多くの皆さんは、猫は人と比べて非常に繊細で優れた感覚を持っているだろうと思っていることでしょう。音や匂いに対して敏感に反応する姿は、科学的な知識がなくても直感的に「五感が研ぎ澄まされているのだろうな」という印象を与えます。それでは、五感の一つである味覚はどうでしょう?
舌の上には味蕾と呼ばれる味を感じる機構が存在します。驚くべきことに、人間はこの味蕾を約9000個持っているのに対して、猫はわずか470個ほど言われます。人のおよそ18分の1程度しか味蕾がないということは、猫は味の感覚に乏しいということなのでしょうか??
猫にとっての匂いと味
猫には匂いが重要
匂いの感覚は、猫を食べ物へとひきつけ、そして食べ物を味わう手助けをするという観点から非常に重要です。風邪をひいて、鼻が効かない時にご飯を食べると、ちっとも味かせずに美味しくないという経験をしたことはありませんか?それだけ、味覚の形成には嗅覚の存在は欠かせません。
猫のヤコブソン器官
私たちと似た匂いの感覚を有していることに加え、猫はいわゆる副感覚と呼ばるものを持っていると言われます。猫は口蓋(口の中の天井を成す部分)の奥にヤコブソン器官と呼ばれる特殊な器官をもっています。「鋤鼻器官」(じょびきかん)とも呼ばれるこの器官は、人間では退化し存在していません。このヤコブソン器官は口と鼻とをつなげています。
ヤコブソン器官から伸びる神経線維は、刺激に長時間さらされても機能が衰えないという特徴を持っており、刺激に対してすぐに慣れが生じる嗅神経とは大きく異なります。
さらに、ヤコブソン器官を脳に送るまでの神経経路も、通常の匂い情報がたどるルートとは異なります。
猫は匂いソムリエ
この器官を有した動物(猫、犬、マウス、馬、像、ヤギ、豚、ヘビ、いくつかのサル)は、例えば食べ物やフェロモンといった自身の周囲にある匂い(味も含めて)を細かく分類するのに、この器官を使っていると言われます。 したがって、より詳細に匂いを感じることができるわけです。
このように、猫の嗅覚は人間の何十倍も鋭敏ですから、その繊細な嗅覚は異なる味を感じるのに大いに役立っていることが予測されます。したがって、味蕾の数が少ないからといって、単純に味覚に乏しいとは言えないわけです。
猫は甘いものがお好き??
猫が感じる味の種類
人は、甘み、酸味、塩味、苦味、そしてうまみ(umami:味の素が見つけ、名付けたことで有名ですね)を識別する味蕾を持っています。猫も私たちと同様の質の味蕾を持っていますが、甘みに対する味蕾に関してはあまり活発に働いていません。
猫は砂糖に興味なーし!
猫はもともと肉食動物であり、当然ですが食の中心は「肉」です。ですから、当然砂糖や炭水化物(消化の過程で糖に変わる)を摂取することはほとんどないため、甘みを味わう機構が活発である必要がないわけです。
一方で、肉(たんぱく質)やセリンを含んでいる脂質に対して反応する受容器は活性が高く、猫の食欲を掻き立てるように働きます。
猫って甘いもの好きなんじゃないの?
そうは言っても「うちの猫ちゃんはアメとかアイスクリームとか、プリンとか好きだけど??」というようなことがよく聞かれます。飼い主さんたちはきっと、うちの猫は甘いものが好きなのだろうと思っているかと思いますが、実はそうではないのです。
秘密は脂肪に
よくある甘いものには、多くの脂質が含まれており、猫は「甘さ」にひかれているわけではなく、この「脂質」の成分に美味しさを感じているわけです。ちなみに、チョコレートは猫にとっては毒であるため、チョコ入りのクッキーなどもあげてはいけません(チュートリアルの徳井さんへの助言です)。
美味しさだけではない
苦味や酸味といった味覚は、口に触れている食べ物や対象物が危険もしくは毒性のあるものではないかを判断する上で重要になってきます。
こんな製品も…
特に苦味に対しては非常に敏感で不快感を示し、避ける傾向にあるため、この性質を利用してアメリカでは’Yuk’(日本語にすると、「おぇ」や「げっ」といった感じでしょうか)と呼ばれる商品も発売されているほどです。これは身体には無害ですが非常に苦味の強い液体で、猫が家具や体の傷などを噛んだり、舐めたりしないようにするために使われます。
猫の食へのこだわり
エサの固さ
たいていの猫は固形のものを好みます。キャットフードで言えば、細かくされたものよりも、一つ一つが大きく割とゴロゴロしているものの方が好まれます。口当たりはあまり固いものよりも柔らかいものを好むようです。
エサの温度
食べ物の温度も猫にとっては重要です。通常冷たい食べ物よりも温かい食べ物(およそ38度くらい)のを好みます。というのも、昔狩りをしていた頃、捕らえて殺したばかりの獲物の生肉の温度がこのくらいの温度に近いからです。したがって、ほとんどの猫は冷蔵庫から取り出してきたばかりのような冷たい食べ物はあまり好まないでしょう。
エサの形状
また、猫にとっては食べ物の形状も重要なようです。多くの猫はエサの形が毎日ではないにしろ、何日または何週間に1回くらいのペースで変わった方がより食物に対して興味を持つようです。
まとめ
人と同じように、味覚の好みに関しては少なからず個体差があるとはいえ、猫が食にうるさいと言われるのも納得がいきます。健康が一番ですが、できるだけ美味しいと感じるご飯を猫ちゃんには食べてもらいたいものですね。
参照サイト
Do Cats Have a Sense of Taste?
The Cat’s Sense of Taste – Cats International
Strange but True: Cats Cannot Taste Sweets – Scientific American
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