ビタミンDはカルシウムの吸収など、私たちそして猫ちゃんたちが生きていく上で必須のものであると言えます。(ビタミンDについての詳細はこちらの記事をご参照ください。)
そんなビタミンDですが、なんとビタミンDを評価することで入院中の猫ちゃんの30日後の死亡率を予測できるという興味深い報告をした研究があります。
この研究論文は、2015年5月13日付でPLOS ONEに掲載されており、誰でも無料で読むことができるので興味のある方は原著論文を読むことをお勧め致します。
ビタミンD不足
ビタミンDの欠乏は、血清中のビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD:カルシジオール 25(OH)D)濃度が低いことで定義される病態です。
人では、ビタミンDの不足は種々の感染症や炎症、腫瘍性疾患などの発症に関連しているとされています。加えて、ビタミンDは多くの疾患における死亡率の予測指標になるのではないかということが、かねてから言われていました。
猫におけるビタミンD
しかし、人における臨床研究はなかなか進まなかったという現状があります。というのも、人の場合血清中のビタミンDは食事や季節、 緯度などの住んでいる地域、紫外線への暴露量などの様々な要因が絡んでくるため、ビタミンDの状態を測ることが難しかったからです。
対照的に人間とは違い、猫の場合は生理学的機構に必要な形のビタミンD(活性型ビタミンD)を皮膚細胞で生成することはほとんどないので、必要なびビタミンDは食事から摂取することになります。つまり、食事の要素しか考慮しなくても良いので、猫のビタミンD濃度は比較的モニターしやすいと言えます。
この点に着目した研究者たちは、猫を被験者として血清中のビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD:カルシジオール 25(OH)D)と健康状態との関係を検証することにしました。研究者たちは、従来から言われていたように、原因は何にせよビタミンDの状態で短期的な死亡率を予測できると仮定しました。
ビタミンDと病態の関連性
研究者たちは継続的に入院している99匹の猫の血清中のビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD:カルシジオール 25(OH)D)の状態に加えて、血液学的そして生化学的パラメーターの評価を行いました。
その結果、実験の対象となった猫のうち30日以内に亡くなった猫は、30日以上生存した猫と比較して、有意に血清ビタミンDの濃度が低いということが明らかになりました。そして線形回帰モデルにおいて、血清ビタミンDの濃度を順に並べた時に、全体の3分の1以下にあるものでは、特に死亡率との関連性(予測性)が認められました。
そして、さらに統計学的な解析を行ったところ、「ビタミンDの濃度が低い」場合に「30日以内に死亡する確率」は「ビタミンDの濃度が高い」場合と比較して、有意に高いということが明らかになりました。
まとめ
今回の研究で、猫においてビタミンD濃度を測定することで、30日以内の死亡率をある程度予測できるという可能性が示唆されました。
他にも色々な指標が考えられる中で、ビタミンDに着目した点は興味深いと思います。個人的にはビタミンDが分子レベルでどのように病態の進行と関連しているのかが気になります。結果だけ見ると極端ですが「ビタミンDの濃度を上げてあげれば、死亡率が低くなるのか?」とも考えられますが、おそらくその他にも様々な要因が絡んでいるため、そこまで極端なことは言えないでしょう。
ビタミンDは本当に奥が深く、まだまだ分かっていないことも多いので、さらなる研究が待たれます。
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参照論文
Titmarsh H, Kilpatrick S, Sinclair J, Boag A, Bode EF, Lalor SM, et al. (2015) Vitamin D Status Predicts 30 Day Mortality in Hospitalised Cats. PLoS ONE 10(5): e0125997. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0125997
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