皆さんは乗り物酔いの経験はありますか? 私はバスや電車は大丈夫ですが、車での長時間の移動は苦手で、小さな頃は恐ろしく車酔いをしていました。本当に辛いですよね・・・。
ご存知かもしれませんが、猫ちゃんも乗り物酔いになることがあります。猫の乗り物酔いは、飼い猫と一緒に遠くへ出かけたいと思っている飼い主さんからよく聞かれる悩みの一つです。犬では、車に快適に乗れるよに訓練がなされることが多いのですが、猫が同じように車に慣れるようにするのは犬よりもはるかに難しいと言われています。
ストレスが原因?
ほとんどの場合、猫の乗り物酔いは車による移動に不慣れであることから引き起こされます。また、ストレスや不安から引き起こされることがあります。
もちろん、車に不慣れというのもストレスの一種になります。その他のストレスや不安には学習された恐怖があります。これは車による移動と動物病院での嫌な思い出を関連づけて学習していることがほとんどです。
そのため、猫の乗り物酔いを解消しようと思うと、キャリーや車に慣れさせたり、ポジティブな印象を与えることでストレスや不安を取り除いていくことが重要になります。
現れる症状
まずは猫に起こる乗り物酔いの症状を見ていきましょう。人間に乗り物酔いが起こった場合は、吐き気や顔面蒼白などの症状が現れますが、猫ちゃんの場合はどうでしょうか?
- 鳴き声の変化(いつもより大きな声で鳴く、うめくように鳴くなど)
- そわそわする
- 大量のよだれ
- 活動性の著しい低下や気だるそうな様子
- 嘔吐
- 下痢
- 失禁
車に乗って、以上のような症状が現れた場合は乗り物酔いになったと考えた方が良いかもしれません。
乗り物酔いをおこさないためには?
それでは、可愛い猫ちゃんが乗り物酔いにならないようにするにはどうすれば良いのでしょうか? 以下に、その対策方法を挙げて行きたいと思います。
1.キャリーに慣れさせる
まずは、猫にとってキャリーを安心できる場所に変えましょう。もし、キャリーが家のように安心できる場所であれば、移動中に感じるストレスを軽減することができます。
現在使用しているキャリーの中に入ることに抵抗する場合は、まずは脱感作を行わなければなりません。脱感作とは怖いものを怖くないものと認識させることです。つまり、餌やおもちゃなどのご褒美を使用して、キャリーが良い場所であるということを少しずつ再学習させていくということです。
脱感作の過程が面倒と思うのであれば、キャリーを新調し、餌やおもちゃなどを利用してポジティブな印象づけをしていくと良いでしょう。脱感作よりは容易にキャリーに慣れてくれると思います。
猫がキャリーに入ることができるようになったら、次はキャリーで移動することになれなければなりません。キャリーを持ち上げ、少しの時間その位置を保ち、猫がリラックスしているようであれば餌を与え、キャリーを床に降ろします。反対にリラックスしていないようであれば、すぐにキャリーを床に戻し、訓練を中止します。
この時は絶対に餌を与えてはいけません。これはリラックスしていない時に餌を与えてしまうと、キャリーの中でリラックスしないということを学習してしまうからです。
この訓練は短い時間から始め、徐々に時間を延ばしていきます。そして、持ち上げられるのに慣れたら、次に移動するのに慣れさせます。
猫をキャリーに入れて少し部屋の中を移動し、もし、猫がリラックスしているようであれば餌を与えます。リラックスしていなければすぐに中止します。はじめは短い距離ではじめ、徐々に移動距離を延ばしていきます。そうすることで、キャリーで持ち運びされることに慣らしていきます。
家の中での移動ができるようになったら、次は家の外で同じことを行い、外での移動に慣れさせます。
2.車(乗り物)に慣れさせる
キャリーによる移動に慣れたら、次は動いていない状態の”車(乗り物)”に慣れさせることが重要です。車のニオイなどに慣れされるということです。この際、猫がリラックスした様子であれば、餌を与えます。もしリラックスしていないようなら、家に戻り、再度時間をおいてトライします。最初は短時間しか無理かもしれませんが、徐々に時間を延ばしていきます。
それができると、次は車にエンジンをかけた状態で同じことをします。この過程では車のエンジン音や振動に慣れさせます。
そして、最終的には車を少し走らせ、リラックスしているようであれば餌を与え、そうでないならすぐに車を止めます。徐々に移動距離を伸ばしていくことで、猫は完璧に車に慣れることができます。
この過程はものすごく苦労しますが、近道はありませんので地道に頑張りましょう。愛猫のためですからね。
3.走行中はシートベルト
必ず、車の走行中はキャリーにシートベルトを装着し、動かないようにしましょう。なぜなら、シートベルトを装着せずに走行中にキャリーが動いてしまうと、キャリーが不安定になってしまい、猫にストレスがかかるからです。
4.食事を控えさせる
どうしても吐いてしまうという猫の場合は、車に乗る12時間前からご飯を与えないようにするのは1つの方法です。お腹が空っぽの状態であれば、吐き気を軽減することができます。特に長時間の移動をする時は効果的です。
ただし、移動中もしっかりと水分補給ができるようにしておいて下さいね。脱水症状になってしまっては元も子もありません。
5.車の中を涼しく、静かな空間にする
音楽をかけてノリノリで車を運転したい人も多いかもしれませんが、猫にとっては大迷惑です。車は密室ですから、耳の良い猫にとっては想像以上に響いて騒々しくストレスになります。そのため、音楽は極力避けるか、落ち着いた音楽を適度な音量で聞くぐらいにしておきましょう。
また、暖かいとのぼせて気分が悪くなりやすいので、少し涼しめにしてあげると良いでしょう。
6.匂いのついたものを持ってくる
キャリーの中に、普段猫が使用しているようなブランケットやタオルなどを入れてあげましょう。そうすることで、不慣れなニオイがあるような新規の環境においても不安が一気に増すことは少なくなります。
7.人工フェロモンを利用する
猫が落ち着くような人工フェロモンを車の中やキャリーにスプレーしておくことで、猫は落ち着きやすくなります。特に移動が長時間になる場合には、ストレス緩和のためにも効果的といえるでしょう。
代表的な人工フェロモンはフェリウェイ Feliwayと呼ばれるもので、日本でも手に入れることができます。このフェリウェイは猫が頬を擦り付ける時に(Facial Rubbing)、頬から分泌されるフェロモンを人工的に精製したものになります。
一般的なフェリウェイ(フェリウェイ・クラシック)は人工的なF3フェロモンになります。F3フェロモンは猫の縄張りを示し、猫がこのフェロモンの匂いを嗅ぐとそこを縄張りと認識し安心するという機序で機能します。
フェリウェイにはディフューザータイプとスプレータイプがありますが、乗り物酔い対策ではスプレータイプが有用になります、猫がキャリーの中に入る前や車に乗る前に、あらかじめキャリーや車の中にスプレーしておきましょう。
8.お薬を処方してもらう
これは最終手段になりますが、かかりつけの獣医師にお薬を処方してもらう方法があります。例えば、抗ヒスタミン作用を持つ「ジフェンヒドラミン」を含むお薬の場合は猫を落ち着かせてくれるため、乗り物酔いの予防薬として使用されます。また、その他の吐き止めの薬なども処方されることがあります。
しかし、お薬に頼るよりもその他の方法で解決できるのが理想だということを忘れてはいけません。薬をもらう前に、今一度獣医師や猫行動専門家に相談することをオススメします。
注意点
一見、乗り物酔いのような症状が起こっていたとしても、その症状がその他の病気に起因している場合もあります。そのため、上記のような乗り物酔いの対策をする前に、必ず獣医師の診断を受けるようにしてください。
猫の乗り物酔いを克服するにはそれ相応の努力が必要になります。ほとんどの猫は少しずつ学習していきますので、地道に諦めずに訓練に励んでください。毎日訓練日記などをつけておくと、わかりにくい猫の進歩を把握できるようになるためお勧めです。愛猫のために頑張りましょう。
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参照サイト
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