SNS上で話題となっているのが、猫のネイルです。飼い主とその愛猫が同じ色のネイルを行うことも流行っています。これらのネイルは猫の爪の上にマニキュアをつけているわけではなく、カラフルなネイルキャップと呼ばれるものを装着しています。
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— cristi ???? (@cristimari_) 2017年6月24日
見た目は可愛く、真似をしたくなるところですが、愛猫のことを考えるならばグッと堪えましょう。この記事ではネイルキャップの紹介と問題点について紹介していきます。
ネイルキャップ
日本ではネイルキャップ Nail Capという名称が一般的ですが、海外ではネイルキャップの他にクロウキャップClaw Capと呼ばれることもあります。このネイルキャップは意外と昔から存在しており、爪切除術(抜爪術)の代替法として用いられていました。
猫にネイルキャップを装着する際には、猫の爪を切り、付属している接着剤で猫の爪に取り付けます。ネイルキャップの先端部分は鋭くないため、ネイルキャップを装着すると猫の爪とぎにより家具などが傷つけられることがなくなります。そのため、爪切除術より猫にかかる負担が少ないということで、獣医療関係者らが勧めることも多いようです(WebMD)。
しかし、ネイルキャップはカラフルであり見た目が可愛いため、最近ではファッション目的で使用されることが増加しています。
ちなみに、ネイルキャップは猫の爪の成長により、約6週間程度で自然と剥がれ落ちます。ただ、猫の活動性などにも影響を受けるため、2週間で剥がれ落ちる個体もいますし、口ですぐにネイルキャップを剥がす猫もいます。
ネイルキャップの問題点
ネイルキャップは爪切除術よりも猫に負担が少なく、可愛いため多くの飼い主が愛猫に装着したくなります。しかし、ネイルキャップにも問題点があるため、装着することは避けましょう。

爪が戻らない
猫がリラックスした状態にいる場合には猫の爪は背側弾性靭帯などの影響を受けて爪は鞘の中に収納されていますが(意図的に収納することも可能です)、猫が興奮したり、意図的に深指屈筋と呼ばれる手掌側の筋肉を収縮させた場合には、爪が鞘の中から出現します。ネイルキャップを使用すると、その分だけ爪が分厚くなるため、猫が爪を鞘の中に収納しようとしても今まで通りにはいきません。
結果として、爪が鞘の中から少し出現したような状態となり、猫が意図して爪を鞘の中に収納することもできなくなってしまいます。これでは、猫は不快感を感じてしまいます。しかし、猫の中にはその状況に素早く適応するものもいるのも事実です。
ネイルキャップの商品の中には、爪が鞘の中にきちんと収納できることをウリにしているものもありますが、SNSなどに掲載されている画像を見る限りは、爪が完全に鞘の中に収納されていません。そのため、ネイルキャップを使用すると、以前のように爪が鞘の中に収納できなくなると考えていた方が良いでしょう。
安心できない
ネイルキャップの一番の問題点は猫が爪とぎができないということです。猫の指の間の部分はフェロモンを分泌しており、猫が爪とぎを行った際にそのフェロモンが付着します。これらのフェロモンは縄張りを示すものになると同時に、猫に安心を与えてくれるものにもなります。反対に、爪とぎができないということは縄張りを構築することが困難となるため、猫にとっては安心できないような環境となってしまいます。
そういった猫にとって安心のできない環境が長期的に続くと、猫にストレスが加わり、問題行動が出現する可能性が高くなります。
また、爪とぎは古くなった爪の外側の部分を剥がし、常に爪を使える状態にしておく意味合いもあります。爪は猫が身を守ったり、運動する上で重要になるため、常に使える状態にしておく必要があります。ネイルキャップを行われると重要な武器が奪われるため、猫にとっては不快かもしれません。

猫の福祉から見ると…
動物の福祉を考える上で重要となる「5つの自由」の中には、「正常な行動を表出する自由」と「不快からの自由」があります。ネイルキャップを使用すると、猫にとって重要な行動である「爪とぎ」という行動を抑制し、猫が安心して暮らせるような環境を整えていないということになり、猫を飼う上では不適切になってしまいます。
まとめ
ネイルキャップを装着することは人間にとってメリットの方が多いものの、猫にとってはデメリットの方が多いです。猫のことを考えるとネイルキャップを装着するよりも、こまめに爪切りを行い、適切な場所で爪とぎを行うように促すことの方が重要です。猫の飼い主は人間からの視点によるメリットや利便性、可愛さなどを追及するのではなく、猫からの視点を勉強し、猫の視点から物事を考えることが大切です。
追記:コメント欄にありますように、後ろ足で首の後ろを過剰に引っ掻く猫に対して、ネイルキャップを後ろ足のみ適応することもあるようです。現在のところ、そのようなネイルキャップの使用方法が推奨されているというわけではないことには注意が必要ですが、今後そういった使用法の有用性が科学的に示される事があれば、特定の条件下においてネイルキャップの使用が推奨される可能性もあるかもしれません。いずれにせよ、爪とぎの防止やファッション目的で愛猫にネイルキャップを使用するのは避けるべきでしょう。
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参照サイト
Claw covers cause for concern – charity
Are cat claw caps cruel, safe, or just ridiculous?
Declawing Cats: Positives, Negatives, and Alternatives
Nail caps for cats: pros and contras
後ろ足の爪で肌を掻き壊してしまう子には使えますよ。エリザベスカラーをつけるよりストレスを感じないし、後ろ足だけなら爪とぎの問題もありません。
確かに見た目だけで付けさせるのはかわいそうですが、こういったメリットもあることを知っていただきたいです。
趙アルム さま
コメントありがとうございます。
そういう使い方があるというのは全く知りませんでした。たいへん勉強になります。
肌を掻き壊してしまう原因に対処する必要もありそうですが、その治療を行っている間には有用なのかもしれません。
少し気になるのは猫が後ろ足の爪をメンテナンスする時は口で噛むことでメンテナンスすることがあるため、ネイルキャップがその邪魔をしたり、ネイルキャップの破片や接着剤などが口に入ったりすることがないかが心配です。もし実際に使用された経験があるようでしたら、その辺の耐久性についても教えて頂けると幸いです。
今後、研究などで具体的にネイルキャップの装着により、猫のストレスレベルが低下し、猫の福祉に何も影響を及ぼさないということが示されると、医療としてネイルキャップの利用などが行われるようになるのかもしれません。
ちなみに、ネイルキャップの猫の福祉に関する問題についてはRSPCAやCat Protectionが取り扱っています。詳しくはこちらの外部の記事(getSURRY)を参照してください。
今後ともよろしくお願いいたします。
門馬