多くの消毒液や除菌グッズ、クリーナーの中には塩化ベンザルコニウムと呼ばれる化学物質が含まれています。また、洗濯を行う際などに利用したりする人もいます。そんな塩化ベンザルコニウムは猫にとっては中毒を引き起こすことの多い化学物質でもあり、イギリスにおける猫の中毒統計2016年度版においても第4位にランクインしているほどです。この記事では猫を飼っている家庭で気をつけるべき、塩化ベンザルコニウム中毒について紹介していきます。
塩化ベンザルコニウム
前述したように塩化ベンザルコニウムは傷口を消毒したりする消毒液の中によく含まれています。また、塩化ベンザルコニウムは病院や公共機関などの入り口やトイレで見かける手の消毒液にも含まれています。おそらく下の画像のような商品を見たことがあると思います。
そして、塩化ベンザルコニウムはトイレクリーナーや一部のウェットティッシュ、苔取りクリーナーなどにも使用されています。また、洗濯などを行う際に塩化ベンザルコニウムを入れる方もいます。このように、塩化ベンザルコニウムは様々な製品に使用されており、知らず知らずのうちに使用していることが多いと思います。
猫の塩化ベンザルコニウム中毒
猫が塩化ベンザルコニウムに接触したり、口から摂取することで中毒が起こります。しかし、猫が塩化ベンザルコニウムの入っている容器をひっくり返したり、噛んだりすることで中毒が引き起こされることは稀なようです1),2)。
最も多いのは、飼い主が塩化ベンザルコニウムを使用した際にその一部が猫の体などに付着し、猫がグルーミングを行うことで口から摂取してしまうという場合のようです1),2)。例えば、飼い主がテーブルなどを除菌したり、汚れた床を洗う際に塩化ベンザルコニウムを使用した際に、猫がその上を歩いてしまうことにより、猫の被毛や手足に塩化ベンザルコニウムが付着し、グルーミングなどにより口から取り入れられます。

猫が塩化ベンザルコニウム中毒になる理由
もともと塩化ベンザルコニウムはタンパク質を変性させるような作用を持っており、細菌の細胞膜や酵素などを変性させることでその効果を発揮します3), 4)。その効果はもちろん、人間にさえ発揮されます。例えば、10%以上の塩化ベンザルコニウムは粘膜を損傷し、0.02%の塩化ベンザルコニウムは角膜(眼の外表を覆う膜)を損傷することが知られています4), 5)。そして、2014年には10%の塩化ベンザルコニウムを240ml飲んだ高齢者において、粘膜のある部分に炎症や潰瘍ができ、呼吸困難に陥り死に至った(最終的には家族らが蘇生措置拒否を行った)という報告もなされています4)。
そのため、猫においても同様の組織損傷が起こるとされており、すなわち塩化ベンザルコニウムを摂取することで粘膜のある口腔内や気道、咽頭部分において炎症が起こることが予想されます。しかし、具体的に猫が中毒を起こす濃度や量については未だに明らかになっていないようです。
猫の塩化ベンザルコニウム中毒の症状
猫に塩化ベンザルコニウム中毒が起こると以下のような症状が出るとされています1), 2), 6)。なお、症状は塩化ベンザルコニウム暴露後5時間〜48時間の間に出現することが知られています。ちなみに、症状が出る平均的な時間は暴露後6.4時間であることが報告されています6)。
猫の体に塩化ベンザルコニウムが付着した時の症状
- 皮膚の発赤と炎症
前述したように、塩化ベンザルコニウムが猫の体に付着した際には、猫は高確率で塩化ベンザルコニウムを口に入れてしまうため、次のような症状も出現することが多いようです。

猫が塩化ベンザルコニウムを口から摂取した時の症状
- よだれの過剰分泌
- 舌に炎症が起こり、赤くなる
- 口の中に炎症が起きたり、潰瘍ができたりする
- 高熱
- 食欲不振
- 水を飲まなくなる
- 咳
- 呼吸困難
- 無気力
- 嘔吐
まとめ
愛猫が塩化ベンザルコニウム中毒にならないようにするには、塩化ベンザルコニウムを使用しないことに尽きます。除菌グッズや消毒グッズ、洗剤などを選ぶ際には塩化ベンザルコニウムの有無に注意しましょう。どうしても使用したい場合には、猫が周りにいないことを確認してから使用し、完全に乾燥するまでは猫をその場所に来ないようにしておきましょう。
猫が塩化ベンザルコニウムに暴露してから症状が現れるまでに多少時間があるため、飼い主が原因に気づかないこともあります。塩化ベンザルコニウムが含まれる商品を使用する際には十分に気をつけましょう。もちろん、塩化ベンザルコニウムが含まれる商品は猫の手や子供の手が届かないところにしっかりと保管しておき、使い終わったらすぐさま片付けましょう。
参考文献
1) Benzalkonium chlorideーInternational Cat Care 2017.07.04. accessed
2) Benzalkonium chloride poisoning in catsーthe Veterinary Poisons Information Service (VPIS) 2017.07.04. accessed
3) Benzalkonium chlorideーWikipedia 2017.07.04. accessed
4) Spiller HA. A case of fatal ingestion of 10% benzalkonium chloride solution. J Forensic Toxicol Pharmacol(2014), 3: 1. doi:10.4172/2325-9841.1000113
5) van Berkel M, de Wolff FA. Survival after benzalkonium chloridepoisoning. Hum Toxicol(1988) 7:191-193.
6)Bates N and Edwards N. Benzalkonium chloride exposure in cats: a retrospective analysis of 245 cases reported to the Veterinary Poisons Information Service (VPIS).Vet Rec(2014) 176: 229.
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