猫の飼い主は愛猫によりよいキャットフードを与えたいと思うのが普通です。ただ、飼い猫が本当にその上等なキャットフードに満足しているのかを判断するのは困難です。
しかし、飼い主としては愛しい飼い猫がキャットフードに満足しているのかは知りたいものですよね。今回の記事では最新の研究に基づき、猫の好き嫌いを見抜く方法を伝授します。
猫が好きなもの嫌いなもの
食べやすさの3要素
猫は餌の食べやすさを「温度」、「食感」、「匂い」などをもとに判断しているといわれています。そして、その要素のどれかが欠けたとしても猫はその餌を好みません。
例えば、猫にとって馴染みのない餌をあげるときに、その猫が知っているような匂い(羊肉の匂い)を人工的につけたとしても、猫は食べなかったということが報告されています(Bradshaw, 1986)。このことは匂いという要素だけでは知らない餌を食べないということを示してます。
言い換えると、この3つの要素全てが整っているようなキャットフードは、猫にとってはとても食べやすいということになります。
味覚
もちろん猫にも味覚があります。ただし、猫は真性肉食動物ということもあり、その味覚の多くはアミノ酸(タンパク質を構成する分子)に関するものです。アミノ酸には人工甘味料のように甘く感じるものと苦く感じるものがあります。猫は一般の動物と同じように苦味はあまり好きではありません。したがって、猫は苦いアミノ酸が含まれている餌よりも甘みを誘発するようなアミノ酸が含まれている餌の方を好むことが知られています(Beauchamp, 1977)。だからといって、砂糖のような糖分が好きというわけではありませんので誤解しないで下さい。
経験と学習
さらに、それら3つの要素には経験や学習も大きく関与しています。多くの猫は離乳後に食べ始めた餌を好む傾向があることが知られており(Hart, 1974)、逆に今まで食べたことのないものを嫌う傾向があります(これをneophobiaといいます)。
例えば、農場でしか暮らしたことのない猫(Farm Cats)はドライフードを好んで食べません。一方、ペットとして飼われている猫は生の牛肉を食べないことが報告されています(Bradshaw, 2000)。
嫌いなものでも食べる
さらにもうひとつ食べ物を選ぶ上で重要な要素があります。それは「空腹」です。当然ですが、空腹状態の猫は嫌いな食べ物でも食べるということも報告されています。これが今回の記事では少し問題になります。なぜなら、空腹の時には嫌いなものでも好きなものでも食べてしまうわけですから、飼い主が愛猫の好きな食べ物と嫌いな食べ物を見分けることがほぼできなくなってしまうのです。
では、キャットフードの好き嫌いを見分ける具体的な方法を見ていきます。
猫の行動から見抜く
実は猫はちゃんと好き嫌いを行動で表してくれています。飼い主はその行動を見逃さずに観察していれば、自然と飼い猫の好き嫌いがわかるはずです。
猫が餌を食べる時には次のような行動が観察されることが報告されています(Van den Bos R,2000., Savolainen S, 2016)。
猫が好きな餌を食べている時の行動
- 餌の器(床も含む)のにおいを嗅ぐ、もしくは餌を舐める
- 餌を食べる
- 食べ終わったり、食べていると舌で口の周りをペロりと舐める
- 顔をグルーミング
猫が嫌いな餌を食べる時の行動
- 餌のにおいを嗅ぐ、もしくは餌を舐める(好きな餌を食べる時よりも長い時間かける)
- においを嗅いでいる時に耳を後ろに向けたり、尻尾を素早く動かす
- 餌を食べないない場合、鼻を舐める
- 餌を食べる場合、鼻を舐めてから餌を食べる
- 食べ終わった後は体をグルーミングする(これに関しては一致した見解が得られていない)
注意:空腹の状態では好きな餌を食べている時の行動と同じになります。
猫の好き嫌いがわかる行動まとめ
これらの行動をまとめると、好きな餌を食べる時にはすぐに餌を口にして、餌を食べた後には猫は口の周りをペロリと舐め、顔の周りをグルーミングします。
一方で、嫌いなものを食べる時には、入念に餌のにおいを嗅いだり、舐めたりして警戒します。その際、耳が後ろに向いたり、尻尾が動いたりします。そして、餌を食べる際、もしくは食べない場合には舌で鼻を舐めます。食べ終わった後には舌で口を舐めることや顔をグルーミングすることはなく、体をグルーミングします(体をグルーミングすることに関しては研究によってその結果が異なります)。
ただし、空腹状態にある時では嫌いな餌を食べる時でも好きな餌を食べる行動と同じになります。そのため、本当に好きかを見分けるには同じ種類のキャットフードを短期間の間に2回与え、2回目の反応を見るのが良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?文章にすると少し複雑だったかもしれません。
簡単な見分け方としてはキャットフードを食べ終わった後に口の周りをペロリと舐めて、顔の辺りをグルーミングし始めたら飼い猫はそのキャットフードに満足している証拠です。逆にその行動が観察されない場合にはキャットフードに不満があるのかもしれません。
久しぶりに食事をしている飼い猫の様子を観察してみてはいかがでしょうか?あまり視線を注ぎすぎるとストレスになるので横目ぐらいでみるようにしましょうね。
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参考文献
Bradshaw, J.W.S. Mere exposure reduces cats’ neophobia to unfamiliar food. Anim. Behav. 34:613-614 (1986).
Beauchamp, G.K.; Maller, 0.; Rogers, J.G. Flavor preferences in cats (Felis cams and Panthera sp.). J. Comp. Physiol. Psychol. 91:1118-1127 (1977).
Hart, B.L. Feline behaviour: Feeding behaviour. Feline Pratt. 4:8 (1974).
Bradshaw, J.W.S, Healey, L.M, Thorne, C.J, Macsonald, D.W, Arden-Clark, C.Differences in food preferences between individuals and populations of domestic cats Felis silvestris catus. Applied Animal Behaviour Science 68: 257–268 (2000).
Van den Bos R, Meijer MK, Spruijt BM. Taste reactivity patterns in domestic cats (Felis silvestris catus). Appl Anim Behav Sci. 1;69(2):149-168 (2000).
Savolainen S, Telkänranta H, Junnila J et al., A novel set of behavioural indicators for measuring perception of food by cats. Vet J.216:53-8 (2016). doi: 10.1016/j.tvjl.2016.06.012.
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