日本では特に黒猫にこだわりを持っていたり、黒猫に対する偏見はあまりないと思います。ただし、黒猫が横切ると悪いことがあるといった迷信があるので、一部の人は偏見を持っているかもしれません。
今回の記事ではあまり知られていない黒猫についての情報をまとめています。これを知れば黒猫のことを見る目が変わるはずです。
この記事でわかること
- 欧米においては黒猫の安楽死数は多い
- ハロウィンの時には黒猫の譲渡が制限される
- 欧米では8月17日が黒猫のことを理解する日
- 純粋な黒色の被毛を持つ黒猫はレア
- 黒猫はFIV(猫免疫不全ウイルス)に対して免疫があるのかもしれない
譲渡率は高いが、安楽死の数は多い
黒猫は魔女の手先と信じられていた背景もあり、欧米では人気があまりないように感じますよね? しかし、ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)が行った調査では、黒猫の譲渡率は他の色の猫よりも高かったことを報告しています(VetStreet)。
ただ、実は黒猫が保護施設に入ってくる確率が他の色の猫よりも高いという事実が背景にはあるそうで、結局は黒猫の譲渡率が他の色の猫よりも純粋に高いとは言い切れないようです。現に、先ほど紹介したASPCAの調査において最も安楽死の数が多いのが黒猫ということが報告されています。
黒猫にとってハロウィンは危険
欧米では、ハロウィンは黒猫にとっては危険です。ハロウィンの時期において、黒猫は黒魔術などに対する生贄として使用されたり、魔女の手先としていじめられたりすることが多いようです。そのため、欧米の多くの保護施設ではハロウィン10月31日の数週前より黒猫の譲渡を中止しています。そうすることで黒猫が酷い目にあうのを防いでいます(Snopes.com)。
黒猫の日がある
欧米において毎年8月17日は黒猫のことを理解する日になっています。この黒猫の日は、黒猫に対する正しい知識を身につけてもらい、いかに黒猫が人間とベストパートナーになれるかを多くの人に知ってもらい、黒猫に対する偏見などを見直してもらう日になっています。黒猫の日では多くの保護施設で黒猫の里親譲渡にかかる費用が減額され、多くの人が黒猫を譲渡しやすくなります(ASPCA)。
黒猫と被毛の色
黒猫と言っても日が当たると赤く見えたりすることがあります。そのため意外と純粋に真っ黒な黒猫はレアです。
黒猫になるにはA遺伝子(アグチー遺伝子;タビー柄の遺伝子)があまり発現せず、B遺伝子(黒色の遺伝子)が発現する必要があります。この際、B遺伝子には純粋な黒を発現する「B」という遺伝子とチョコレート色を発現する「b」やシナモン色を発現する「b’」などがあり、その組み合わせによって発現する色が微妙に変わってくることになります。
そして、純粋な黒色の被毛になるにはユーメラニンと呼ばれる色素が細胞より作られる必要があります。しかし、このユーメラニンと呼ばれる色素はなかなか安定しない物質であるため、長期間に及んで太陽光を浴びることにより分解されてしまい、赤みがかった黒色に見えてしまうことがあります。さらに、この傾向はアグチー遺伝子の一部を持つ黒猫の場合にはなおさら強く観察され、中にはタビー柄が浮き上がるものもいるようです(Paws-and-effect)。
その他に毛の色が変色する理由としてはユーメラニンの生成に関わるチロシンの不足が挙げられます。
黒猫はFIVに強い?
黒猫は猫免疫不全ウイルス感染症FIVに抵抗性を持っているのではないかということが言われています。2003年に行われた研究(Eizirik et al)によると、黒のネコ科動物ではMC1Rと呼ばれる遺伝子に変異があることが報告されています。このMC1R遺伝子は人間でいうCCR5という遺伝子と同じスーパーファミリー(同じような遺伝子と考えてください)に属しています。
このCCR5が何をしているのかというと、HIVが細胞に感染する時にドアの役割をするタンパク質の設計図になっているのです。そのため、HIVが細胞内に入り、感染する際には必ずこの遺伝子が必要になります。ということは、そのCCR5に当たるMC1Rが変異している黒いネコ科動物(黒猫を含む)は、猫のHIV(FIV)に強いのではないかと推測されるようになりました。
実際に黒猫がFIVに耐性を持っているという研究報告はないと思うので、話半分に聞いておいてください。
まとめ
黒猫の凄さがわかりましたか? 少しは黒猫に対する見方が変わったのではないでしょうか?
この記事を書くにあたって、黒猫について色々と調べてみて思いましたが、日本のウェブサイトでよく見かける「黒猫の性格」などについては調べること(見つけること)ができませんでした。ウェブサイトに記載されている「黒猫の性格」ってあてにしても良いものなんですかね?
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参考文献
Eizirik, Eduardo et al.Molecular Genetics and Evolution of Melanism in the Cat Family.Current Biology , 13(5) , 448 – 453.
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