今回は前回紹介した記事(猫にとってのビタミンAとビタミンK)の続きです。今回の記事では脂溶性ビタミンの中からビタミンDとEを紹介したいと思います。
ビタミンD
猫のビタミンD摂取源は2つあります。1つは単純に食物から摂取すること、もう1つは 皮膚の上皮層に存在しているビタミンD前駆体を活性型に変化させることで得られます。ビタミン D 前駆体は、活性型になるのに、太陽からの紫外線を必要とします。これが、ビタミンDが”the sunshine vitamin(太陽光ビタミン)”と呼ばれる所以です。
しかしながら、この変換は猫や犬においては効率が悪いので、ビタミンDを食事から摂取することが必要になってきます。
ビタミンD欠乏症
ビタミンDの主な機能は血流におけるカルシウムとリンのレベルを制御することです。従って、ビタミンDは骨の成長や筋肉、神経の細胞機能の維持に必要不可欠です。ビタミンDが不足すると、くる病(骨が弱く、もろくなる疾患で成人では骨軟化症と呼ばれる)や骨格発達異常、運動失調(うまく運動を行えない)、食欲減退による体重減少などが生じます。
ビタミンDの欠乏症は以前はよくみられていましたが、今日ではあまりお目にかかることはありません。ビタミンDの効率の良い摂取源は乳製品や魚の肝油などになります。猫ちゃんの場合は、乳製品ではなく、魚の肝油をオススメします。そして、もちろん日光を浴びることも大切です(近年、地表に届く紫外線量は増えていますので、長時間の日光浴は避けてください)。
ビタミンD過剰症
ビタミンDの過剰摂取は心筋やその他の軟部組織におけるカルシウム蓄積過剰を引き起こしますが、猫ではほとんど見られません。1日のビタミンD必要摂取量は、500IU/kgと言われます。
ビタミンD過剰症は普通に日常生活を送っていれば、まず陥ることはないと考えて良いでしょう。欠乏症に関しても、ほとんどありませんが、たまに仔猫で見られることがあるので、ビタミンDを補充してあげるのならば仔猫が良いかもしれません(成長期ですしね)。
ビタミンE
ビタミン E はサンフラワーオイルなどの植物油や麦芽、肝臓など肉や動物性脂肪で豊富に見られる脂溶性ビタミンです。実を言うと、ビタミンEの全ての機能が完全に分かってはいないのですが、種々のホルモンの酸化を防いでくれる、抗酸化作用を有していることは明らかです。その他にも、脂肪の代謝や細胞膜の形成にも関与していると言われます。
ビタミンE欠乏症
ビタミンEの欠乏は 猫でもよく知られています。ビタミンEが不足すると、骨格筋や心臓、精巣(オス)、肝臓や神経などの細胞に損傷が起こり、細胞死が引きおこされます。
このビタミンE欠乏症としてよく知られているのが 「Brown Bowel 症候群」です。これらの主な症状としては潰瘍、大量出血、腸の変性(機能低下)などが挙げられます。加えて、眼や精巣の細胞に影響が出ることもあります。
黄色脂肪症
黄色脂肪症を呈するのは、主に魚ばかりを与えられている猫です。というのも、魚にはビタミンEがほぼ含まれていないからです。
「黄色脂肪症」はの主な症状は脂肪組織炎です。ビタミンEの不足によって脂肪の処理が不十分になることが原因です。結果として、固くゴツゴツした皮下脂肪が異常に蓄積して、時には痛みを伴います。
精力剤?
ビタミンEの欠乏が、精巣に影響を与えることから、ビタミンEのサプリメントを摂取することで勢力増大が期待できるとの考えがあるようです。しかし、これらに関しては、何の科学的な根拠はありませんし、効果があったとの報告もありません。
適切な摂取量は?
ビタミンEの過剰摂取により何らかの悪影響が生じたという例は今まで報告されていません。ちなみに、猫が1日に必要なビタミンEの摂取量は30IUとされています(AAFCO)。
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参照サイト
Fat Soluble Vitamins: Vitamin A, D, E, & K in Cats – Pet Education
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