猫が非常に優れた嗅覚、そして人とは異なる視覚を有していることはみなさんご存知のことかと思います。一般的に動物が何かを探すとき、特に食べ物となれば、鼻(嗅覚)を使っているイメージはありませんか?
そんな中、今回紹介する研究では、猫は条件次第では嗅覚よりも視覚を使って、判断をしているというのです。
実験内容
実験設定
この実験では6匹の猫が対象となりました。猫はT字の道が作られた箱の中に置かれます。
従って、進む道は2つ存在することになります。それぞれの道の曲がり角には、正方形の紙がぶら下がっており、両者には異なる絵と匂いがつけられています。例えばですが、絵Aと匂いA、 絵Bと匂いBといったようにセットになっている感じですね。
つまり視覚的なヒントと嗅覚的なヒントが同時に提示されることになります。それぞれに描かれている絵や匂いは異なりますが、猫が極端に嫌がる・好むと言ったような、質が大きく異なることはないような状態にしています。
エサの位置の記憶
Aの道のゴールには、ご褒美としてエサが置かれています。もちろん猫は、最初の試行ではどちらにエサがおいてあるのか分かりませんから、適当にどちらかの道を選んで進みます。しかし、猫は数回の試行でAの道にエサがあるということを理解します。さすが賢いですね。
視覚ヒントと嗅覚ヒントの分離
このようにAの道にはエサがあると学習ができたら、次の段階に移行します。
今度は、どちらの道にもエサを置いておくのですが、先ほど用いたAの条件を分離させます。つまり、絵Aを先ほどのAの道に、匂いAを先ほどのBの道にといったように別々に提示するのです。どちらも、先ほどの実験の設定からいくとエサがある条件です。従って、条件を分離させることで、どちらの刺激に猫がより頼ってエサの位置を判断していたかがわかるというわけです。
結果
その結果、6匹中4匹の猫が嗅覚的ヒントよりも視覚的ヒントの道を選択するという結果になりました。これらの結果から考えると、猫は嗅覚的な手がかりよりも、視覚的なヒントを手がかりに選択を行う傾向にあると言えると、この実験を行った研究者たちは考察しています。
思ってもいなかった結果??
研究者らは次のように述べています1)。
これまでは猫の世界を作っているものには、視覚よりも嗅覚の果たす役割の方が大きいものと当然のように考えていました。しかし、実験の結果を考えるとこれらの考えはちょっと考え直さなければいけないかもしれません。この事実が生物学的、行動学的にどのような意味を持つかは正確には言えませんが、さらに研究を深めていけば興味深い結果が得られるでしょう
あわせて読みたい
まとめ
今回の実験の場合、特に実験の対象となった猫の数が少ないため、猫一般の性質を示していると言い難いですし、匹数を増やせばまた結果が変わってくる可能性が高いだろうとも思います。
注目したいのは、猫によってその嗜好が変わることです。視覚刺激を頼る猫もいれば、嗅覚刺激に頼る猫もいます。ですから、視覚刺激に頼る猫の場合、物理的環境の変化に弱いかもしれないし、嗅覚刺激に頼る猫ちゃんの場合は匂いの環境の変化に弱いことなどが予測されます。
猫にとってよりよい環境を整えるという観点から考えると、こういった視覚優位・嗅覚優位といった嗜好を知ることは意味のあることかもしれませんね。
参考文献
1) The eyes have it: Cats put sight over smell in finding food
2) Evelyn-Rose Elizabeth Mayes, Anna Wilkinson, Thomas William Pike, Daniel Simon Mills. Individual differences in visual and olfactory cue preference and use by cats (Felis catus). Applied Animal Behaviour Science, 2015; DOI: 10.1016/j.applanim.2015.01.003
コメントを残す