2月といえばバレンタインと節分ですよね。節分と言えば、そう豆!大豆です。年の数だけ豆を食べると良いなどと言われていますが、もちろん節分では豆は食べるだけでなく、メインイベントの「豆まき」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
今回は、そんな日本ならではの行事豆まきをに関わる大豆と猫の関係に着目したいと思います。
近年、ペットフードにおける植物性タンパク質成分の使用が増加しています。ペットフードなどに使用される大豆のほとんどが大豆ミールと呼ばれます。大豆ミールは高い栄養価と安定した供給が可能であることから、最もよく使用されているる植物性タンパク質です。 残念ながら、大豆ミールはペットフードの話になると評判が悪いのも事実です。では、なぜ大豆ミールの評判は良くないのでしょうか?
この記事で分かること
- 豆まきで使用する炒った豆は猫に食べさせない方が良い
- 大豆は栄養価が高いが、抗栄養因子が含まれている
- キャットフードに使われる際には抗栄養因子の大部分は除去されるが全ては除去されない
- 処理が施されていない大豆を大量に摂取することは健康に害を及ぼす
大豆の栄養価
実は大豆タンパク質は、栄養密度の高い物質であります。高タンパク質で種々のアミノ酸をバランスよく含んでおり、加えて、そのタンパク質とアミノ酸は非常によく消化されます。
実際に、ほとんどの市販のキャットフードの大豆タンパク質は、高い消化率値を有し、動物性タンパク質に匹敵するとも報告されています(Huber et al.,1994; Zuo et al.,、1996)。 また、大豆タンパク質に含まれる粗タンパク質とアミノ酸の腸における消化率は、家禽に含まれるタンパク質の消化率よりも高いことも報告されています(Clapper et al., 2001.)。
大豆の抗栄養因子
この様に高栄養価を有している大豆ですが、なぜキャットフードへの使用量が制限されているのでしょうか?
抗栄養因子
大豆ミールがペットフードでの使用が推奨されないのは抗栄養成分(栄養素の代謝や機能を阻害したり栄養素を分解する因子)の存在が大きいでしょう。 最も重要な抗栄養因子は、トリプシン抑制物質やオリゴ糖、レクチンです。
また 大豆抗原(大豆タンパク質の一種で免疫反応を引き起こす)は、血流中で抗体(大豆抗原を攻撃するタンパク質)を産生して炎症反応を引き起こすことで、腸表面を傷つけます。その結果栄養素の吸収を低下させ、ペットの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。これは特に大豆に対してアレルギーのあるような猫にとって深刻であり、健常な猫にとっては問題ないと思われます。
トリプシン抑制物質とレクチン
大豆に含まれているトリプシン抑制物質は腸内でタンパク質を分解する役割を担うトリプシンと呼ばれる消化酵素の活性を阻害します。したがって、タンパク質の消化率を低下させてしまいます。
レクチンは血液凝固特性(血液を固める特性)を有するタンパク質であり、赤血球の凝集を引き起こすことで腸の損傷および栄養素の吸収の減少をもたらします。 しかしながら、キャットフードに使われる際には、これらの抗栄養因子の大部分は変性または除去されています。
オリゴ糖
ペットフードにおける大豆ミールの使用を制限する重要な要素の1つは、大豆を摂取することで腹部膨満を引き起こす可能性があることです。 大豆ミールは、約15%のオリゴ糖(例えば、ラフィノースやスタキオース、スクロース)を含みます。 これらのオリゴ糖は猫では消化されず、したがってエネルギーとして使用することが困難です。
そのため、オリゴ糖は腸内の微生物発酵に利用され、その結果腹部膨満が生じます。 これらのオリゴ糖もキャットフードに使われる際には大部分が除去されますが、1〜3%のオリゴ糖はまだ残っているのです。
腹部膨満
大豆中の難消化性炭水化物(消化酵素で分解できない炭水化物で食物繊維と呼ばれることが多い)は、便の量および質に悪影響を及ぼす可能性があります。 食物繊維は便の保水力を高め、糞便の量を増やします。 しかし、消化されずに残った食物繊維が発酵すると、腹部膨満や下痢を引き起こす可能性があります。
食物繊維には水によく溶ける水溶性とそうでない不溶性のものがありますが、そのうち水溶性食物繊維を除去して大豆をさらに精製するこで、腹部膨満が軽減され、便の質も改善されるようです。
味
猫は素材の味に非常に敏感であるため、嗜好性はキャットフードの品質にとって重要なパラメータです。 大豆ミールは通常、多くの猫が好きではない、大豆が全面に出た味であり、そのため使い過ぎると猫にとっては不味いものに仕上がるので、キャトフードの大豆ミールの使用はそう多くは出来ません。
しかし、実際はキャットフードの製造プロセス過程で、この大豆の味の元となっている成分を除去するので、 ほとんど無味無臭になっています。
豆まきをする際には気をつけて!
述べた様に、大豆は高栄養価ではありますが、適切な処理を施さなければ猫に有害なものも含まれています。したがって、豆まきでまいた大豆を大量に摂取すると体に良いことはないでしょう。もともと、大豆の味が好きではない猫が多いようなので、進んで食べる猫は少ないかもしれませんが・・・。
また、豆まきで使う大豆は柔らかいものではなく、炒ったものですよね。この炒った固い大豆は消化に負担がかかってしまうので、やはり食べさせない方が良いでしょう。
豆まきを行う際には、猫ちゃんが口に入れないような場所や工夫をすることをお勧めします。どうしても豆まきをしたい場合にはピーナッツなどを利用しましょう。”から”付きピーナッツ(落花生)で豆まきもいいですが、”から” が猫の喉に詰まる心配や食物繊維が多すぎるためあまり食べさせないように気を付けましょう。
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参考文献
- AAFCO, 2003. Association of American Feed Control Officials, Official Publication.
- Clapper, G.M., Grieshop, C.M., Merchen, N.R., Russett, J.C., Brent, J.L. and Fahey, G.C. Jr., 2001. Ileal and total tract nutrient digestibilities and fecal characteristics of dogs as affected by soyabean protein inclusion in dry extruded diets. J Anim Sci 79:1523-1532.
- Huber, T.L., LaFlamme, D. Comer, K.M. and Anderson, W.H., 1994. Nutrient digestion of dry dog foods containing plant and animal proteins. Canine Pract 19:11-13.
- Zuo, Y., Fahey, Jr., G.C., Merchen, N.R. and Bajjalieh, N.L., 1996. Digestion responses to low oligosaccharide soybean meal by ileally-cannulated dogs. J Anim Sci 74, 2441-2449.
- http://www.petfoodindustry.com/articles/660-why-soy. 2017.02.01.accessed.
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