キャットフードの成分分析値の欄に必ずといっていいほど記載のあるリンとカルシウムの含有量。これって何を意味しているのでしょうか?
カルシウム
猫が摂取しなければならないミネラルの中で最も多く必要とするのがこのカルシウムです。カルシウムは骨を作ったり、血液を固めたり、筋肉を収縮させたり、神経を興奮させたりするのに必要です。
骨や乳製品、マメ科の植物などにはカルシウムが多く含まれてる一方で、穀物や肉、ホルモン(臓器)などにはあまり含まれていません。
リン
リンはカルシウムの次に多く摂取しなければならないミネラルです。猫の骨の下地を作ったり、エネルギーの代謝をしたり、細胞膜を作ったり、緩衝作用(体内の酸性と塩基性の変化を緩徐にする作用)をしたりしています。
肉やホルモン(臓器)に多く含まれており、猫に関しては肉食であるため、リンが欠乏することはまずないです。どちらかというと、リンの過剰摂取が問題になります。
骨
骨のほとんどはリンとカルシウムが合体したリン酸カルシウム(より正確にはハイドロキシアパタイト)から出来ています。そして、この骨の中にあるカルシウムは溶かすことで血液中に移動させることが可能です。
カルシウムとリンの比率は一定に…
カルシウムとリンは体内でかなり重要な役割をしています。この二つのミネラルの濃度が変わってしまうと生命にかかわるため、猫の体はカルシウムとリンの濃度(比率)を一定に維持するように機能します。しかし、その機能には副作用があるため、それによって様々な問題が生じてきます。
リンが多い場合
猫の体内でリンの量が多くなると、尿として排出するリンの量を増やすと同時に、骨にあるカルシウムを溶かして体内のカルシウム濃度を高めることでリンとカルシウムの比率を一定に保とうとします。
そのため、尿を生成する腎臓に多量のリンがやってくるため、腎臓に負荷がかかります。また、骨からカルシウムが出て行くため、骨が細く柔らかくなってしまいます。
カルシウムが多い場合
カルシウムが多い場合には血液中に大量のカルシウムが観察されるようになります(高カルシウム血症)。そうなると、カルシウムは神経が活動するのに重要であるため、胃腸の運動が不活発になり食欲不振や便秘、嘔吐などの症状が出てきます。また、脳は大量の神経でできているので、元気がなくなったり、意識障害などが起こったりすることがあります。
さらに、カルシウムの量が増えるとそのカルシウムを体外へ排出しようとするために、高濃度のカルシウムを含む尿を出します(高カルシウム尿症)。その結果、尿路結石が起こる確率が増えます。しかし、これを受けてカルシウムを与える量を減らすと、それがまた尿路結石を誘発することにつながるため気をつけなければなりません。ここら辺の話はまた今度詳しく書くことにします。
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猫にとってのリンとカルシウムの理想の比率
ひと昔前、アメリカの動物園で飼われていたピューマが少し高いところからジャンプしただけで骨折したという報告があり、獣医師がこのピューマの骨を調べたところ細くて柔らかい骨であることがわかりました。ではなぜ、こんなことが起こったのでしょうか?その秘密は餌に含まれるリンとカルシウムの比率にありました。

1 : 1.2 ~ 1 : 1.5
実は飼育員が、そのピューマに与える餌のお肉の骨を丁寧に取り除いてあげていたことが原因だったのです。つまり、肉食獣の唯一のカルシウム源である骨を食べることができていなかったのです。ちなみにその時のカルシウムとリンの比率が、1:20だったそうです(カルシウムが「1」です)。
猫が健康に暮らすためにキャットフードに含まれているリンとカルシウムの理想の比率は、リンを1とした時に1:1.2 ~ 1:1.5と言われており、少しカルシウムが多く入っている方が良いといわれています。
まとめ
猫は肉食であるため、まずリンが欠乏することは普通ありません。しかし、カルシウムは別問題であるため、市販のキャットフードの比率を欠かさずチェックする必要があります。また、ローフードを与えている場合には積極的にカルシウムの多い食材を与えてなければいけません。
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