猫のことを考えるとペットホテルとペットシッターどちらを選択すれば良いのでしょうか?猫を飼っていても連休や仕事などで長期間家を留守にすることはあると思います。家に誰か家族がいる場合は問題ありませんが、猫だけになる場合には、猫は非常にストレスを感じてしまいます。なぜなら、猫にとっては環境が全てであり、自身を取り巻く環境を制御したがる生き物だからです。この環境には縄張りや設備だけでなく、日々のスケジュールや人間なども含まれています。
この記事ではペットホテルとペットシッターにおいて猫に加わるストレスを比較し、猫に加わるストレスという観点からペットホテルとペットシッターどちらが猫にとって好ましいのかについて考えていきます。
目次
ペットホテルとペットシッターで猫に加わるストレスの比較
ペットホテルやペットシッターはその質により、猫に加わるストレスは変わります。しかし、共通しているストレスは猫が暮らしていた環境が変わってしまうということです。今回はその環境の要素となる以下の点について順に見ていきます。そして、その環境の変化が極力少ない方が猫のことを考えた選択ということになります。
縄張りの変化
猫は常日頃より爪とぎやフェイシャル・ラビング(顔をスリスリすること)することで、安心することができる縄張りを構築・維持しています。また、お気入りの場所でくつろいだり、寝たりすることで、猫のニオイ(フェロモン)がその場所に付着し、その場所が猫にとって安心できる場所となります。そして、猫はそれらの縄張りにおいて、定期的に見回りを行ったり、探索行動を行い自身を取り巻く環境を把握、コントロールしようとしており、環境をコントロールしているという感覚が猫にとっては大きな安心感を生みます。
ペットホテルの場合
ペットホテルに猫を預けてしまうと、そうしたニオイが付着している安心できる縄張りが一瞬にしてなくなってしまいます。また、馴染みのある縄張りがなくなることで環境をコントロールしている感覚がなくなるため、かなりのストレスが猫に加わってしまいます。
ペットホテルの中にはフェリウェイ・クラシックなどの猫人工フェロモンを利用し、猫が安心できる環境づくりを行っているところがありますが、フェリウェイが全ての猫に効果があるわけではありませんので注意が必要です。
ペットシッターの場合
一方で、ペットシッターを選択した場合には猫にとっては特に縄張りの変化が起きないため猫は安心することができます。ただし、質の悪いペットシッターは、猫の縄張りを考えずに業務を行うこともあるので、猫のことを理解しているペットシッターを選ぶことが重要です。
日頃のスケジュールの変化
猫にもスケジュールがあり、毎日ほぼ同じ時間に同じことを行っています。例えば、猫は毎朝同じ時間に起こしにきたり、餌の時間や遊びの時間になるとそわそわし始めたり、寝る時間帯が同じであったり、特定の場所で寝ていたりします。
実はこのスケジュールは飼い主が構築したものでもあります。例えば、決まった時間に起床し、決まった時間に餌を与え、決まった時間に出勤し、決まった時間に就寝するなどです。この飼い主が構築したスケジュールは猫にとっては、ひとつの環境として捉えられているため、猫はそれを踏まえて1日のスケジュールを立てています。
ペットホテルとペットシッターの違いは?
猫はこのスケジュールが崩されることがストレスに感じると考えられています。いうまでもなく、ペットホテルでは日頃のスケジュールが全く持って機能しなくなり、環境をコントロールしている感覚がなくなるために猫にはストレスとなります。ペットホテルだけでなく、ペットシッターを選択した場合でも日頃のスケジュールの変化は起こるため、猫にとってはストレスになります。
飼い主や家族がいない
日頃から猫の環境に含まれている飼い主や家族がいなくなるのも猫にとっては環境の変化のストレスになります。いつも同じ時間にそばにいてくれたり、撫でたり、遊んだり、刺激をくれる人間が突然いなくなるため、これも猫にとってはストレスになります。
また、見方を変えると、猫は飼い主に撫でたり、遊んだり、おやつをもらったり、注意を引いたりするために、あらゆる手段を利用して飼い主をコントロールしており、そのコントロールが出来なくなるということもストレスになります。例えば、膝の上に乗ったら飼い主は撫でてくれるということを学習した猫は、撫でてもらうために飼い主の膝の上に乗ります。これは猫が飼い主という環境をコントロールしていることになります。飼い主は猫に操られているわけです。これが出来なくなるのも猫にとってはストレスになるということです。
当然ながら、ペットホテルとペットシッターどちらを選んでもこの種のストレスが猫に加わります。
見知らぬニオイや音
嗅覚や聴覚に優れた猫はニオイや音にももちろん敏感であり、その変化にすぐ気がつきます。
ペットホテルの場合
ペットホテルでは猫だけでなく犬が保管されている場合があります。たとえ、犬がいなくてもその他の猫がいる場合にはその猫のニオイや鳴き声などが気になることがあります。猫の聴覚と嗅覚はかなり鋭いため、どれだけ良い設備のペットホテルでもニオイや鳴き声などを完全になくすことは不可能でしょう。また、世話をしてくれる人が飼い主ではなくなるため、それも猫の不安につながります。特に、今までその他の猫とうまくやってこれなかった猫や、犬の鳴き声を聞いたことがない猫、社交的ではない猫の場合にはそういった環境はストレスになります。
ペットシッターの場合
たとえペットシッターを選択しても、いつもとニオイや声の高さや大きさなどが異なる人が家にやってくるため、人見知りの猫などではストレスになります。
ペットホテルよりペットシッターの方が猫にはストレスがかからない
以上のことをまとめて考えると、ペットシッターの方が猫にとって重要なのは環境の変化が少ないと言えそうです。
飼い主がいなくなりスケジュールが変わり、見知らぬニオイや音などと遭遇するとった点においてはペットホテルやペットシッターで共通しており、そこで加わるストレスの大きさは普段の生活のスケジュールや猫の気質(性格)によって変わります。そのため、それらの情報よりペットホテルとペットシッターのどちらが猫にとって好ましいかを決めることはできません。
しかし、縄張りの変化を見てみると圧倒的に変化がないのはペットシッターの方になります。どれだけ良いペットホテルに、家にある爪とぎや猫ベッド、トイレ、キャットタワー(不可能だと思いますが)などをペットホテルに持ち込むことができたとしても、すでに構築された縄張りに勝るものはありません。
そのため、猫に加わるストレスを考えるのであれば、ペットホテルよりもペットシッターのほうが良いといえるでしょう。ただし、ペットシッターを選ぶ際には質の良いペットシッターを選択する必要があります。猫に対する正しい知識を持っており、猫の体調が悪くなった時に適切な対応をしてくれるようなペットシッターを選択するようにしましょう。
まとめ
猫にとってストレスが少ないのはペットシッターと言えるでしょう。どんなに猫のことを考えたペットホテルでも猫のホームグラウンドに勝ることはできません。しかし、猫に持病などがあり体調管理が心配という方は動物病院が併設されているようなペットホテルを選択する方が良いのかもしれません。しかし、何度も言いますが動物病院だからといって猫に環境が配慮されているわけではないので、その点は気をつけなければなりません。
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参考文献
Ellis SL, Rodan I, Carney HC, Heath S, Rochlitz I, Shearburn LD, Sundahl E, Westropp JL. AAFP and ISFM feline environmental needs guidelines. J Feline Med Surg. 2013 Mar;15(3):219-30. doi: 10.1177/1098612X13477537.
Pam Johnson-Bennett. Think Like a Cat: How to Raise a Well-Adjusted Cat–Not a Sour Puss. Penguin Books(2011).
Pam Johnson-Bennett. CatWise: America’s Favorite Cat Expert Answers Your Cat Behavior Questions. Penguin Books(2016).
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