猫ちゃんが気持ちよさそうに寝ている姿はなんとも可愛らしく、癒されるものです。そんな、猫ちゃん達ですが、私たちと同じように夢を見ているのでしょうか?今回は、猫が寝ている間の「夢」について、ちょっと考えてみたいと思います。
そもそも夢を見るの?
猫は1日におよそ16時間ほど眠るといわれます。人のおよそ2倍くらいでしょうか??そして、私たち人間と同じように猫にもみなさんご存知のnon-REM睡眠とREM睡眠があります。一般的にnon-REM睡眠は「脳の休止期」、REM睡眠は「体の休止期」とされています。
つまり、non-REM睡眠時は脳が休んでいるわけですから、夢を見ること、そして見たとしてもそれを記憶しておくことが難しいと考えられます。また、non-REM睡眠の時に見る夢はより断片的で、意味をなす視覚(映像)は少ないとい言う考え方もあります。したがって一般的に夢を見るのはREM睡眠時とされています。
以上のことを考慮すると、「REM睡眠」持つ猫も夢を見ると考えられています。しかしながら、猫は成長していくにつれてREM睡眠の量は減るため、単純に考えて必然的に夢を見る機会も減っていくとも考えられています。
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人間と同じ?
マサチューセッツ工科大学認知神経科学分野の准教授であるMatthew Wilson氏によると、猫の夢は私たちが見る夢と大きくは変わらない1)と述べています。
猫たちも、日々の生活で経験したこと、例えば飼い主と遊んだり、狩りのように何かを追いかけたりといったようなことを夢で見ていると言われます。なぜそんなことが分かるのでしょう?猫ちゃんは夢の内容なんて話してくれませんからね。笑
海馬の構造
まず、記憶を司るといわれる部分が脳の海馬というところです。この海馬の構造は、ほぼ全ての脊椎動物と哺乳類で共通する部分が多いと言います。猫と人の海馬を比べると、非常に酷似していたとWilson氏は述べています1)。加えて、睡眠時の脳の電気的活動のパターン(脳波)も私たち人間と非常に似ているようです。
夢の機序は完全には明らかにされていませんが、夢は脳が記憶の整理をしている状態とよく表現されます。つまり、この記憶に関わる海馬の構造が似ているため、夢の内容も似通っているんだろうというわけです。
夢と睡眠時歩行:夢遊病(Sleepwalking)
夢遊病とは、人の場合寝ている間に本人の自覚なしに体が勝手に動いて、色々なことをしてしまう病気のことです。夢遊病という名前が付いていますが、実際に夢を見ているわけではなく、ただ立ち上がるだけのようなものから他人に危害を加えてしまうものまで、その行動は様々です。
夢を見ている時は動かない??
猫が寝ている時に、歩きはせずとも時々脚やしっぽを激しく動かしたり、ヒゲをピクピクさせているのを見たことはありませんか?この様に体が動いている のが、猫が「夢を見ているサインですよ!」と言われるのですが、これは誤解であると研究者のDavid Greene氏は述べています1)。
身体が激しく動いていると言うことは、「脳の休止期」であるnon-REM睡眠であると言えるでしょう。実際に上記した夢遊病の症状もnon-REM睡眠時に起こることが分かっています。
つまり先ほども述べたように、夢を見るのが「身体の休止期」であるREM睡眠であるわけですから、基本的にはREM睡眠時の猫ちゃんは脱力しリラックスした状態であると言えます。しかし、身体の動きを伴わない、いわゆる寝言のようなものは観察されることもあると言います。
猫が見ている夢とは?
他方でこんな事例も報告されています。1959年に、当時フランス、リヨンのClaude-Bernard大学の教授であったMichel JouvetIn氏が睡眠に関して様々な実験を行っていました1)。Jouvet は外科的に猫の脳幹にある青斑核と呼ばれる場所を損傷し、その後の睡眠の変化を観察しました3)。(当時は動物に対する倫理の概念が発達しておらず、この手の実験がよく行われていました。)
青斑核という脳領域は、REM睡眠時に体の緊張を緩め、脳内で見た夢の内容に対して、反応が起こらないようにしており、つまり、夢遊病が起こらないようにしているといわれています3)。
そのため、それらの青斑核を破壊した猫は、REM睡眠時に夢で見た内容を体現することになります。実際、損傷を受けた猫は夢の内容を体現化、すなわち食べ物を探し始めたり、あたかもそこにおもちゃがあるかのように遊び始めたりと体を動かし始めたようです。そしてしばらくすると、パタンと再び眠りに落ちてしまい、これらの行動を一晩うちに何度か繰り返したとのことです。
ということは、猫が見ている夢の内容とは、猫が毎日行っている日常行動に関することだと推測することができます。
悪夢と楽しい夢
猫は日常生活に関する夢を見ていると思われていますが、その夢の中には悪夢と楽しい夢があるはずです。しかし、猫が悪夢を見ているのか、楽しい夢を見ているのかを判断することは困難です。あるサイトによると猫が悪夢と楽しい夢を見ている時の兆候は次のようであると推測しています1)。
悪夢?
熟睡していたと思ったら、急に目を見開き怯えた表情を見せたり、唸るような声をあげたりする時があります。 猫がどんな夢を見ていたかは教えてはくれませんから、「絶対に」とは言えませんが、こう言った行動が見られる時は悪い夢を見ていた時でしょう。
というのも、これらは例えば虐待を受けていた猫や、直近で兄弟などが死んでしまった猫なのでよく見られることから、悪夢であろうと考えられています。
楽しい夢?
良い夢の時はsquunkingという特徴的な声を出します。squunkはため息と喉をゴロゴロと鳴らす鳴き声の中間くらいにあたる鳴き声で、心地よさを表しているようです。従って、眠っている猫ちゃんからこれらの声が聞こえたら、きっと心地の良い、楽しい夢を見ているんだろうなぁと思ってください。
Update (2017/6/10):参考文献を新たに追加し、内容の一部を少し改変しました。
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参照サイト
1)What Do Cats Dream About When They Sleep?
2)Do Cats Dream When They Sleep
4) What do cats dream about when they sleep?
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