欧米ではマタタビの代わりにキャットニップがよく使用されています。その効果はマタタビと同様、猫に恍惚感をもたらします。たまに、ものすごく興奮してしまう猫もいます。そんな、キャットニップはマタタビよりも効果がほんの少し劣る代わりに安全性が高いのがその特徴です。また、マタタビよりも猫に対する影響や効果なども調べられており、安心感があります。
筆者はマタタビよりもキャットニップ押しです。キャットニップの正しい使い方については「キャットニップの正しい使い方」を参照してください。
ネペタラクトン
キャットニップから摂取できるエッセンシャルオイルの70-99%にネペタラクトンという成分が含まれていると言われています1)。このネペタラクトンという化学物質が鼻もしくは口から体内に入ると、猫の体内で代謝され、ネペタル酸になり脳に作用します。特に脳の視床下部という領域にその影響を及ぼし、そこに存在する下垂体という構造物からのホルモン分泌を促進します。そうなると、ホルモンが脳に作用し、猫をハッピーにします(もしくは、興奮させます)。ここら辺については「キャットニップとマタタビの違い」の記事でも説明しています。

猫への効果
人間でいうマリファナ
キャットニップは人間でいうマリファナ(大麻)を吸った時に感じる「ハイになっている」状態と同じような効果があると言われています。ちなみに、1960年代にはマリファナと混ぜて使用されていたそうです2)。現在では人間には猫と同じような効果が得られないことが分かっており、使用されていません。
マリファナがカリフォルニア州などでがん患者の痛み緩和で使用されているように、キャットニップにも鎮静、緩和効果があると言われており、昔から人間でも使用されてきました。また、キャットニップは蚊を寄せ付けないため、蚊よけにも使用することができます。
行動の変化
よくマタタビやキャットニップを使用した際に、「発情期の行動」をとるという表現が使用されることがありますが、それは事実ではありません。発情期の行動とは似ているものの違うことが証明されています3)。そして、そのような行動は猫がハッピーになっている時に観察される行動であると言われています3)。避妊や去勢手術をした猫にも観察されるため、その説明が妥当であることが伺えます。
キャットニップを使用すると興奮して、攻撃的になってしまう猫もいます。これは脳の扁桃体に、ある種の影響が強く出ているからだと思われます。そのため、多頭飼いをしている家庭で使用する際にはその他の猫が攻撃されないよう気をつけた方が良いでしょう。
一般的な効果
以下にキャットニップの一般的な効果について記載していますが、これらの効果がすべて観察されるわけではありません。また認められる効果はその時折の状況や個体差などによって変わります。
- 幸福感
- 恍惚感
- 興奮
- 活発に遊ぶ
- 緩和(落ち着かせる。ストレス緩和)
遺伝
猫のうち20~30%の個体にはネペタラクトンに反応する遺伝子がないと言われています。また、その遺伝は猫の毛色や猫種などがあまり関係しないということが知られています4)。
生後6週間〜8週間の個体ではそれらの遺伝子を持っていたとしても反応しないようです。ただし、生後3か月を超えると遺伝子を持っている猫は反応するようになると報告されています4)。
安全性
キャットニップの安全性はピカイチです。1日あたり80mgのキャットニップを経口摂取しても、猫の臓器には何の影響もなかったという報告がされています1)。市販のキャットニップのおもちゃなどではキャットニップの粉や葉、枝などがおもちゃの中に入っていることが多く、猫はその匂いを嗅ぐことでネペタラクトンを体内に取り込みますので、さらに安全性が高くなります。
キャットニップを育てている家庭などでは、猫がキャットニップを食べたりする光景を見ると思いますが、全くもって問題がありませんので安心してください。もし、食べ過ぎると嘔吐や下痢の症状が観察されますが、1日程度ですぐに完治しますので安心してください。
まとめ
猫に対する安全性も高く、蚊よけにもなるのであれば、自宅で育てたいものですよね。日本でも苗や種が安くで手に入るので育ててみてはいかがでしょうか? ただし、育てる前に飼っている猫がキャットニップに反応するかどうかを確かめてからにして下さいね。せっかく育てたのに効果がなければ意味がありませんから。
もしキャットニップに反応しなかった時には、その他の猫が大好きな植物を検討してみてください。
参考文献
1) Waller GR, Price GH Mitchell ED. Feline attractant, cis, trans – nepetalactone: Metabolism in the domestic cat. Science, 164:1281-1282, 1969.
2) Krochmal A, Krochmal C. A Guide to the Medicinal Plants of the United States. Tronto: Fitzhenry & Whiteside Ltd., 157, 1973.
3) Hatch RC. Effect of drugs on catnip(Nepeta cataria) induced pleasure behavior in cats. Am J Vet Res, 33:143-155, 1972.
4) Leyhausen P. Addictive behavior in free ranging animals. In:Goldeberg L, Hoffmeister F, eds. Psychic Dependence: Definition, Assessment in Animals and Man. Theoretical and Clinical Implications. 58-65, 1973.
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