現在は、たくさんの種類のキャットフードが販売されていますから、猫ちゃんにとって良いキャットフードを選ぶには価格やネームバリューだけではなく、飼い主がしっかりと原材料を確認・吟味することが重要です。
このようにして、原材料を眺めたことのある飼い主さんなら1度は見たことがあるであろう物質「硫酸水素ナトリウム」の性質について、今回は紹介したいと思います。
硫酸水素ナトリウム
硫酸水素ナトリウム(Sodium Bisulfate)は無臭の白い顆粒状の物質であり、主にリン酸の代わりとして使用されます。一部の棘皮動物(ウニやヒトデ、ナマコなど)には猛毒となりますが、他の生物にはほぼ無害とされています。
硫酸水素ナトリウムは風味を強め、猫の食欲を増進することも知られており、猫は硫酸水素ナトリウムを添加されたキャットフードを好んで食べるということが知られています(JH.Co)。
また、風味の点だけでなく、尿を酸性にする尿酸性剤としても知られており、猫においては尿路結石(ストルバイト結石)を減らすとされています。(ちなみに、体内のカルシウムとリンの割合に影響を与えることなく、尿酸製剤として機能します)
私たちの食卓にも
ちなみに硫酸水素ナトリウムは人の食品においても、飲料やドレッシング、ソースなど種々の食品(主に欧米)に用いられており、食肉の変色防止などにも使用されており、欧米ではその安全性が示されているようです(Wikipedia)。
しかし、アメリカ政府機関の情報が集まる健康情報サイトMedline Plusにおいては、人間が大さじ1杯以上の硫酸水素ナトリウムを摂取した場合には、口の中が焼けるような痛みに襲われ、過剰なよだれの分泌、下痢、血圧低下、吐き気、嘔吐、胸部痛のような症状が出るとされています。また、硫酸水素ナトリウムが皮膚についた時には、水ぶくれや発赤、火傷、痛みなどが起こるとされています。
そのため、キャットフードに硫酸水素ナトリウムを使用することを反対している人たちもいるのは事実です。過剰に心配する必要はないでしょうが、大量の摂取はやはり体に良くはありませんので、他のものと比較して含有量があまりに高いものは避けた方が良いかもしれませんね。何と言っても、キャットフードは毎日食べるものですから。
亜硫酸水素ナトリウム
硫酸水素ナトリウムと同じ食品添加物で、似たような名前のものに亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulfite)というものがあります。亜硫酸水素ナトリウムは酸化防止剤として赤ワインによく配合されており、人によってはこれに過剰に反応してしまうことがあります。最悪の場合、亜硫酸塩アレルギーで死に至るケースもあります。
ただしこのようなケースに陥るのは非常に稀であると言えます。キャットフードでも亜硫酸水素ナトリウムが配合されていることがありますが、少なくとも今までキャットフードに含まれる亜硫酸水素ナトリウムによって重篤なアレルギー反応は報告されていないようです。
尿酸化剤としての機能はリン酸と同程度
2003年に行われた研究では、猫における尿酸化剤としての、硫酸水素ナトリウムとリン酸の動態を評価しました(Spears et al., 2003)。その結果、硫酸水素ナトリウムとリン酸の両群において、尿のpHに顕著な差は認められませんでした。したがって、この研究ではドライキャットフードに配合された硫酸水素ナトリウムとリン酸はどちらも同じような働きをすると結論付けています。
また、硫酸水素ナトリウムはドライキャットフードの表面に潜んでいるかもしれないサルモネラ菌のコントロールにも寄与するという有能な効果が研究によって報告されています(Healthy Pet)。しかし、だからと言って硫酸水素ナトリウムを積極的に使った方が良いというわけではありません。やはり添加物は添加物ですから、過剰になれば有害です。
まとめ
硫酸水素ナトリウムは体内のリン酸の割合を変化させることなく、尿を酸性に傾けることができるので、尿がアルカリ性に傾きがちな個体には有用であるかもしれません。また、食欲増進などにおいても有用であるのかもしれません。
現在得られている知見から判断する限りですが、キャットフードに配合されているくらいの量であれば、猫の健康に問題が生じることはないのかもしれません。しかし、未だに議論がなされているということは、何かしらの懸念があるからだと思います。特別な理由がない限りは、積極的に摂取する必要がない添加物なのでしょう。。
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参照サイト
Jones-Hamilton: Sodium Bisulfate – PET Grade
What Does Sodium Bisulfate Do in Cat Food?
Web MD: What is Sulfite Sensitivity?
参照論文
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