悪い猫などです。
豊富な知識が必要
もちろん、野良猫を保護する場合はその猫の歴史を知るよしもありません。野良猫をどう言った理由で保護するかはわかりませんが、猫の知識が十分にない状態で飼う人にはハードルが高いです。
ただし、野良猫でも仔猫や、重症を負った猫を保護した場合であれば、比較的人には懐いてくれますので、飼いやすいかもしれません。重症を負った猫ではストレスホルモンが放出され、それらが脳に働きかけることで社会化をリセットしてくれると推測されています3)。
メリット
- 無料で引き取れる。
- 命を救うことができる。
デメリット
- 重症を負った猫では医療費がかかる。
- 乳ばなれをしていない仔猫の場合は労力を費やす。
- 猫の飼養初心者には困難。
- 問題行動が出る可能性がある。
最後に
猫に出会える4つの場所には、それぞれメリットとデメリットがありました。ただし、デメリットに挙げたものは、飼い主の努力で対応できるものばかりです。そのため、デメリットにこだわることなく、その猫と人生を共にしたいという気持ちがあるのであれば、その猫を家族として迎えましょう。ただし、必ず、愛猫の生活の質を高めることを約束してください。
そして、最後に、命を救うために、シェルターの猫や保護猫を迎えることも忘れないでください。
参考文献
1)Amat M, Ruiz de la Torre JL, Fatijo J et al., Potential risk factors associated with feline behavior problems. Apple Anim Behave Sci. 2009;121:134-139.
2)Gouveia, K, Magalhães, A, de Sousa, L., The behaviour of domestic cats in a shelter: Residence time, density and sex ratio. Apple Anim Behave Sci. 2011;130:53-59.
3)ジョン・ブラッドショー著:「猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理」, 早川書房, 2014年, p.145.
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