犬派の多くの人は、当然のことながら「猫よりも犬の方が賢い」と思っているのではないでしょうか? 猫派の人でも少なからずそう思っている人がいるかと思います。
ただ、最近の研究の多くは猫は犬と同じぐらい賢いということを示唆しています。今回2017年1月5日付で京都大学文学部心理学教室より興味深い研究結果がBehavioural Processess誌にて発表されました。また、海外でもこの研究の注目度は高く世界で有名なイギリスの公共放送局BBCもこの内容を大きく報じています。
この研究でわかったこと
- 猫にもエピソード記憶があるのかもしれない
- 猫も犬と同じようなエピソード記憶を持っているのかもしれない
エピソード記憶
研究の本題に入る前にエピソード記憶について紹介しておきます。我々の記憶の一種にエピソード記憶というものがあります。どんな記憶かと言いますと、起こった事象を鮮明に思い出すことができるような記憶になります。そのため、エピソード記憶は物語として話すことができます。
具体的な例を挙げると、例えば「朝7時に起きて朝食を食べた。」「今日は電車で通勤した。」というような記憶のことをエピソード記憶と言います。お気づきかもしれませんが、このエピソード記憶には「いつ、どこで、何を」というような情報が含まれています。
猫のエピソード記憶
現在までに様々な研究が猫のエピソード記憶について調べてきましたが、どの研究も研究対象となる猫の数が少なさや、研究デザインの問題がありました。そのため、確実に猫はエピソード記憶を有しているという結論には至っていませんでした。しかし、今回の研究により、おそらく犬と同じぐらいのエピソード記憶を猫が有しているということが明らかにされました。
餌に関するエピソード記憶
この研究では49匹の猫を対象としています。まず、餌が入っている4つの箱を猫に提示し、4つの箱のうち2つの箱の餌を食べさせます(暴露期間)。そして、一旦猫を退場させ、15分後に再度4つの箱に提示します(テスト期間)。
最初、猫はランダムに箱を探索するのですが、15分前の「暴露期間」に食べた2つの箱以外の箱を長時間探索することがわかりました。
どういうこと?
これが意味することは、猫は15分前に「どこで何をしたか」という情報を記憶し、引き出しているということになります。つまり、猫にもエピソード記憶が存在している可能性があるということになります。では、この記事の冒頭に述べた犬との関連性は?ということになりますよね。
実は、2012年に同研究室から犬の研究結果が発表されており、そのデータとからめると、やはり猫も犬と同じような能力を持っている可能性があるということなのです。
納得のいかない人は…
この記事ではあくまでも研究の重要な部分について触れたまでであり、研究者であれば「これだけの情報では猫のエピソード記憶の有無なんて判断できないよ。」というはずです。納得できない方はこの原著を読んでみてください(有料です)。実は、この研究ではもう一つ実験も行っており、その結果も踏まえて考えてみて下さい。
まとめ
今回京都大学より発表された研究結果により、猫がエピソード記憶を持っている可能性が示唆されました。そして、その程度が犬の研究データとあまり違いがないということから、犬と同じようなエピソード記憶を持っている可能性も示唆されました。
このエピソード記憶に関連するもの以外でも、飼い主が指差した方を見るといった認知機能面でも猫は犬と同じ能力を有していることが分かっています。今後研究が進めば猫も犬と同じぐらい賢いということが分かってくるのかもしれません。
ただ、筆者としては犬と猫は異なる動物種であるため、ある側面から犬と猫を比較しても意味がないようにも思います。
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参考文献
Tulving,E, EpisodicMemory:FromMindtoBrain.AnnualReviewofPsychology,53,1-25, 2002.
Bobrowicz, Katarzyna LU and Bobrowicz, Ryszard et al., How to measure episodic-like memory in rats and cats : Implications for future research, Proceedings of Measuring Behavior p.329-331, 2014.
原著論文
Saho Takagi, Mana Tsuzuki, Hitomi Chijiiwa et al., Use of incidentally encoded memory from a single experience in cats. Behavioural Processes, 2017.
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